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新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

医療と国民皆保険の崩壊

2008-11-19 15:31:44 | 医師不足の深層探究

       医療行政と医療現場の乖離(1)

 実際問題、どこから手を付けていいやら、皆目見当もつかないほど、医療現場の窮状と云いますか、惨状が続いて、情報収集に追われるばかりの毎日でした。

       医者のモラルの低下」と断じた二階大臣

 「政治家の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だ。忙しいの、人が足りないのと云うのは、言い訳に過ぎないと断じたのは、東京都をはじめとする、救急妊婦のタライ回し事件を批判した二階俊博経済産業大臣の弁でした。

 おりしも、産婦人科勤務医163名からの全国アンケート調査の回答結果が報告されました。

 在院勤務時間の平均は295時間、月間37日勤務に相当します。最大は、月間415時間、1日8時間勤務として、月間の勤務日数は、なんと52日間。常軌を逸しています。

 これでも、[医師のモラルの問題]と云うのでしょうか。          

        無駄な道路に、1,240億円

 二階大臣の地元、国道42号線に、1,240億円を投じた道路を、地元民は「二階バイパス」と呼んでいますが、投資効果は、ほとんどないとか。

 この無駄金の、10分の1でもいい、NICUに回したら、全国で1.000床も不足している保育器が、20床以上も設置できますし、何人もの救急妊婦や新生児の「タライ回し」が防げることでしょう。 

        問題企業から、多額の献金

 さらに、二階大臣は、談合事件や設計ミスで問題を起こし、営業停止や指名停止処分を受けた3つの企業から、問題発覚後に数百万円の献金を受けています。

 厳しく深刻な医療現場を見た、その上で、「政治家のモラル」の不足を、つぶさに鏡と向き合ってから、「医者のモラル」を云ってほしいと、つくづく思います。


医療と国民皆保険の崩壊

2008-10-13 09:26:24 | 医師不足の深層探究

Dsc02600   県立大野病院産婦人科事件の波紋(8)

       厚労省も打つ手なし!

 産婦人科学会の実態調査(中間報告)によると、勤務医の「月間在院時間」平均で295時間、最大は、なんと415時間。

 1日労働時間8時間で割ってみると、平均で1ヶ月37日間勤務、最大の医師で、52日間も勤務したことになります。

 「月間在院時間数」は、「月間勤務時間数」178時間と、「月間時間外在院時間」117時間の合計、つまり、在院時間の40%が「時間外」と云うことになります。

 これ以外の月間オンコールも、平均144時間、勤務医への負担の大きいことが分かります。

 奈良県立三室病院は、2人勤務体制でしたが、医師確保のめどが立たず、8月からお産の新規受付を中止。年間200件もの分娩を扱っていました。県立五條病院も産科を休診したまま。大淀町立大淀病院、済生会中和病院も分娩の取り扱いをやめたままです。

 人口当たり産婦人科医師数は全国最低水準になりました。

 厚労省(06年12月)の調査によると、15歳~49歳の女性10万人当たりの産婦人科医師数は、奈良県は31.9人で、全国43位。

 大野病院産科事件以後、産科の一人医長病院は、リスク回避による医師の退職、転職、休止、閉鎖、統合が相次いで、救急車の「産婦タライ回し」の多発が懸念されます。

 消された年金、偽装の請負、偽装の派遣に右往左往する厚労大臣に、なすすべも、打つ手もない有様です。        


医療と国民皆保険の崩壊

2008-10-05 15:07:28 | 医師不足の深層探究

      県立大野病院産婦人科事件の波紋(7)

         県側が懲戒処分撤回!

 裁判で無罪が確定した加藤医師に対して、3年を経過して福島県側が懲戒処分(減給)を撤回。しかし、懲戒処分の原因になった事故調査委員会報告は「当時としては適正であった」ことを理由に見直さないことを決め、死亡した産婦患者側への賠償責任を、改めて検討する方針を明らかにしました。

 加藤医師は、「名誉が回復されてうれしく思う。心機一転、地域医療に貢献したい」と、弁護士を通じてコメントを発表しました。

 加藤医師は、今月中旬から会津若松市の会津中央病院で、産婦人科医として復帰する予定です。


医療と国民皆保険の崩壊

2008-09-18 10:58:32 | 医師不足の深層探究

     県立大野病院産科事件の波紋(6

       加藤克己医師、就職先決まる 

 無罪となった加藤医師に、処分を科し、休職扱いにした福島県当局は、復職の辞令をだしましたが、県職員を辞職しました。

 加藤医師の所属する福島県立医大産婦人科佐藤教授は、「県外の病院からも誘いがあったが、県内の産婦人科医不足の現状を踏まえ県内に残ってくれるだろう」と語っていましたが、新たな技術を学びたい、という意向もあって、子宮筋腫に対する集束超音波治療(FUS)の、数少ない実施施設である、会津中央病院に10月から勤務することになったようです。

 加藤医師は記者会見で「各学会、全国地区の医師会の先生方におかれましては、医療現場が大変な状況であるにもかかわらず、様々な形で応援していただきましたことに深く感謝申し上げます。また、インターネット等でご支援くださいました皆様、有難うございました。」とコメントをされました。

 無罪判決後、加藤医師は「地域医療を精一杯やりたい」と。


医療と国民皆保険の崩壊

2008-09-04 10:36:47 | 医師不足の深層探究

       県立大野病院産科事件の波紋(5)

        隠された県当局の「騙し」の真相

 加藤医師が産婦人科の「一人医長」に就任したのは04年4月。医師になって9年目、この年224件のお産を手掛け、そのうち41件が帝王切開手術で、ほとんど一人で行ってきました。

 そもそも03年、大野病院の移転・新築にともない、福島医大に「小児科の医師もくるから、産科の医師も派遣してほしい」から始まります

 大学側教授も「小児科医がいるのであれば」、そして加藤医師も「僕が断る理由もなくなった」と承諾。

 「産科医一人より、小児科医がいれば3人分の仕事ができる」と思ったからでした。

 しかし、県当局は小児科医の配置はしませんでした。

 医大の小児科教授は「なんで加藤医師をだしたんだ、『私はだす』なんて云った覚えはない」と産婦人科教授に苦言。

 このあたりを県当局に糺すと「当時の職員はすでにいないのでわからない」

 さらに驚いたことは、福島県医療事故調査報告書です。

 加藤医師の判断ミスと報告、医大側の「書き直せ」の抗議に対し、県当局は、「ミスを認めないと保険会社が保険金を支払わないから」さらに「当時は、刑事事件になるなんて、考えてもいなかった」 

 結局、遺族に保険金が支払われるように、そのためにつくった報告書が、刑事事件として、捜査当局が介入するきっかけとして利用されたわけです。にもかかわらず、このことは、裁判で問われることもなく結審しました。

 医大教授から「なんとか行ってくれ」と頭を下げられたのに対して加藤医師は「分かりました、医局にはお世話になったし、お礼奉公します」と。

 医大教授は「私は県に騙された」と悔恨の述懐をしています。これが隠された真相です。