読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

シン・中国人 激変する社会と悩める若者たち

2024年02月20日 08時52分55秒 | ■読む

斎藤淳子著、ちくま新書刊
最近の中国の印象は、かなり悪く感じます。
その中国の北京に住んで26年の著者が、昨今の中国の結婚適齢期を迎えている若者たちの実態を詳細に紹介しています。

中国は、広大な面積を持ち、多民族によって構成されており、(執筆時点で)世界最大の人口を有している。
だから、全国平均の人口密度が低いものの、人が多すぎるので熾烈な競争社会である、という論を、別な書籍で読んだことがあります。

著者によれば、それも一つの基礎的な要因だが、太平洋戦争後に成立した中国共産党の迷走によって生じた過酷な環境が国民に大きな影響を与えたとのこと。
更に、迷走故に政策が大きく変わり、一世代で価値観や人生観が大きく変わったことを指摘しています。
社会保障制度が十分でなく、親子で生活を支え合わざるを得ないことも、中国社会の様相を理解する為に重要だということ。

改革開放後の世相の明るさは、かつての日本の戦後の急成長とバブル時代の高揚感と明日への希望を圧倒的に上回り、北京オリンピックから2年後くらいまで続いたとのこと。
また、市場制度への急激な移行によって、個人が豊かさを求めるこをが認められ、生存競争の激しい中国社会が一斉に全力疾走に向かった。
更に、社会・経済のあらゆる状況が、年単位で加速度的に変わり競争が更に激化した。

その結果、多くの面で目指すべき目標が単一化し、多様な価値観が失われた。
また、一人っ子政策故に、親が頼るべき子供が一人なので、親子共に学業などへ時間とお金を集中しせざるを得ず、幸せな未来のために多くを犠牲にしているという。
以上の事などが、現在の結婚適齢期の若者たちと親の価値観や行動に多大な影響を与えており、日本、あるいは欧米の「常識」とかけ離れた現象が生じているとのことです。

本書の分析の一部を挙げてましたが、それ以外の多くの分野も、著者の友人や知り合いへの取材を交えながら多面的に深く論じています。

文章が読み易く理解しやすい。
分析力も素晴らしい。
そして、中国に愛着を持ちながらも、事実に即した分析を偏ることなく多面的に論じていて見事です。
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斎藤淳子
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評価は5です。

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