「まだある旅客機・空港の謎と不思議」谷川一巳
プロペラ機のメリット
P30
低騒音であること、短い滑走路で離着陸できること、そして短距離の場合はジェット機に比べて所要時間で遜色はなく、燃費がいいことなどが挙げられる。
P31-32
ジェット機の巡航速度が時速800~900キロに対し、プロペラ便では時速600~700キロ。しかしジェット便での飛行高度がおよそ2万フィート以上なのに対し、プロペラ便は8,000~1万6,000フィートと低い高度を運航するので、距離が短い場合は所要時間差がほとんどない。
P48
現在のプロペラ機は「ターボプロップ」といい、ジェットエンジンでプロペラを回しているが、レシプロ機は自動車などと同じピストンエンジンでプロペラを回しており、いわば主翼にエンジンで回る扇風機が取り付けられているような構造であった。
P169
現在アメリカにはデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空という「ビッグ3」があるが、戦国時代に入る以前は「ビッグ4」といわれ、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、イースタン航空という顔ぶれであった。(日本で有名なパンナムは経営破綻した)
P204
空港経営は着陸収入が大半を占めるが、着陸料は機体の重さで決まるので、当然大型機が就航したほうが空港収入は大きくなる。
P208
ハブ空港は大都市にある必要はなく、広大な土地の確保しやすい場所が選ばれた。具体的にはアメリカン航空のダラス、ユナイテッド航空のシカゴ(後にデンバーも)、デルタ航空のアトランタ、コンチネンタル航空のヒューストンなどである。
大手系列のLCC
P263
大韓航空に対してジンエアー、アシアナ航空に対してエアプサン、タイ航空に対してノックエアー、シンガポール航空に対してタイガーエアウェイズ、カンタス航空に対してジェットスター、これらはすべて大手系列のLCCである。エアプサンはアシアナ航空と釜山市の共同設立のための名称だ。
【関連図書】
「旅客機・航空会社の謎と不思議」谷川一巳
【ネット上の紹介】
最新機「ボーイングB787」と「エアバスA380」は何がどうすごいのか。着陸時に「フラップ」「エルロン」「スポイラー」はどんな働きをしている?日本の空港はまるでテーマパーク!?国によって空港はこんなにも設備が違う。機内で、空港で、そう言われてみればなぜ?となる疑問、解決します。
第1章 旅客機の謎
第2章 旅客機発達の謎
第3章 機体の謎
第4章 旅客機運航の謎
第5章 航空会社の謎
第6章 空港の謎
第7章 航空運賃の謎
「射精道」今井伸
著者は、島根大学医学部臨床教授、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本性科学会幹事、同会認定セックス・セラピスト、日本思春期学会理事。
中学・高校の性教育のテキストにすべき良書、と思う。
教育関係の方にぜひ読んでほしい。そして学生諸君に薦めてほしい。
P46
オナニーによる射精は、野球でいえば素振りです。うまくバットコントロールできなければ、ヒットを打てないように、陰茎をうまく刺激したり、コントロールできなければ、気持ちのよい射精はできません。
P60
オナニーは1日に何回してもかまいません。ひと昔前には「やり過ぎると頭が悪くなる」などと言われたことがありましたが、これはなんの根拠もない間違いです。
P67
「性は摩擦と空想から構成されている」(by H・S・カプラン)
P73
和姦を以て貴しとなす
P75
(誤)「イヤよイヤよも好きのうち」
(正)「イヤよイヤよはマジでイヤ!」(by 櫻井裕子)
P83
コミュニケーションのないセックスは、豪華なオナニーにすぎません。
P86
カウパー腺液とは、精子を守る役割を持つ分泌液です。精子は尿道から射出されますが、普段は尿が通る場所であり、尿は酸性であることが多いことから、尿道は酸性に傾いています。ところが、精子は酸に弱い性質があるため、先にカウパー腺液を分泌して尿道を弱アルカリ性に整え、精子を守る準備をしているのです。
P88
厚生労働省の調査によると、実際には2019年に、クラミジア2万7221人、性器ヘルペス9413人、尖圭コンジローマ6263人、淋病感染症8205人、梅毒6642人と、合計5万7744人の性感染症患者がいることが分かっています。
P118
貝原益軒が記した『養生訓』の一説のように「接して漏らさず」ではダメです。
P139
日本人の年間の性交の回数は45回、およそ8日に1回であり、調査対象となった41カ国中、最低でした。(中略)
一方、性交回数の世界平均は、年に103回とおよそ週2回という結果でした。(2005年、英国コンドームメーカーDurex社「グローバルセックス、サーベイ」)
日本の調査「結婚している(または交際相手がいる)人のセックスの頻度」
P139
1ヶ月のセックスの平均回数は、20代が4.11回とおよそ週1回、30代が2.66回と11日に1回という結果でした。(2013年、コンドームメーカー相模ゴム、調査)
妊活での注意
P146
精巣は熱に弱い性質があるため、サウナや長風呂もできるだけ控えたほうが無難です。(中略)下着は風通しがよく、熱がこもりにくいトランクスがよいでしょう。(中略)
長時間の自転車走行も、できるだけ避けましょう。サドルの刺激で男性器付近の血流が悪くなりやすく、EDの原因となったり、精子の濃度や運動率の低下など、精子に悪影響を与えてしまいます。実際に、自転車のよく乗る男性のED発症率が高いという報告もあります。さらに、育毛剤にも注意が必要です。
P231
旧約聖書「創世記」38章「オナンの罪」
