1977年に発行された吉村昭の小説で、
1915年(大正4年)にに北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢
(現在の苫前町三渓)でヒグマが開拓民を襲った
三毛別羆事件をモデルにした作品である。
「羆」はヒグマの事でヒグマを狩ったあとに嵐が吹き荒れると言う
言い伝えによる。
ちょっと前に熊谷達也のマタギ三部作を読み、
吉村氏の作品にも熊を扱ったものがあった事を思い出し、
読んでみたのだが、ちょうど読んでいる時に、
秋田県のスーパーに熊が出没した。
動物愛護の観点から駆除に対してクレームが出ているようだが、
「羆嵐」を読んだらそんな事は行っている場合ではないと思うだろう。
体長2.7m、体重383Kgの雄のエゾヒグマは、
2日間で7人を殺害し3人に重傷を負わせている。
警察の指揮の基に30人ほどの猟師を集めて山に入り、
熊狩りをしたが失敗に終わっている。
小説の中では一匹狼で酒癖が悪く前科のある札付きの乱暴者、
銀四郎として登場するベテランの猟師が仕留めている。
彼は熊の習性を熟知しており、熊の行動を読んで居場所を推理し、
川下から背後に回り確実に仕留める距離から心臓を撃ったが、
それでも巨大な羆は絶命せず振り返り向かってきた。
銀四郎は正面から眉間に二発目を撃ち、ようやく羆を倒した。
小説では、羆が襲った人間を餌として捕食する様子も
詳しく記しており、背筋が凍るほどの恐怖が伝わってくる。
恐らくその場にいたら腰が抜けて失禁する事はもちろん、
気絶してしまうだろう。
動物園で飼われている熊ではなく、
野生の熊がどれほど危険なのか、
身近に出没したらどうなのかを考えれば、
山に返してあげて・・・・などと言えない事が判る。
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