S臨床検査技師学校で、臨床検査総論の講義と実習を担当してきましたが、学生同士の肘静脈採血実技の指導場面を思い起こします。
シミュレーターの腕の模型を使って、何回も針刺しの練習を繰り返し、いざ、血の通った生きた腕に向き合ったとき、青ざめるもの、躊躇するもの、逃げ出すもの、注射器をもった手の震えが止まらないもの、その一方で全員に目配りする方も、緊張を隠しながらの実技指導でした。
どのようなミスや事故が起こるのか、自分自身の失敗談や経験も含めて、嫌やと云うほど執拗な説明をしてからの実技ですから、どちらも緊張するのは当然のこと。
神経損傷、動脈損傷、静脈貫通、内出血、血腫、空気栓塞、感染症等など。
真っ白なワイシャツの袖が血だらけになった経験、柔道2段の猛者が、針を刺した途端に貧血を起し、危うく転倒しそうになった話しには、学生たちの顔に笑いはみられませんでした。
うまく静脈に的中して、注射筒に血液が流れ込んできたときの表情は、なにか一つのことをやり遂げたような、満足な表情でした。
脱皮した!そんな感じを抱いたものでした。
初心を忘れないこと、怖れながら敢行すること、経験を積んで慣れてきたときが一番危険なのだから!と。
実際問題、採血がすんで、どれだけの患者さんが、針刺の痕をどのくらい指で圧迫しているか、じっくり観察してみてください。
肘を曲げたままの人、早くに下着の袖を下ろす人、放射線科に、薬局や会計の窓口に急ぐ人、帰りのバスの発車時間を気にする人。貼った絆創膏が、止血の役目をしているかのように、・・・・。
5分間の圧迫を確実に守ってくれる患者さんは、10人中、精々1~2人程度です。
「そんなこと、見届けているほど閑じゃない!」とは、採血する術者の言い分であって、あとでクレームを訴えにきた患者さんには、ほとんど通じないどころか、「責任転嫁だ」と、反撥を買うのが落ちです。
採血に入る前の接遇のあり方、術中の表情や訴えの観察は勿論ですが、ここも大きな分岐点と云えましょう。
些細なトラブルであれば、誠意のある対応によって納得に至るのが大部分ですが、さりげない、ほんの一言や、ちょっとした態度が、悪印象の導火線に点火することになり、思わぬ事態に進展することもありえます。
1日およそ10万件の採血、1件のミスも許されません。
医療行為とは、いつも危険と背中合わせなのですから、・・・。
学生時代の採血の実習を思い出して、懐かしく読ませていただきました。採血される立場になってみて、毎日毎日、吸血鬼のように数をこなして、基本を忘れてはいませんか?と言いたいときがありますね。
読んでくれても、コメントするのは
難しいですね。特に関係者はお忙しいから。
今日お会いしたoniさんとは化石さんのヌログの話をしました。
メールでは、かつての教え子も含めて「参考になる」と云ってはくれるのですが、コメントは難しいかもしれませんね。
もう少し、シビアなところに触れながら、続けてみます。
現在、私が働いている病院では全て看護師が採血しています。
採血が原因で患者さんがどうこうというのは無いようですが・・。
検査技師は職員健診の時にお互い採血し合うくらいで、ほとんど行っていません。
学生時代に採血は実習でやってきたはずなのに、1回で採れなかったりすると相手の人に申し訳なくて・・・。
もし相手が患者さんだったら?と思うとさらにです。
書き込み、有難うね。
大きな病院で、採血がすべて看護師さん任せは珍しいくらいですね。
検体採取から、検査結果の報告まで、検査のすべてを一貫して検査技師が担当するのは、化石の理想論です。
とは言っても、人手と検査件数の問題もありますからね。
採血問題、もう少し書き込んで、話題を変えようと思っています。