ユダには、長男のエル、次男のオナン、三男のシェラという三人の息子がいました。ある時、長男のエルが死んでしまいます。子孫を残すために、次男オナンは、父親であるユダから、残された兄の妻タマルを娶り、子をなすことを命じられます。
しかし、オナンはそれに背き、タマルと関係を持つたびに膣外射精で精液を地に漏らし続けたことから「オナニー(正確には膣外射精)という大罪を犯した」として、神に罰せられたという内容です。
P256
日本人の場合は70代の71%以上が、中度から完全なEDになることが分かっています。
【ネット上の紹介】
陰茎は、その機能をできる限り引き出し維持するためには、正しい扱い方を体得することが必要だ。また、パートナーの心身を傷つける凶器としないためにも、道徳と品格、相手を思いやる礼儀を養った上で使えるようにすることも重要である。しかし現代の性教育では、重要なポイントにはほとんど触れず、青年期の誤った扱い方による射精障害や勃起障害も増加している。また性行為の前に絶対に必要な心の育成も欠落している。本書では、性機能と生殖医療の専門医が、それぞれの年代での性生活・射精生活の心構え、現れやすい問題と対策を解説。思春期から中高年までの各年代を読み通すことで、医学的に正しい陰茎の扱い方や、生涯にわたり性機能を維持する方法を知る。
第1章 なぜ今、「射精道」が必要なのか
第2章 射精道―思春期編
第3章 射精道―青年期編
第4章 射精道―妊活編
第5章 射精道―中高年編
第6章 射精道―射精障害克服編
第7章 性教育の黒歴史とオナニー受難の日々
第8章 医学的に正しい陰茎のメンテナンス―包茎から病気の見分け方まで
第9章 女性と射精道―射精道は男子だけのものにあらず
「旅客機・航空会社の謎と不思議」谷川一巳
P26
「ジャンボ」の愛称はボーイング747だけに付けられたもので、B777などをジャンボ機と呼ぶのは誤りである。
P32
B747が登場した頃(初飛行1982年)はファーストとエコノミーの2クラスしかなく、まだビジネスクラスは誕生していない。(ファーストクラスを設定していない機種もある。また、ビジネスクラスも、たいがい高額だ。例えば、アトランタ行きのエコノミーが15万円とすれば、ビジネスは100万くらいする・・・死ぬまでに一度ビジネスに乗りたいなあ)
P34・・・ハイテク機ボーイング747-400
それまで機長、副操縦士、航空機関士と3人で操縦していたが、機長と副操縦士の2人常務になった。
P52・・・旧ダグラスDC-8
日本の高度経済成長期の機体で、ビートルズ来日、ダッカでのハイジャック事件、国内線では羽田空港着陸直前に機長が逆噴射操作して墜落するなど・・・(後略)
P61・・・旧マクドネル・ダグラスMD-90
生産が始まる前にマクドネル・ダグラスはボーイングと統合(後略)
(経営統合が進み、現在、主な航空機メーカーというと、ボーイングとエアバスの2社)
P62
日本は世界の中で突出してエアバスの割合が少ない国である。JALは世界の主要航空会社の中では数少ない一度もエアバスを発注していない航空会社だ。(圧倒的にボーイング優勢!・・・B787では、部品の35%を日系企業が提供している。つまり、ボーイング社に発注すると日本企業を潤すことになる・・・なにかカラクリの匂いがする)
P63
その当時(70年代初頭)日本航空は国際線と国内幹線、全日空は国内主要路線、東亜国内航空はローカル線とすみ分けされていたが(後略)
P65
新品を発注したのはタイのみ、他の5カ国(ドイツ、フランス、ベルギー、スペイン、カナダ)の政府専用機はすべて民間機として古くなった中古機を改造して使っている。(日本政府はどうなの?)
世界初のジェット旅客機=旧デハビランドDH106コメット
・・・但し、ジェット旅客機史上初の墜落事故を起こし、後2回、合計3回墜落する
P95
航空機が飛ぶ上空は気圧が低いため、機内は与圧されている。機体を風船に例えるなら、離陸・着陸を繰り返すたびに膨らませたりしぼませたりしていることになる。それまでプロペラ機に比べジェット機はエンジンのパワーで高空まで上昇し、より空気抵抗の少ない高度を早く飛ぶ。そのため与圧・減圧の度合いもそれまでより大きく、金属疲労から機体に亀裂が入って空中分解したのであった。
P108・・・ボーイング377ストラトクルーザー
この機体は第二次世界大戦中に日本を爆撃したB-29爆撃機の主翼などを基本設計にしているため、日系航空各社では心情的に導入できるものではなく、当時の日本航空は国際線用にダグラス機材をそろえていた。(日本に散々空襲をかけたB-29。この”B"とは、Boeingボーイングの”B"を意味する、と分かった)
航空会社名前の由来
P202-203
JAL=Japan Air Lines
ANA=All Nippon Airways
CAL=China Air Lines
キャセイパシフィック航空=「キャセイ」とは古い英語で「中国」を意味する
ガルーダ・インドネシア航空=「ガルーダ」とは尾翼にも描かれている神話状の鳥
P204-205
中国本土のAir China=中国国際航空
台湾では「チャイナエアライン」は中華航空、「エバー航空」は長栄航空
香港の「キャセイパシフィック航空」は國泰航空、「香港ドラゴン航空」は港龍航空
P208輸送実績
1位=アメリカン航空
2位=ユナイテッド航空
3位=デルタ航空、ここまでが「ビッグ3」
4位=ノースウエスト航空
5位=コンチネンタル航空
(2位ユナイテッド航空は、2017年4月9日「乗客強制排除事件」を起こして有名となった。これは、搭乗していたベトナム系乗客デイビッド・ダオ・デュイ・アン (David Dao Duy Anh) が、3411便から排除させられ、強制降機の際に空港職員から暴行を受け負傷した事件。この映像を見たとき、「ユナイテッド航空に乗るまい」と思った)→ユナイテッド・エクスプレス3411便乗客強制排除事件 - Wikipedia
