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新・臨床検査の光と影

人の命を測る臨床検査に光を!

医療崩壊「かわら版」(12)

2009-07-21 11:36:05 | 医師不足の深層探究

Photo  医療崩壊「かわら版」(12)
  
 壮大な大実験の大失敗!
 
医師不足から病院の統廃合や診療所化、無床化、無医地区化、民間委託による利益優先の経営など、とくに、公立病院の窮状は深刻です。
 このような地域医療や救命救急医療崩壊の原因は、いくつか指摘されています。
 その中で、最大の原因としてあげられるのは、2004年から始まった医科の新医師研修制度です。

 研修先の選択の自由化、それによる都市部への一極集中化や、設備のいい、あるいは医師数の多い民間大病院への流れ。

 待遇、生活環境、研修効果、子弟の教育環境など考慮して研修先を選択することになります。

 研修を終えた研修医は、開業の道を選ぶか、あるいはフリーになって医師派遣エージェンシーへの登録をするなど、その数、数万人にも達しています。

 結局、充実した魅力ある研修ができないと判断した、出身大学に戻る研修医は51%にも激減、派遣元の大学病院の医師不足が起こり、いままで、教授の裁量で中小病院や地方の公的病院へ派遣していた研修医の、大学病院による「貸し剥がし」が、一挙に拡大しました。

 理想を追って、現実のシムレーションを描かなかった付けが回ってきたのです。

 「壮大なる大実験の、壮大なる大失敗」が、今日の医療崩壊の大きな一因であることは否めません。


医療崩壊「かわら版」(11)

2009-07-05 10:11:52 | 医師不足の深層探究

Dsc00881_3        医療崩壊「かわら版」(11)

  北から南から、日本中で医療崩壊の厳しい施策が進行しています。

 病院統合廃止、それに伴う首長のリコール運動、病院の診療所化、地方独立行政法人化、などなど、これはほんの一部の例です。

 総務省が、各自治体に対して、財政健全化法を盾に、3つの指標をつきつけました。

 第1は、医療の経済効果をあげること。

 第2は、再編・ネットワーク化の構築

 第3は、経済経営形態の見直し

 これらを達成する実行計画プランの提出を求め、達成できなければレッドカード、すなわち「再生団体」に指定、一気に「公立病院改革ガイドライン」の実行を迫り、数値目標の達成、医療の効率化の推進を押しつけます。

 その被害を、まともに受けるのは、地域住民、とりわけ病人はもとより、過疎地の高齢者はたまったものではありません。


医療崩壊「かわら版」(10)

2009-06-16 18:33:02 | 医師不足の深層探究

Photo_2    医療崩壊「かわら版」(10)

  医師たちが自衛の労組結成

 今年3月、日本医師会は「勤務医の健康を守る」“プロジェクトチーム委員会”を立ち上げ、勤務医の命を守る本格化に踏み切りました。

 5月には、医師自身が自衛のため、個人加盟の医師労働組合「全国医師ユニオン」を結成し、6月7日には、120人が参加して第2回集会を開催しました。

 主な活動の内容と趣旨は、ご覧のとおりです。

 何人かの医師にインタビューをしましたが、「医者も労働者か?」とか「36協定って、なに?」「医者にも労働基準法が適用されるの?」といった、素朴な質問や感想が聞き取れました。

 異常事態が起こっている医療の現実を、まざまざと思い知らされましたが、一方で医師の労組結成は、至極当然で当たり前の出来事、それが実感です。 


医療崩壊「かわら版」(9)

2009-06-14 09:02:54 | 医師不足の深層探究

    Photo 医療療破壊「かわら版」(9)

     周産期母子センターの今

 スーパー総合周産期母子医療センターは、おしなべて、運営の危機的状況にあります。

 皇室ゆかりの愛育会病院、日赤医療センター、それぞれ労働基準監督署の立ち入り調査があり、医師の当直勤務は、労働基準法違反の疑いがあるとして、具体的な是正勧告をうけました。

 とくに愛育会病院は、「現状では労基署の改善勧告を守ることはできない」と、周産期救急から撤退することを決めざるを得ない状況にありました。

 日赤医療センターは、労働基準法36条、いわゆる「36協定」すら締結していないことの指摘を受けて、急きょ、過半数の職員から承認を受けた代表と病院当局が、医師の夜間・休日等に関する36協定を結びました。

 どこの管理者も、押し並べて、「労基法通り守っていたら、運営は不可能だ」との声があがっています。

  その反面、自らの命の危険を感じた勤務医は、2人3人と立ち去りがたサボタージュ、救急受け入れ休止、救急車は、生き残った救急センターに一極集中、やがて、ここも崩壊の憂き目の悪循環。

 かくして医師不足のしわ寄せは、新しい命を生み、育む母親に、生まれ来る新しい命の危機をもたらしています。


医療崩壊「かわら版」(8)

2009-06-11 09:41:04 | 医師不足の深層探究

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  医療療崩壊「かわら版」(8)

t   「ただ働き」に司法の判断

 奈良県立病院産婦人科医師2名は、「当直という名の夜勤」の対価2年分、9千2百万円の支払いを請求、奈良地裁に提訴、4月22日奈良地裁は、労働保障の時効部分を除いて、1.540万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

 医師の「偽装当直」を「夜勤労働」と認めて、その対価を支払うとした判決は、全国初!。

 「パンドラの箱」から飛び出した災厄は、①当直勤務では対応しきれないこと現実を明らかにし。②いきおい、少ないスタフで、連続労働の夜勤をせざるを得ないこと。③労基法に従って交替制勤務にするには、医師不足が足かせになること。④違法当直を夜勤にするには、莫大な労働対価の人件費が必要になること。⑤激務に耐えかねて「立ち去り型」の離職が増え、さらに残った医師に過重な負担が集中すること。

  かくして、辛うじて踏ん張って残った病院や医師に、患者が集中する悪循環の連鎖反応は、やがて将棋倒しの2次、3次の連鎖を引き起こします。

 奈良県は、控訴しました。

 「パンドラの箱」の底に、果たして希望の光が見えるのは、はるか先の夢物語にも等しい現実です。

  しかし、労使双方はもちろん、「ボール」は、確かに厚労省の手に返されたことは事実です。