「乗りかかった船」瀧羽麻子
お仕事小説だけど、テーマを人事に絞っている。
そこにドラマが生じる。
中堅造船会社を舞台にした連作短編集。
次の7編が収録され、主人公は短篇ごとに異なる。
「海に出る」
「舵を切る」
「錨を上げる」
「櫂を漕ぐ」
「波に挑む」
「港に泊まる」
「船に乗る」
この著者は、以前から知っていたが、恋愛小説がメインなので、
「私の読む作品ではないな…」、と思っていた。
まさか、このようなお仕事小説を書くとは意外だった。
しかも、予想以上にレベルが高い。
かつて、奥田英朗さんが「ガール」を書いたとき、著者は女性なのでは?と思った。
今回は逆パターン。これほどおっさんの心理を描写するとは、オヤジでは?と思ってしまった。
今後、要チェック作家のリストに加えることにする。
P174
仕事と家庭の両立、という言葉がある。あれは仕事100パーセント、家庭100パーセント、合計200パーセントをひとりの人間がこなすという意味ではないはずだ。そんなことをしたら死んでしまう。70対30、50対50、20対80、ひとによって、また時期によっても、比率は変わるだろう。どれも両立だし、優劣はないと玲子は思う。
【ネット上の紹介】
舞台は創業百年を迎える中堅造船会社。配属、異動、昇進、左遷…。人事の数だけドラマがある!明日、働く元気がもらえる、全七編の連作短編集!