先日夜遅く、尾張美濃地方を代表する私鉄の割とローカルな路線に乗った。
女性の車掌さんだった。
電車が発車してしばらくして車掌さん「シルバーの座席は優先席です。お近くにお体の不自由な方がみえましたら、座席をお譲りください」
「不自由な方がみえましたら」って、あんた、それ、尾張、美濃の方言じゃないの、車内アナウンスは標準語のはずなのにと思ったら顔がにやけてしまった。
僕は電車の最後尾の車両に乗ってたいので車掌さん気づいたのかもしれない。
次から同じアナウンスをするときには標準語に変わった。
僕は割と内転筋があるせいか、男の割には足をすぼめて腰掛ける傾向にある。
そうすると、向かいの座席に座った人の脚が男女問わずそわそわすることがあるので、電車で向かい合わせに人がいるときは眼を閉じていることが多い。
しかし、田舎は、駅からいきなり乗ってきて、わき目もふらずに、家のソファーに座るようにどかーっと電車に乗り込んできて大股開きや斜めに座ったりする人が特に男に多い。だから、駅に停車中は用心のために眼を開いている。
それに気付いたらしくて、僕の向かいに座っていた女の子が、駅に停車して僕が目を開けるとちょうど僕がうつむいた視線の先にスッとしたスニーカーが来るように足を置いている。
駅に停車するたびにそのスニーカーの足がハの字になっていたり、両足外に向いていたり、足がそろっていたり 開いていたり パターンが変わっている。
僕が目のやり場に困っていることに車掌さんが気づいたのかもしれない。なんだかどんどんアナウンスの声がハイトーンになってくる。
とうとうこらえきれずに 顔を覆うふりをして笑ってしまったけれど あれはにらめっこで笑うと負け という原理と同じことなのだと思う。
しかし、まあ、こういう光景は田舎鉄道ならではだなと思う。
それはともかく いちにち いちにち無事に過ごせますようにそれを第一にねがっていきたい。