
白石隆&ハウ・カロライン著、中公新書刊
経済発展著しく、領土と影響力の拡大に腐心している中国に関する書籍に関心があるので、今回は、少し堅めの新書を選びました。
中盤までは、東南アジア諸国々それぞれの、戦後の経済政策の過程を辿り、更に中国との関係を論じています。
中国の対外政策は、鄧小平の改革開放後に、覇権主義を見せること無く、ひたすら経済発展に邁進してきたため、西洋諸国及び東南アジア諸国との経済関係を、比較的順調に深化させていたとのことです。
特にインドシナ半島の国家群では、中国と隣接するミャンマー、ラオス、ベトナムが、アメリカ及び日本と中国との間で巧みな舵取により経済発展の努力を重ねてきたとのことです。
そのことをかなり学術的な語り口で論じており、東南アジア諸国のしたたかさに気付かされました。
中盤以降は、中国の歴史と、周辺諸国との関係を明らかにしつつ、華僑と言われる人々が、何故東南アジア諸国に移民したのか。そして、その地で地歩を築き何者になったのかを論じています。
現代の東南アジアの国々は、それぞれに異なった来歴を辿り異なった国内状況にありながらも、国際的な経済の結び付きによって、共通した文化、言語、思想が浸透してきた為、それらの国固有の人々だけでなく華僑の人々の考え方や行動規範にも影響を与えている。その為「中国人」という範疇に収まらないが、自らの出自故に中国文化を学び論じる人々を「チャイニーズ」という、かなり幅のある範疇に属する人々であるとしています。
それ故に、中国が領土と影響力を拡大するために「チャイニーズ」の人々を動員することや、かつての冊封体制に類似した地域システムを作り上げることは不可能だとしています。
中国共産党幹部は、子弟をアメリカに学ばさせることで、世界に通用する人材に育て上げる為に子どもに投資をしているそうですが、トランプ大統領の時代に、共産党員の子弟のアメリカ入国を認めないという方針を出したと記憶しています。
アメリカは国力が衰えつつあることは確かでしょうが、ソフトパワーは、いまだに強大なのだと思いました。
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○白石隆 ○ハウ・カロライン
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評価は4です。
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