P211ハブ&スポークス
アメリカン航空=ダラス
ユナイテッド航空=デンバー
デルタ航空=アトランタ
ノースウエスト航空=ミネアポリス
コンチネンタル航空=ヒューストン
P212・・・パンナムの終焉
1986年、パンナムが経営悪化から太平洋線部門のすべてを、機材を含めてユナイテッド航空に7億5,000万ドルで売却(中略)大西洋線も後にデルタ航空に売却し、パンナムは長い歴史にピリオドを打つ
P236・・・経由便と乗り継ぎ便の違い
キャセイパシフィック航空の成田発台北経由香港行きなどは「経由便」、それに対して同じ経路でもチャイナエアラインで成田から台北で乗り継いで香港へ行く場合は「乗り継ぎ便」という。前者はひとつの便名、航空券1枚なのに対して、後者はふたつの便名、航空券2枚で、台北で違う航空機に乗り換える。
P237・・・着陸装置
「着陸装置」というと、着陸させるための高度なシステムを思い浮かべるが、航空機では車輪のことを着陸装置と呼ぶ。ランディングギアとも呼ぶ。
【ネット上の紹介】
ボーイング、エアバス、サーブ、ボンバルディア…。最新のジェット機からプロペラ機まで、機種別の紹介と日本の空に乗り入れた、世界各国の航空会社の特色や意外な利用方法を、130項目で解説する。
第1章 旅客機の謎と不思議(ジェット機編
プロペラ機編)
第2章 航空会社の謎と不思議(JALとANAのグループ会社の謎
国内ローカル航空会社の謎
大手の系列に属さないローカル航空会社
JALとANAは今後どのような機体を保有するのか
格安航空会社の小型機運航は世界的傾向 ほか
「次の人、どうぞ!」酒井順子
P105
エロ系メディアに頻出する「NTR」の3文字。最初は何の意味かわからなかったのですが、これは「ニトリ」のことではなく、「寝取られ」の意なのだそう。
すなわち、妻なり恋人なりが外の男と関係を持ってしまう。というシチュエーションが「NTR」。AVにNTR系の話が多いということは、そういった状況に興奮する男性が、一定数存在することを意味します。(中略)
人間関係において、男性は「所有感」を、女性は「関係性」を求めるのだそうで、自分が所有していると思っている女を外の男に取られるのは、領土侵害のようなもの。
P121
50歳を過ぎた色恋というのは、ほとんど投薬とか点滴とか、もしくは福祉の一環のようなものです。本人達の直接の知り合い以外がどうこう口を出すものでもありますまい。
P221
「ソフレ?セフレじゃないの?」
と問えば、
「セフレとは違いますよ。『添い寝フレンド』のことをソフレって言うんです」
(中略)
「飲んだ後とかに男の子の家に泊まって、一緒のベッドに寝ても特に何も起こらないっていう、そういう感じの友達がソフレ」
【ネット上の紹介】
戦争もバブルも起こらなかったけれど、だからこそ個々の人生がより多様に変化した稀有な時代、「平成」。セクハラ告発の#MeTooムーブメント。男性アイドルの高年齢化。政治における男女平等とは。一つの時代が終わり、新しい波はそこまで来ている!「週刊現代」連載15年。伝説のエッセイ集、最終巻!
女性主導セックスの時代
楽しい老後を過ごす能力
増田明美さんが拓いた道
プリンセスの夫の職業
「不倫ブーム」の行く末
母親孝行は回りもの
老いの花を咲かせるには
嫌われる百合子
神頼みじゃダメ!
『ブレードランナー』の未来〔ほか〕
「ユーミンの罪」酒井順子
本書は「小説現代」2012年1月号~2013年8月号に蓮された。
当時のタイトルは「文学としてのユーミン」
P27
ユーミンの歌における泣かない女は、ダサいから泣かないのです。(演歌の泣かない女は「本当は泣きたいのに、意地とか根性、自己犠牲の精神で涙をこらえて、むしろ笑ってみせるような女」)
結婚して「松任谷」となる
P55
もしも平凡な名字やダサい名字であったら、ユーミンという歌手の行く末は違うものになっていたのではないか。
「冷たい雨」について
P75
中島みゆきが歌ったならば、どれだけ声をふるわせてその怒りと絶望を表現するだろうかというこの歌詞からも、ユーミンは見事に湿度を除去してみせるのでした。(中略)
ユーミンが、当時の女性達にとって恋愛のカリスマ的存在になったのは、誰もが知っている暗い感情を、お洒落に、すなわちポップに歌い上げたからなのだと思います。
P131
ユーミンは、「嫉妬って、するよね」とは歌っていますが、「嫉妬って、苦しいよね」とは歌っていません。女性達が、
「そうそう」
と軽くうなずくことができたのは、その苦いけれど苦すぎないという、味付けのせい。
松田聖子について
P153
人工感こそが、「異性に好かれる」ことを目的とした「ふり」だったから、彼女は「ぶりっ子」と呼ばれたわけです。
対してユーミンは、声の低さも、センスの良さも、容姿も、自然なものに見えました。
P176
「シンデレラ・ストーリー」というと、現状打破のための行動を自分から起こしはしないけれど、持って生まれた美点を他者が発見してくれることよって、身の丈以上の幸せを得る」という女性の生きざまを指すこととなったのでした。
P188
湿り気たっぷりの情感から上手に湿度を抜いて、万人が食べやすく、そして一度食べると癖になるような、カリッとした歯ごたえを出す。その行為、および行為の結果として生まれた作品を「ポップ」と言うのだと思いますが(後略)
P215
この年(1988年)、CDがLPの生産枚数の2倍を超えた。(80年代前半は、レコード店に行っても、普通にLPが置いてあった。今、レコードはマニアの世界。レコード針を作っていたナガオカは、今でも世界ナンバーワンとして、生き残っている。凄いことだ)
P216
