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「つまをめとらば」青山文平

2016年03月23日 21時03分34秒 | 読書(歴史/時代)


「つまをめとらば」青山文平

2015年 第154回 直木賞受賞作品。
この著者は、以前「鬼はもとより」を読んだことがある。
けっこう面白かった。→「鬼はもとより」青山文平
本作品はもっと面白い。
文章は軽妙だが、人物造形に深みが出た。
直木賞受賞も納得できる。

P57
 あらかたの男は、根拠があって自信を抱く。根拠を失えば、自信を失う。
(中略)
 けれど、女の自信は、根拠を求めない。子供の頃から、ずっと目立たぬために周りを注視してきた私だから、そう見えるのかもしれぬが、女は根拠なしに、自信を持つことができる。

P253
 歳を重ねるにつれ、分かったことが増えたが、分からないことも増えた。分かっていたことが、分からなくなったりする。
 でも、それがわるいとは思わないし、いやでもない。


次の6篇が収録されている。
「ひともうらやむ」
「つゆかせぎ」
「乳付」
「ひと夏」
「逢対」
「つまをめとらば」

様々な夫婦、男女が登場する。
閉塞感を持っているが、それぞれ事件、出来事が起こって転機がある。
きちんと、起承転結があるのが気持ちいい。
心理描写もしっかりしている。
ほとんど男性側から語られるが、「乳付」は女性から語られる。
これがなかなか良い感じ。
奥田英朗さんレベル、と誉めたい。

PS
青山文平作品をもう少し読んでみよう、と思った。

【ネット上の紹介】
女が映し出す男の無様、そして、真価――。太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか――。時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付」「ひと夏」「逢対」「つまをめとらば」 男の心に巣食う弱さを包み込む、滋味あふれる物語、六篇を収録。