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「京都はんなり暮し」澤田瞳子

2016年03月01日 22時07分30秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「京都はんなり暮し」澤田瞳子

澤田瞳子さんの京都に関するエッセイ。
京都を舞台にした歴史小説を書かれるだけあって、その造詣は深い。
それもそのはず、京都生まれの京都育ち。
古典、文献に対する知識も半端でない。
四季折々の祭事と絡めながら、蘊蓄が語られる。

P59
ご存じのように、京都は道が碁盤目状に走っている。そのため場所を指すときには、××通りとまず通りを座標軸にして交差点を示し、その後に上ル(北側)下ル(南側)、東入(東側)西入(西側)と細かい位置を追記して終了、町名は二の次である。(上ルは「あがる」、下ルは「さがる」、と読む、だから宮本武蔵で有名な『一乗寺下り松』は、『いちじょうじ さがりまつ』、である)

町の覚え方の歌
P62
「坊さん頭は丸太町、つるっとすべって竹屋町、水の流れは夷川、二条で買うた生薬を、ただでやるのは押小路、御池で出逢うた姉さん(姉小路・三条)に六(六角)銭もろうて蛸(蛸薬師)買うて、錦で落として四(四条)かられて綾(綾小路)まったけど仏々(仏光寺)と高(高倉)がしれてる松(松原)どしたろ」
 まどすは弁償するの意味。

P111
 お土居とは、京都中心部の東西約3キロ、南北約6.5キロのエリアを取り囲んで作られた堤。境は北は鷹ヶ峰、南は九条、東は鴨川、西は紙屋川。現在の京都市のほんの一部であるこの内部だけが、近世以降〈洛中〉と呼ばれ、京都と認識されていた。つまり嵯峨野・嵐山はもちろん、金閣寺・清水寺などの有名寺院はすべて洛外、「京都の外」だったわけである。(井上章一氏が怒って、「京都ぎらい」の続編を書くかも・・・でも、これが歴史的事実なのだ)

P231-232
テレビドラマの時代劇を見ていると、気の荒い江戸者などが武士に向かって、「二本差しが怖くて田楽が食えるかい」と短歌を切るシーンが出てくるが、これは江戸の豆腐も京坂風に柔らかくなり、二本差しの田楽が関東進出を果たした幕末の言葉。江戸時代中期が舞台のはずの「水戸黄門」などでこのセリフが出てきたなら、時代考証上の誤りだと断言できる。

【ネット上の紹介】
京都の和菓子と一口に言っても、お餅屋・お菓子屋の違い、ご存知ですか?京都生まれ京都育ち、気鋭の歴史時代作家がこっそり教える京都の姿。『枕草子』『平家物語』などの著名な書や、『鈴鹿家記』『古今名物御前菓子秘伝抄』などの貴重な史料を繙き、過去から現代における京都の奥深さを教えます。誰もが知る名所や祭事の他、地元に馴染む商店に根付く歴史は読んで愉しく、ためになる!

[目次]
冬(餅と稲荷と古都の新春
千年の古都、千年の謎 ほか)
春(桜巡りに菓子巡り
花のもとにていざ勝負 ほか)
夏(鮎はいずこで食うべきぞ
祇園祭、恋愛てんやわんや ほか)
秋(学生バイトはおおわらわ
御所の細道、通りゃんせ ほか)