昔の日本人は「誕生日を祝う」などという行為を、しなかったらしいのです。それというのも昔の日本では、全員がお正月に一斉に一つ年をとるという、「数え」の年齢を採用していたから。それぞれの誕生日を祝うという発想が、無かったのでしょう。(誕生日は、お祝いしなかったかもしれない。でも、「祥月命日」という考え方はあった。だから、記念日にイベントする、って風習を日本人はもともと持っていた。それが戦後、コマーシャリズムと結びついていった、と思う)
P217
日本古来のイベントは、あまり恋人向けではないのです。冬至だから南瓜を煮て柚子湯に入るとか、お彼岸だから墓参りへ、というのは皆、家族単位を前提とした行事であり、ロマンティックとは言いがたい。
P265
90年代前半は、すなわち一般人がIT機器に目覚めてゆく時代であったわけです。そして我々は、IT機器が今後、自分達の生活をどれほど変えてゆくか、まだわかっていなかった。(ポケベルだけでもびっくりの「革命」と思ったけど、その後、誰もが電話を「携帯」するようになり、画面はカラーになり、カメラ機能が付き、音楽が聴け、ネットと繋がり、現代のスマホに近づいていく・・・私はついて行けない)
【感想】
「なるほどそうか!」の連続。
すっきりした。
もやもや感を言葉で説明するテクニックはさすが。
ユーミンの曲は好きなので、読んでみたんだけど、でもどちらかというと、酒井順子さんが書いてるから、って理由のほうが大きい。
どんな風に書いて、料理してるのかな、と。
【ネット上の紹介】
ユーミンの歌とは女の業の肯定である。ユーミンとともに駆け抜けた1973年~バブル崩壊。ユーミンが私達に遺した「甘い傷痕」とは?キラキラと輝いたあの時代、世の中に与えた影響を検証する。
開けられたパンドラの箱―「ひこうき雲」(一九七三年)
ダサいから泣かない―「MISSLIM」(一九七四年)
近過去への郷愁―「COBALT HOUR」(一九七五年)
女性の自立と助手席と―「14番目の月」(一九七六年)
恋愛と自己愛のあいだ―「流線形’80」(一九七八年)
除湿機能とポップ―「OLIVE」(一九七九年)
外は革新、中は保守―「悲しいほどお天気」(一九七九年)
“つれてって文化”隆盛へ―「SURF&SNOW」(一九八〇年)
祭の終わり―「昨晩お会いしましょう」(一九八一年)
ブスと嫉妬の調理法―「PEARL PIERCE」(一九八二年)
時を超越したい―「REINCARNATION」(一九八三年)
女に好かれる女―「VOYAGE」(一九八三年)
恋愛格差と上から目線―「NO SIDE」(一九八四年)
負け犬の源流―「DA・DI・DA」(一九八五年)
一九八〇年代の“軽み”―「ALARM ´a la mode」(一九八六年)
結婚という最終目的―「ダイアモンドダストが消えぬまに」(一九八七年)
恋愛のゲーム化―「Delight Slight Light KISS」(一九八八年)
欲しいものは奪い取れ―「LOVE WARS」(一九八九年)
永遠と刹那、聖と俗―「天国のドア」(一九九〇年)
終わりと始まり―「DAWN PURPLE」(一九九一年)
「うまれることば、しぬことば」酒井順子
新たに生まれた言葉、
過去、流行ったけど廃れた言葉。
これらについて考察し、コメントしている。
とても面白い、お薦めです。
P26
たとえば、「朝活」やら「パパ活」といった泡沫系の「○○活」という言葉を見ると、「活動」というより「活用」の意味で使用されていることが多いのでした。(中略)
「パパ活」であれば、ときめきに飢えたおじさん達を金ズルとして活用しよう、という若い女性の意欲が感じられます。
P34
別れというのはたいてい、切り出される側からすると寝耳に水。となるとそちら側では、「しばらく距離を置こう」を文字通りの意味に捉えてしまい、
「ということはしばらく経ったらまた付き合うってことよね?」
などと思ってしまうのでした。
「しばらく距離を置こう」とは、出版業界における「休刊」とか「品切れ中」と同様の言い方。復活する可能性は限りなくゼロに近いということを察してほしいという、ずるい言い方でもあるのです。
P36
日本人にとって「縁」とは、人為の結果ではなく、天の配剤ですから、「ご縁」を持ち出されると、反論のしようがないのです。
そんなわけで、「ご縁」は我が国最強のお別れワード。・・・・・・であったのですが、「卒業」は今、それに代わる勢いを持つようになりました。縁を切りたい相手に「卒業」を言い渡せば、「あなたと別れたいわけではありません。新しい世界へ旅立っていくあなたの背中を押してあげたいだけのです」といったほんわかムードが漂うのですから。
P114
看護婦→看護師、保母→保育師のように、女であることを前提とした職業の名称がユニセックスなものに変更されたのは、2000年前後のことでした。しかし同じように「働く女」を示す「OL」という言葉は、その後も生き残っていたのです。
P133
IT技術は、積み上げるものではなく、更新されるもの。(中略)IT化は、若さや新しさが偉いという時代の流れを、さらに強めるのです。
P144
歌の中で「本当の恋」「本当の自分」などと表現されると、まだ見ぬどこかに「本当」が待っていてくれるような気がして、特に若者などは夢が広がるのだと思う。
しかし大人になってみると、それが本当かどうか追求しないところに人生の味わいがあるようにも、思えてくるのでした。(中略)本当だらけの人生というのも、実はつまらないのではないか。
P191
日本においてセクハラという言葉が人口に膾炙したのは、1989年です。(中略)平成元年はセクハラ元年でもあったのです。
P213
「家つき・カーつき・ババア抜き」という言葉が流行ったのは、「核家族化」が流行ったのと同じ、1960年代のとこです。
P223
謝罪会見とは、江戸時代における市中引き回しと同様に、悪事を犯した人を「見たい」という世間の欲求を充足させるために行われるイベントです。
【感想】
先日、「日本語の大疑問」を紹介した。
