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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

ロジスティクスの歴史物語

2017年05月30日 18時39分56秒 | ■読む
苦瀬博仁著、白桃書房刊
20年程前知人から、かつて水運で栄えた地域が湖を通して物資、文化だけでなく婚姻による人の縁も結ばれたと教えられました。その後、様々な書籍(例えば乙川優三郎さんの「さざなみ情話」、あるいは書名を忘れましたが、江戸時代に霞ヶ浦と那珂川を結ぶ水路の計画)やテレビ番組(ブラタモリ)で往時の水運の様子を垣間見ました。
本書は、そんな長い期間に亘ってうっすらと関心を持っていた水運を含めた輸送全般を扱っています。江戸時代、徳川家康が物流を視野に入れた新しい都市の建設に着手する。当時は水運が要であったので、河川、海に堀を加え、流通体系を構築します。江戸が発展するにつれ、物資の集積拠点で会った河岸が機能分化と移転を重ね、やがて近代に至り、鉄道、道路と物流の主役が交代しますが、その変遷を具体例を交えて述べています。
また太平洋戦争の敗戦の主因が兵站の軽視にあったことを指摘していますが、それを江戸期から現代に至る歴史の中で位置付けています。また、荷物の運搬という簡潔な捉え方に端を発する物流という概念が、時代と共に、関連する物資の保管、製造、資材の調達といった川上側への拡張、更に、運搬に関連した受注、情報管理などの、運搬に関係するすべてを含めてロジスティクス、サプライチェーンという言葉と概念に移り変わっていったこと、戦後の我が国の物流を巡る政策の変遷が整理され分かり易く解説されています。
後書きで、いのうえひさしさんの言葉を旨として本書を執筆したと明かしていますが、成る程、学者が専門領域の内容について書いているものにしては驚くほど分かり易く密度が高い。そのような思いを具体的な形にするには非常な苦心があったと思います。文体にうっすらと感じられる著者の心延えに感銘を受けました。素晴らしい労作です。
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URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/苦瀬博仁
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評価は5です。

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=> カメラまかせ 成り行きまかせ
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