読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

僕の愛読詩集

2009年03月04日 19時08分21秒 | ■聴く
さだまさし編・朗読、新潮社カセットブック発行。
A面には宮沢賢治、B面には井伏鱒二の詩集が収録されています。そして、B面の最後には井伏鱒二さんとの対談が収録されているのです。ビックリしたなぁ。1993年(平成5年)まで存命であったのでした。世に名高い名文で、確か中学の時に短い文章を読んだ記憶があります。水道の蛇口から水のしずくがぴっちゃん、ぴっちゃん、と落ちている描写が含まれていたと記憶しています。(先生に読み方が下手だ、と何回も朗読させられたので覚えています)
それにしても井伏さんの作品に詩があるのは知りませんでした。これらの詩集を、さださんが朗読しているのですが、朗読のプロではないので、心を打つ、というほどの力はありません。しかし、佐田さんの作品の根源に触れる気がして納得しました。さださん自身の解説で、宮沢賢治と井伏鱒二の詩の特徴と違いが述べられています。その両作品とも「口説かない」が「口説かずに口説く」。そして『賢治は、白く大きなキャンバスに、自分にしか見えない色とりどりの絵の具で歌う。井伏先生は、言葉に一切化粧をほどこさずにゆっくりとおだやかな体温を歌う。』としています。
20代にさださんのLPを何度も聞きましたが、その中に美しい大和言葉がちりばめられた曲がありました。「春告鳥」です。
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衣笠の古寺の侘助椿の
たおやかに散りぬるも陽に映えて
そのひとの前髪僅かにかすめながら
水面へと身を投げる

鏡のまどろみのくだかれて
錦の帯の魚のふためいて
同心円に拡がる紅のまわりで
さんざめくわたしの心

春の夢 朧気に咲き
春の夢 密やかに逝く
古都の庭先野辺の送り
ふりむけばただ閑かさ

化野の古宮の嵯峨竹の
ふりしきる葉洩れ陽にきらめいて
そのひとのこぼした言葉にならない言葉が
音も無く谺する

足元に蟠る薄氷に
靄めいた白い風立ちこめて
春告鳥の問いかける別離に
たじろぐわたしの心

春の夢 朧気に咲き
春の夢 密やかに逝く
古都の庭先野辺の送り
ふりむけばただ閑かさ
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さださんの曲の魅力は歌詞に追う所が大きいと思いますが、なぜこのような歌詞が書けるのか、今まで謎だったのが、このカセット文庫で理解できたように思います。
最後の井伏さんとさださんの対談が良かった。井伏さんが、多分シャイなのだと思います。穏やかなお人柄が忍ばれました。そして、自作の「山椒魚」の結末が、登場する山椒魚が「かわいそうなので、書き直したい」と言っています。深い味わいがありました。
朗読自体は良くありませんが、「さだワールド」の一端を垣間見るのに良い作品であると思います。
評価は4です。

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