これを執筆したのが、国立国語研究所の日本語の達人たち。
本書も、日本語についての考察。
改めて思ったが、著者は名人クラス。
「達人」の域を超えている。
【ネット上の紹介】
陰キャ、根暗、映え、生きづらさ、「気づき」をもらった……あの言葉と言い方はなぜ生まれ、なぜ消えていったのか。「ことば」にまつわるモヤモヤの原因に迫る、ポリコレ時代の日本語論。古典や近代の日本女性の歩みなどに精通した著者が、言葉の変遷をたどり、日本人の意識、社会的背景を掘り下げるエッセイ。以下、章題。・Jの盛衰・「活動」の功と罪・「卒業」からの卒業・ 「自分らしさ」に疲弊して・「『気づき』をもらいました」・ コロナとの「戦い」・「三」の魔力・「黒人の人」と「白人」と・「陰キャ」と「根暗」の違い・「はえ」たり「ばえ」たり・「OL」は進化するのか・「古っ」への戦慄・「本当」の嘘っぽさ・「生きづらさ」のわかりづらさ・「個人的な意見」という免罪符・「ウケ」たくて。・「You」に胸キュン・「ハラスメント」という黒船・「言葉狩り」の獲物と狩人・「寂しさ」というフラジャイル・「ご迷惑」と「ご心配」・「ね」には「ね」を
Jの盛衰
「活動」の功と罪
「卒業」からの卒業
「自分らしさ」に疲弊して
「『気づき』をもらいました」
コロナとの「戦い」
「三」の魔力
「黒人の人」と「白人」と
「陰キャ」と「根暗」の違い
「はえ」たり「ばえ」たり〔ほか〕
「日本語の大疑問」国立国語研究所
省略のされ方
P47
2拍 ロケ(ーション)、スト(ライキ)、コネ(クション)
3拍 パンフ(レット)、マイク(ロホン)、アルミ(ニウム)
4拍 イラスト(レーション)、リハビリ(テーション)
5拍 コンタクト(レンズ)、ステンレス(スチール)
4拍にまとめるもの
リモートコントロール→リモコン
通信販売→通販
原子力発電所→原発
うなぎどんぶり→うなどん
学生割引→学割
サラリーマン金融→サラ金
P83
他人に身内のことを話す場合にも尊敬語を用いる地域が多くあります。例えば、関西では、軽い尊敬を表す〈ハル〉を使って
おとうさんはもうすぐ帰らはります/帰りはります
(中略)
父親や赤ちゃんの行動について「ハル」を使う人は、大阪より京都の方がかなり多くなっています。また、京都の女性は男性よりも「ハル」を多く使う傾向にあるようです。
さらに京都では、子供が友達の意地悪をうったえて
けんちゃん、いけずしはんねん。 たたきはんねん。
と言ったり、親が自分の子供のことを
この子、よー泣かはりまっしゃろ
と言ったりすることがあります。 また、
雨、よー降らはりますなあ。
のように、天気や、時には動物の行動など、ふつう敬語を使わないものにまで「ハル」をつけるという特徴があります。(以前も書いたが、大文字山の山頂で、小学校低学年くらいの女の子が虫を見つけて、「あっ、虫さん、いてはる」、と父親に言っていたシーンを思い出す。その時、横にいた私は、「自分は京都の山に登っているなぁ」、と強く感じた次第だ)
P113-114
伝統的に親指を立てるジェスチャーは「男、旦那」を表し、小指を立てるジェスチャーは「女、愛人」を表してきたからです。
しかし、この手話は外国人には通じません。世界の多くの国では、親指を立てるジェスチャーは「良い」「OK」の意味です。
また、小指を立てるジェスチャーは欧米では見られず、少数派ですが、シンガポールのジェスチャーでは「一番あと」の意、中国・香港のジェスチャーでは「悪い」の意、韓国のジェスチャーでは「つまらない」の意、タイのジェスチャーでは「友情」の意、インドのジェスチャーでは「トイレに行きたい」の意で使われることがあります。
(中略)
そのほか、日本の伝統的なジェスチャーで「泥棒」は人さし指をかぎ状に曲げて表します。これを日本の手話にも取り入れて「盗む」「泥棒」の意味で使います。しかし、人さし指をかぎ状に曲げる形は中国のジェスチャーでは「9」を意味し、またメキシコのジェスチャーでは「お金」を意味するので通じません。
P213
赤ちゃん言葉はマンマ、オンブ、ダッコ、クック、バーバ、ジージのような長短(強弱強)と語と、ポンポンやブーブー、ハイハイ、ナイナイのような長長(強弱強)の語に二分されます。[強弱強]は出てきても、[強強弱]は出てこないのが赤ちゃん言葉の際だった特徴です。たとえば赤ちゃん言葉にバーバはありますが、ババーはありません。
P241
もともと犬は「トラ」「クマ」「クロ」といった毛の色や大きさなど、見た目からついた名前で呼ばれていました。つまり、毛が黒ければどの犬も「クロ」と呼ばれていたのです。当時は個人で犬を飼う習慣がなかったため、誰が見てもわかるような名前で呼ぶのはとても自然なことであったと思われます。
ところが、明治6年に「畜犬規則」が制定されると、飼い主の名札がついていない犬は野犬として殺処分されるようになってしまいました。このことがきっかけとなって各家庭で犬を飼うようになったのですが、その犬に多かったのが和犬ではなく、当時ステイタスとされていた「カメ(洋犬)」でした。そして、西洋式に「カメ」らしい名前をということで、「ポチ」や「ジョン」などといった名前が個別につけられるようになったということです。(つまり、「ポチ」は伝統的な犬の名前でなく、明治維新以降の「新しい」名前ということになる)
【ネット上の紹介】
毎日あたりまえに使っている日本語。だが、ふと疑問に思うことはないだろうか。そもそも漢字はいつから日本にあるのか?「シミュレーション」を「シュミレーション」とつい発音してしまうのはなぜだろう?「確認させていただいてもよろしいですか」は乱れた日本語なのか?これまでの絵文字・顔文字とLINEのスタンプでは何が違う?ことばのスペシャリストが集う国立国語研究所が、国民の抱く素朴だが奥深い疑問に呻吟しながら出した名回答を厳選。日本語の教養をこの一冊でアップデート!
