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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

喪失の国、日本

2010年11月23日 08時35分51秒 | ■読む
M・K・シャルマ著、山田和訳、文春文庫刊
1990年代の初頭、インドは社会主義から資本主義へ、経済政策を大きく変えました。本書は、そうした時期から間もない頃、インドへの投資が大きく増えていた日本へ赴任した、調査会社のエリートインド人が見た日本社会を描いています。下記URLによれば、訳者は、インドに関する著作が多いようですが、本書の誕生に関する前書きは、実に驚異的です。正しく奇縁とも言うべきもので、本書のような優れた著作を読めて誠にありがたく思いました。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/山田和
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さて、本書の作者は、お父さんが、太平洋戦争の際、日本と共にインパール作戦を戦ったそうで、日本人を尊敬し、日本に憧れていたので、その息子である著者も、大変な日本好きなヒンドゥー教徒です。その作者が、バブル絶頂期の日本を訪れ、驚愕、という程に驚く日本の姿は、近代化の遅れたインドでは考えられないものでした。
また、来日後、氏の面倒をみた人々との交流を通して、日本の洗練されたマナーや習慣に驚嘆しています。この辺りは、読んでいて実に愉快でした。「ムフフッ」てな感じです。しかし、読み進めるに従って、日本人がもつ独自の習慣や考え方の奥にある、日本に独自な価値観を分析し、インドや欧米と比較する場面が増えてきます。そして、その指摘が実に的確であり、著者の知性が次第に明らかになってきます。
やがて氏は、ある事情により日本を去りますが、日本の文化や習慣を尊重しながらも、現代世界にあって課題となる事柄を明確に指摘し、日本人の現代の生き方や価値観がもたらすかもしれない危険性を鋭く指し示しています。常々漠然と感じていた不安感を見事に示されたと感じました。非常に深い思索に感動しました。一読をお勧めします。
評価は5です。

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