先日尾張、三河、美濃地方を代表する大手私鉄の電車に乗った時、めずらしくかなり混んでいた。
僕はドア付近に立ったのだけれど、ドア付近も人がいっぱいだった。
通常ドアの左右には垂直方向の取っ手があってそこに捕まれるようになっている。
しかし、ドア横にはフィリピンの女の子が二人立っていて、ドア横の取っ手を握ると女の子の身体にも触れてしまうという状況だった。
それで僕はドア横の取っ手にとまるのをあきらめた。
でも電車は結構揺れるからどこかにとまったほうが無難だ。
見るとドアの上に小さな円形のつまみがあったので、そこを指先でつまんでとまった。
ちょっとしたつまみにとまるだけでも体の揺れを食い止めることができるのは僕の特技だ。特技ってちょっと大げさかもしれないけど、、、。
それでしばらくそのつまみにとまっていたのだけれど、気づくとそこには非常ドアコックと書いてある。
開いたら大変だ。もし間違って電車を停車させてしまったら場合によっては過失で罪を問われることにもなりかねない。
僕は小声で「しまった、非常ドアのコックや」と言って、それからフィリピンの女の子に「ごめんなさい、エクスキューズミー」と言ったら女の子も状況が分かってくれたらしくて、ドア横のスペースを少し開けてくれて僕がドア横の取っ手につかまれるようにしてくれた。
でも、僕のどこが受けたのかはわからないけれど、それからしばらく女の子が二人で話をしながらクスクス笑っている。
それで二人のうち髪が長くて多い方の女の子が微妙に僕に身体を近づけてくる。
その近づけ方が絶妙で身体は触れないのだけれど 彼女の髪がわずかに僕の腕に触れるような近づけ方をしてくる。
髪がすこしだけ身体にふれると、ちょっと、こそばゆい。
僕が自分の身体をひねったりしながら彼女の髪を避けようとすると面白がって何度も同じことをしてくる様子だ。
僕はとうとうこらえきれなくなって 顔を覆ってしまった。
女の子にそんな風にからかわれている自分ががおかしくなって、笑ってしまったことを周囲にばれないようにするために顔を覆った。
でもフィリピンの女の子は僕がなぜ顔を覆ったのかわかっているようだった。
僕はしかたなくドア横の取っ手から手を放して女の子から身体を少し離してドアの窓ガラスに自分の手のひらを吸盤のようにくっつけた。
つり革に止まれないときにこの方法も僕は結構使う。これもちょっと特技と言えるかもしれない。
そこまですると、女の子は髪がふれるほどには近づいてこなくて、もう関係ない人として僕のことを扱ってくれた。
まあ、引き際を誤ると女性の場合、身の危険もあるし。
でもああいう感じで女の子にからかわれるのは悪い気分ではないなと思った。
それはともかく一日いちにち無事に過ごせますように。
電車のドア横左右の取っ手
非常ドアコック