第1章 どうも気になる最近の日本語
第2章 過剰か無礼か?敬語と接客ことばの謎
第3章 世界のことばと日本のことば
第4章 どちらを選ぶ?迷う日本語
第5章 便利で奇妙な外来語
第6章 歴史で読み解く日本語のフシギ
「海をあげる」上間陽子
上間陽子さんのエッセイ。
いきなり、強烈な話から始まる。
それは、夫が不倫を告白するシーン。
P10
長く恋人がいたこと、その恋人は近所に住んでいる私の友だちであること、ひと月前に別れたこと、いまはもう、私の友だちに新しい恋人もできたということ。
長い時間をかけて話を聞いて、「で、これを聞いてどうしろと?」と聞くと、「もうウソをつきたくないと思った。(これを読んでどう思う? この夫は恋人に振られ、妻に戻ろうとした。振られなかったら、ずっと二股を続けていただろう。告白したのは、自分が楽になりたいから。そんな「正直な」自分を妻は許してくれると? 不倫をするなら、それなりの覚悟が必要。相手の女性も、妻側から訴えられたら2,000万円くらい請求される)
著者はソッコー、相手の女性にも会いに行く。
さすがノンフィクション作家、聞き取り調査のプロだ。
P16
「とりあえず、4年間のことを彼の口からぜんぶ聞いたから、今度は○○が私にちゃんと説明して」
そしたら、「もともとは遊びだった。そこからはまった」と言われた。それから、なんやかんやこれまでのふたりが付き合い続けた理由を説明された。
でも、私が聞きたいのはそういうことではなく、私のつくったごはんのことだった。
なぜ私のつくったものを食べに来ていたのか、何を思いながらごはんを食べていたのか。日常生活に浸食して、ひとの善意を引き出すのはどういう気持ちなのか。
「なんで私のつくったごはんを食べたの? なんで京都に帰るっていうときに、私に植物の面倒をみるように頼んだの? なんで隣の家に住み続けていたの?」
私の質問に彼女はなにひとつ答えなかった。そして、「離婚するのをずっと待ってた。でも一度も離婚するって言われたことはなかった」と言うと、今度は顔を覆ってさめざめと泣き出した。
泣いているひととは話ができないから、泣き止むのを黙って待つ。泣いている彼女はとてもはかなげで美しくて、なんだか京都の女って本当にタチ悪いなぁと思いながら、それにしても4年間、うちの家とふたつ隣の家で離婚を待ち続けていたっていうのは、なかなかの辛抱強さだなぁとふと思う。
(中略)
本当に苦しかったのはそのあとだ。夫に恋人がいた、それが私の友だちだった。いまふたりは別れていて、彼女には新しい恋人ができたらしい。つまり、私にいま残されたのは、夫のことを許すか許さないかの選択しかない。
咀嚼して咀嚼して、これはもう私には受け入れることができないとわかったとき、私の前に現れたのは、まったく音がなくて、ごはんが食べられないという時間だった。
P206
「私はお母さんが好きじゃない。子どものときは、もうずっと怒鳴られながら指示されてきた。(中略)どれだけやっても、この人は感謝もなにもしないんだなぁって、本当に嫌だなと思ってきた。今、おばちゃんたちはおばあちゃんに触るでしょう?でも私は、触りたくない」
(中略)
私もまた、「そうだよね、おばあちゃんの怒鳴り声って、ほんとひどいよね」と母に言う。そして、「自分の母親嫌いで触ることができないっていうひと、いっぱいいるよ。そういう本とかエッセイなんかもあるよ」と話し、佐野洋子さんの『シズコさん』というエッセイ本を母にあげた。(佐野洋子さんのエッセイは、最高レベルの面白さ、と思う)
【参考】1
以下、「シズコさん」佐野洋子より
P154
私は母を好きになれないという自責の念から解放された事はなかった。18で東京に出て来てからずっと、家で母に優しく出来ない時も一瞬も自責は私の底を切れる事のない流れだった。罪であるとも思った。
P178
家族とは非情な集団である。
他人を家族のように知りすぎたら、友人も知人も消滅するだろう。
P217
神様、私はゆるされたのですか。
神様にゆるされるより、自分にゆるされる方がずっと難しい事だった。
【参考】2
以下、「問題があります」佐野洋子より
P166
夫婦は中からは容易に破れるが、外からつっついて壊そうとしても決して壊れないものである。
妻子持ちの男と不倫をするお姉ちゃん、やめときなさい。骨折り損です。
多分それは、愛ではなく情だからである。愛は年月とともに消えるが、情は年月と共にしぶとくなるのである。
夫婦とは多分愛が情に変質した時から始まるのである。情とは多分習慣から生まれるもので、生活は習慣である。
離婚した友人夫婦が、何年かして、ある結婚式で、顔を合わせた。式が終わった時、もと亭主が、もと女房に「おい、帰るぞ」とつい言ってしまい、もと女房も「はいはい」とあとをついて行ってしまったそうである。
私は二度目の亭主に、前の亭主の名前で呼びかけてしまうことがあった。
【ネット上の紹介】
おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなおその目の光を失わない著者の姿は、連載中から大きな反響を呼んだ。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、身体に残った言葉を聞きとるようにして書かれた初めてのエッセイ集。
美味しいごはん
ふたりの花泥棒
きれいな水
ひとりで生きる
波の音やら海の音
優しいひと
三月の子ども
私の花
何も響かない
空を駆ける
アリエルの王国
海をあげる
調査記録
「松浦景子のバレエあるある」
お笑い系作品。
バレエとお笑いのマッチング。
2015年、座間全国舞踊コンクールクラシックバレエ部門第1位、審査員特別賞、チャコット賞を受賞。日本一に輝き、バレリーナ芸人としての活動を本格的に開始、とある。
吉本興業所属。(=バレエで食べていくのは困難、ということだ。多くの人がアルバイトをいていると聞いている。クライミング界と同じ?)
バレエ業界「あるあるネタ」が披露され、笑える。
東京バレエ団では、熊川哲也氏の著作の横に、本書が置かれているらしい!
巻末には上野水香さんとの対談も収録されている!
上野水香さんとの身長差が歴然!(ほとんど大人と子供)
これがバレエを諦めた直接の原因?
今のバレエ界は身長が必要。背が低いと群舞にさえ雇ってもらえない。
【参考リンク】
松浦景子の【けっけちゃんねる】 - YouTube
【神回】バレリーナ芸人が東京バレエ団で・・・?!上野水香さん&柄本弾さん
【ネット上の紹介】
お団子ヘアを作るとき、毛根から根こそぎ引っ張る母親と、必死に抵抗する娘の戦い―YouTubeでバズり続ける「バレエあるある」の中から大人気ネタを厳選し完全撮り下ろし!初公開ネタもたっぷり収録!
バレリーナ芸人の怒濤の半生が今、明かされる…!漫画:松浦景子波乱万丈伝
1st act バレエあるある「日常・学校」編
2nd act バレエあるある「生徒・先生」編
3rd act バレエあるある「発表会・コンクール」編
4th act バレエあるある「パ・ド・ドゥ&バレエ男子」編
巻末特別対談 松浦景子、あの上野水香さんと「バレエあるある」を熱く語り合いました
「ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ」ヤマザキマリ
先日読んだ「ムスコ物語」と対をなす作品。
自身の破天荒な母・リョウコさんを描いている。
P76
親子の愛情は距離を縮め共有する時間を増やすだけで確かめ合えるものなのだろうか。
(中略)
親というものは、子供にとって、まず強く生きる人間の手本であるべきだと思うし、手放しでも子供がしっかり育っていけること、生きていけることを信じてあげるべきなのだと思う。
誕生日に母から電話をもらう
P231
「今日は、私があなたを生んだ日です」
自分の想像を絶するその一言を聞いてしばらく黙り込んでしまった後、私はその言葉に対して「あ、そうですね。本当にご苦労様でした」と答えた。51年前の出産をねぎらわれた母はこのように続けた。
「誕生日って子供にとっては確かにめでたいことだけど、それ以前に、生むのにあんなに頑張った自分もおめでとうだな、と思ったわけよ」
「いや、確かにそうだと思います」
「子供が生まれた日って、つまり自分おめでとうだよね」
「うん、まあ、51年前の出産、おめでとうございます」
【関連図書】
「ムスコ物語」ヤマザキマリ
【ネット上の紹介】
生きることって結局は楽しいんだよ。音楽と娘と自分の人生を真摯に愛する規格外な母リョウコのまるで「朝ドラ」のような人生!
