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「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋

2020年03月27日 15時12分04秒 | 読書(科学)
「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋

仏教と植物の関係が書かれている。とても興味深く面白い。

P23
ハスの不思議といえば、昔からハスの花が咲くときに、ポンと音が鳴るといわれています。実際には、ハスの花が咲くときに音が鳴ることはありません。(中略)真相は謎のままです。

P40
イチジクは漢字で書くと、「無花果」と書きます。これも花が無いという意味です。イチジクを食べると果実の中に小さな粒々がありますが、これがイチジクの花なのです。

P47ー48
中国では、奇数が縁起が良いとされてきました。日本でもその影響を受けて、奇数が好まれます。三三九度や三三七拍子のように奇数を重ねるのです。
日本の仏教もその影響を受けたのでしょうか。初七日や、七七日(なななのか)である四十九日、三回忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌というように、仏教でも奇数が多く使われます。
ところが中国では、奇数が重なるとかえって陽の気が強すぎて不吉であるとされ、奇数が重なる節句には、薬効ある植物の力を借りて邪気を払おうとしました。
それが、一月七日の春の七草、三月三日の桃、五月五日の菖蒲、七月七日の笹であり、陽数である奇数の中でもっとも大きい数字、九が重なる「重陽の節句」には、キクの酒を飲んだのです。(縁起の良い菊は、皇室やパスポートに利用されている。邪気を払い、日持ちするので仏花にも使われる)

P76
仏教儀礼には「香り」がつきもので、香りは神仏の食べ物であるといわれます。(中略)そこで死者のために供える香りが「線香」です。

P99
栄養価の高いソバは、精進料理が主体の寺の食事で盛んに食べられるようになり、次第に蕎麦打ちの技術が発達していったのです。

P129
アズキは、日本では古くから霊力のある豆とされてきました。アズキの赤い色には魔除けの力があると信じられたのです。節目節目となる重要な行事に、赤飯や小豆粥などアズキで作った料理を食べるのはそのためです。
実際、アズキの赤い色素であるアントシアンには高い抗酸化成分があるので病気の予防や老化防止効果があります。

P190
キリスト教やイスラム教では、人間と人間以外の生物を大きく区別します。人間以外の生物は、神が人間のために創り出したものです。
一方、日本人にとってはすべての生物が仏性を持った存在でした。つまり、人間と同じ存在だったのです。そのため、植物や虫の命さえも供養しました。

P192
仏教とは異なり、キリスト教の世界では、善と悪を明確に分ける傾向があります。(中略)
欧米の人々にとって、神の恵みである穀物の成長を妨げる雑草は、邪魔者でした。夜中のうちに悪魔がやってきて雑草の種をまいていると考えられていたほどです。ですから、欧米では悪い草を「雑草」と呼び、役に立つ良い草を「ハーブ」と呼びます。

【ネット上の紹介】
不浄である泥の中から茎を伸ばし、清浄な花を咲かせるハスは、仏教が理想とするあり方、極楽浄土に最もふさわしい花とされる。このように仏教ではさまざまな教義が植物に喩えて説かれ、寺や墓のまわりも仏教が尊ぶ植物で溢れている。球根が土砂崩れを防ぐ特性から墓地を守る花として重宝されたマンジュシャゲ、疫病を避ける物質を持つため鬼門に植えられるナンテン、神聖な花の象徴であり寿命が長いために墓に供えられるキク。人気植物学者が、仏教が理想とした植物の生きる知恵を楽しく解説。植物と仏教の新たな魅力がわかる一冊。
第1章 仏教と縁の深い植物の謎(泥の中から花を咲かせるハスの秘密
なぜハスは困果倶時のたとえに用いられたのか ほか)
第2章 仏教と植物の意外に美味しい関係(隠元禅師が日本に伝えたのはインゲンマメかフジマメか
ネギは神聖なのか不浄なのか ほか)
第3章 心に染みる仏教と植物の話(仏様の渇きをいやすミソハギのしくみ
ともに生きるレンゲの智恵 ほか)
第4章 仏教が理想とする植物の生き方(どうして肉食が禁止されるようになったのか
どうして植物を食べることは殺生ではないのか ほか)
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