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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

みずうみ

2010年01月03日 05時53分49秒 | ■聴く
川端康成著、横浜カセット文庫刊
不思議な作品です。文学って難しいなぁ~、という感じです。主人公の銀平は高校の教師で、教え子の美しい少女のストーカー。結局二人は結ばれるが、少女の両親の知るところとなり、教職を失ってしまいます。銀平は、その後もストーカー行為を続けるが、物語は、そんな事とは関わりのない、醜悪でくたびれた女と酒を飲んで分かれた後で、唐突に終わる。その性質故に、次第に人生の破滅に向かってトボトボと歩いて行く男の姿が描かれています。
特徴的なのは、物語が、銀平の人生の時間軸をアトランダムに行き来して進む事です。その手法によって、比較的単純な話に奥行きが生じているようです。そして、主人公の足が猿のような醜さで、そのことに拭いようのない劣等感を抱いている主人公は、ひたすらに美しい少女に惹かれていくようです。私も美しいものに惹かれるタイプなので、この主人公の心理が分かる気がします。(ストーカーはしませんが)
人が美しさや気高さに惹かれるのは、自らが、その高みに到達できない予感を持っているからではなっかと思います。例えばグレース・ケリーの神々しいまでの美しさに初めて接した時、私は映画館の座席で恐怖に近い感情を持ちました。何とも奇妙な感覚ですが、あり得ない美しさに身体が萎縮したような感覚でした。
恐らく主人公の劣等感が、美しいものへの憧れを逆らいがたいものにしており、それ故に人生の破滅に向かったのではないか、と思います。辛く悲しく物語でした。
評価は4です。

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