第1章 リョウコが母になるまで
第2章 働く母、リョウコ
第3章 リョウコに教えてもらったこと
第4章 リョウコと衣食住
第5章 リョウコと家族
第6章 リョウコという母親
「ムスコ物語」ヤマザキマリ
子育てノンフィクション。
このジャンルを私が読んでも実利性はない。
それでも、好きでよく読むのは、純粋に面白いから。
他人の子育ては興味深く、読んで楽しいから。
そもそも産むかどうかで迷う
P58
「だいたい幸せなんてもんは、それぞれの気持ち次第なんだから。あなたの価値観で子供の幸せを決めちゃだめよ!」
P94
「あのね、人間ってのは怖いんだよ。そういうふうに見えないような人がまた怖いんだってば」
夫婦喧嘩について
P102
子供はやはり親の喧嘩など目の当たりにしたくないだろうし、不寛容な自分がみっともないことはわかってる。それでも燻っていると、その前にデルスに何かを言われたと思しき夫が部屋にやってきて、「平和協定しよう」と右手を差し伸べてきた。彼との喧嘩はいつもそうやって”平和”の握手で終結する。
P143
社会にいおいても付き合える人と付き合えない人がいるのと同じで、たとえ血の繋がっている家族という関係ではあっても、私と母は生き方のリズム感も時間の捉え方も全然違う人種だということに、子供の自分は気づいてしまったのである。
P172
子離れの早い遅いが良い悪いという問題ではない。人によって家族や生活環境、そしてメンタルにも個人差があるから、親子の距離感にスタンダードはない。
【関連図書】
「ヴィオラ母さん」ヤマザキマリ
【ネット上の紹介】
国籍?いじめ?血の繋がり?受験?将来?は?なんだそりゃ。『ヴィオラ母さん』で規格外の母親の一代記を書いた著者が、母になり、海外を渡り歩き息子と暮らした日々を描くヤマザキマリ流子育て放浪記。
ハワイからの電話
おかえりデルス
ナシーブとデルス
イルカと少年
キューバの赤ちゃん
ババとチェロ
新しい家族(前編)
新しい家族(後編)
沖縄生まれ北海道育ち
エリート校か現地校か
トムに会いたい!
家族のカタチ
デルスの旅
親離れ子離れの距離感
息子の看病
ラーメンかタコかお坊さんか
思い通りにはならない
地球の子供
「沼で溺れてみたけれど」ひらりさ
お金に絡んで、「沼で溺れた体験」聞き取り調査。
P100
「私の世代だと就職氷河期のせいでずっと非正規だという声はよく聞きますし、まあそれは事実だろうとも思います。ただ、時代のせいにしてフリーズしちゃったら時代の犠牲者になって統計の数字になって終わるしかない。自分の畑にどんどん生えてくる雑草をそのままにするのと、それでも刈ろうと頑張るのとでは、自分の人生という畑の主導権が変わるような気がします。それでも水害で一切収穫なし、もあるのが人生ですが」(人生ままならない、ということだ)
ロンドンにて
P122
「マスクをしていて殴られた中国人の話を聞き、持っているのに怖くてマスクができない状態でした・・・・・・。基本的にはロンドンの人たちは、外から来る人間におおらかで、グローバルな街であろうという自負がある人ばかりなのですが、ロックダウン前は、若い子ほど怒りや不安に身をまかせてしまうような雰囲気がありました。(後略)」
【感想・コメント】
夫婦を含め、男女のトラブルは多い。
人間関係の距離が近いからだ。
距離が近い関係ほど、こじれやすい。
仲がいいからこそ、言ってはいけない「ひと言」、ってある。
野原広子さんじゃないけど、「好きだったものが嫌いになったとき それはもう好きにならないような気がする」・・・となると取り返しがつかない。
でも、風雪に耐えた夫婦は、仲直りの方法を知っているはず。
【参考データ】
.生まれ変わったとしたら、今のパートナーを選びますか?
生まれ変わっても今のパートナーを選びますか?既婚者1,000人の本音 (cancam.jp)
【ネット上の紹介】
「普通の幸せ」のそとになにがあるの?女たちの“お金”と“欲望”をのぞくエッセイ集。
第1章 愛を求める女たち(仙台で無一文、ジャニオタの友人に3万円を送る
不倫相手と暮らすため、彼女が買った5700万円のタワマン
キスに4000円、ママ活男に料金表を渡された女
ソウルで知り会った58歳主婦と、推しを語り合う
2時間2万円、彼女を救った女性用風俗の世界)
第2章 社会でもがく女たち(慰謝料80万円、新卒一人きりのパワハラ訴訟
都民税が払えなくても、彼女は天職探しを諦めない
給料未払いで破産、有名エステの元スタッフに施術される
憧れのロンドン留学を諦め、彼女は緊急帰国した
手取180万円、それでも推しに救われていた)
第3章 しがらみを手放す女たち(代償500万円で、彼女は結婚も不倫も手放した
スピリチュアルに1000万円投じた女に話を聞く
沼津で消耗していたくない、だから彼女はマンションを買った
激安シェアハウスで夫ガチ恋の主婦は安心を得る
投資オタクに惚れた結果、私が150万円を失うまで)
「ワンさぶ子の怠惰な冒険」宮下奈都
近所の書店になく、ぐずぐずしてたら読むのが今頃になってしまった。
(結局Amazonで購入)
全国に、宮下家のファンは多いのではないだろうか?
トムラウシでの生活を綴った「神さまたちの遊ぶ庭」、その後どうなったのだろうか?
「緑の庭で寝ころんで」で、ある程度うかがい知ることができる。(次男の高校卒業まで)本書は、さらに「その後」が綴られている。(白い柴犬=ワンさぶ子の視点付きで)
P34
『神さまたちの遊ぶ庭』の文庫版、発売。北海道の山奥トムラウシで家族で暮らした一年間の記録だ。この本は、単行本で読んでくれた方みんなが好きだといってくれる奇跡の一冊。(私も好きで、エッセイで繰り返す読むのは、この本だけ・・・読むと幸せな気持ちになれるから)
P46
むすめの夏休みの宿題のうち、残すは作文のみ。
「ママ、作文得意だった?」
むすめはとても素直な性格なので、他意なく、ほんとうに素直に聞いてくる。
「得意だったよ!!」
大人げない小説家はむきになって答える。
「じゃあ、読んでみてくれる?おかしいところがあったら直すから」
タイトルは、メダカと暇? 何の話だろうと読みはじめてすぐ戦慄。なにこれ、おもしろい。(この作品をそのまま掲載してほしかった・・・それにしても、この娘さんは愉快な性格。戦慄の人間国宝クラス、と思う。英語先生が「普段そんなことはしないんですが、採点しながら笑ってしまいました」という答案を提出し、授業中寝てしまい、クラスメイトが起こそうとするが、数学の先生が、「寝かせておいてやれ」、と。ただ者ではない)
【参考リンク】
「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都 -
「緑の庭で寝ころんで」宮下奈都 -
PS
えちぜん鉄道に乗ってみたくなった。
永平寺か恐竜博物館に行くときに乗ってみよう。
【ネット上の紹介】
北海道トムラウシの山村留学から福井に帰ってきた宮下家。当時、子供たちの妄想(脳内)犬だった白い柴犬ワンさぶ子を本当に迎え、すっかり家族の一員に。三人の子供たちは、大学生高校生中学生となり、思春期真っ只中。それぞれが自分の道を歩き始めていく。広がる世界、かけがえのない音楽、しなやかに自由を楽しむ、宮下家五人と一匹の三年間の記録。
4月 それぞれの冒険
5月 はじめての不調
6月 毎日楽しいね
7月 福井は亜熱帯
8月 この夏もトムラウシへ
9月 ワンさぶ子のおかげで
10月 ただでさえ眠れないのに
11月 力がほしい
12月 新刊が出たのだ
1月 戌年!〔ほか〕
「都と京」酒井順子
京都と東京を比較しながらのエッセイ。
P25-26
「いけず」という性質、というか文化も、他所者と京都人、そして他人と自分とをキッチリ区分する剪定作業の中で磨かれたものと思われます。
P52
源氏物語の登場人物達は、
「低い身分の者は、結局低い身分にすぎない」
だの、
「相手として不足なほどに低い身分」
だの、
「相手よりどれほどひけをとる身分だというのだ」
だのと、やたら身分のことを気にかけている。
P118
実際、仏教というものが日本でブレイクしたのは、個人の悩みを相手にするようになってからの気がします。
P270
明石の君は田舎の出であるにもかかわらず、やがて他のどの女性よりも幸せな道を歩んでいくのです。子供の頃から源氏の手元で、源氏好みに育てあげられた紫の上は、田舎の女に源氏を奪われた嫉妬に、苦しみました。
みやこ人の中には、紫の上が明石の君に対して感じたであろう「田舎の人に幸福や利権をかっさらわれる」ことに対する恐怖が、あるのだと思うのです。自分たちの脆弱さを知っているからこそ田舎の人の力強さを恐れ、その力強さを、野卑さや図々しさとして嫌悪した。
P251
京都の人、というか関西の人と話していて「東京にもこの言葉があればいいなぁ」といつも思うのは、
「・・・・・・してはる」
という言い方における「はる」です。
(中略)
「仏さんが守ってくれはった」
のように、圧倒的な高所にいる存在に対しても「はる」だし、犬にも「はる」なわけで、たとえ高低差が存在していても、「はる」という語を通過させることによってフラット化するという効果を、この語は持っているように思います。(以前、大文字山の山頂で、小学校低学年くらいの女の子が虫を見つけて、「あっ、虫さん、いてはる」、と父親に言っていたシーンを思い出す。その時、横にいた私は、「自分は京都の山に登っているなぁ」、と強く感じた次第だ)
【感想】
文章を書くには3点重要と思う。
①感度の良さ
②知識
③文章テクニック(言葉の選択と組み合わせの妙)
酒井順子さんは、いずれも高レベル。
だから、一定数のファンがいるんでしょうね。
【ネット上の紹介】
狭い土地で千年続く歴史から生まれた「しきたり」と共存する「京都」。新しいものをどんどん取り入れて新陳代謝を繰り返す「東京」。日本のふたつの「みやこ」と、そこに生きる人間のキャラは、どうしてこんなに違うのか?東女が、異文化「京都」に出会って以来の発見・疑問・驚きを、「言葉」「節約」「神仏」「若者」「敬語」「女」など、19の観点から鋭く考察した比較文化エッセイ。
言葉―いけずと意地悪、もっさいとダサい
料理―薄味と濃い味
節約―始末とケチ
贈答―おためとお返し
高所―比叡山と東京タワー
祭り―祇園祭と高円寺阿波おどり
流通―市場と市場
神仏―観光寺院と葬式寺院
大学―京都大学と東京大学
書店、喫茶店―恵文社とabc〔ほか〕
ピーヴァ(ヨアン・アンブロージオ・ダルツァ)
千々の悲しみ(ルイス・デ・ナルバエス)
死に向かって急ごう(『モンセラートの朱い本』)
天にあまねく我らが女王よ(『モンセラートの朱い本』)
死の舞踏(ハンス・ホルバイン)
聖母マリアの七つの喜び(カンティガ一番)
聖母の御業に驚くなかれ(カンティガ二六番)
コンスタンティノープル包囲(カンティガ二八番)
コンスタンティノープルを守った聖母のイコン(カンティガ二六四番)
右手を斬られたダマスコの聖イオアン(カンティガ二六五番)
モーロ王の嘆き(グラナダのロマンセ)
マラケシュを救った聖母の御旗(カンティガ一八一番)
気がふれたホスピタル騎士団の修道士(カンティガ二七五番)
殺されたユダヤ人の子ども(カンティガ四番)
ユダヤ人に汚されたキリストの像(カンティガ一二番)
囚われ人は決して(「獅子心王」リチャード一世)
聖人と福者
サントスの御作業
日本の殉教伝