2019年の作品、タイトルは「写真」。 邦題のサブタイトルが、
あなたが私を見つけた日である。インドの観光地では観光客相手に、
記念撮影をしてプリントしてくれる人々がいる。まぁ日本にもいるが。
かっこよく言えばストリート・フォトグラファーらしい。
<ストーリー>
マハラシュトラ州の州都ムンバイ、ラフィ(ナワズッディーン・
シディーキ)が)インド門で観光客相手に写真を撮っている。
一方、ミローニ(サンニャ・マルホトラ)は家族と買い物した帰り道、
インド門でラフィに写真撮影はどうか?と声をかけられるが、
撮影の後、姉に呼ばれ支払いをせずに去ってしまう。
ラフィは父親の借金返済のためにムンバイに出稼ぎに来ており、
稼ぎの全部を送金する。祖母には結婚相手が見つかったと嘘をつき
ミローニ(イスラム教徒の名前ヌーリーと偽り)の写真を送る。
喜んだ祖母はヌーリーに会うために夜行列車で来る事になるが、
どこの誰かも知らないラフィは困り果てる。ある日、バスの中から
ミローニの看板を見つける。ミローニはある経営塾の首席だったため、
その塾の看板に出ていたのだった。
インドでは良くある事で、優秀な生徒を写真入りで実名で、
看板や新聞広告に紹介し自校の宣伝の為にも活用する。
ラフィは塾の前で張り込むが、ミローニはラフィを探して
インド門にいた。そしてついにバスの中で再会する。
ラフィは祖母の事を話し協力を求める。簡単な打合せの後、
二人は祖母に会いミローニは作り話を語り気に入られてしまう。
ミローニはヒンドゥー教徒なので、イスラム教徒のふりをする
するのは難しい。他の宗教の事は知らないので言えないのである。
また二人の年齢差18歳だし、観光写真家と会計士を目指す才女
と言う組み合わせも通常では考えられない。
ミローニが帰宅すると、両親が縁談を持って来ていた。ミローニは
相手に会うが断る。ラフィの祖母がいる間、毎日に様にラフィは
ミローニを迎えに来て祖母との時間をもつ。ラフィはミローニが
今はなき「カンパ・コーラ」が好きな事を知り、探し求める。
カンパ・コーラはその昔、コカ・コーラに対抗してインドで
作られていたが2000年頃、製造中止となった。デリーに
会社跡地があるので行った事がある。
ミローニはラフィの人柄を知るにつれて惹かれて行く。ある日、
祖母がラフィに話しかける、全てお見通しであると。芝居は
バレていたのだった。
ラフィはついにカンパ・コーラを自分で作っているという人を
探し当て、ミローニの為に1本だけ特別に作ってもらう。
劇場、映画の途中でミローニが席を立ちラフィが後を追う。
映画はここで終わる。
全編を通してラフィは借金を残して死んだ父親の返済をするために、
働き、姉二人を結婚(持参金などあり)させた、貧しいながらも
真面目な男として描かれていた。祖母を悲しませない為に仕方なく
嘘をつき、ミローニを巻き込んでしまった事に心を痛めている。
ミローニは若く聡明であるが、自分の置かれた立場に胡坐をかかず、
貧しい村の出身であるメイドさんやラフィを見下す事もなく、
頼まれた芝居を感情の起伏なく演じている。
もうインド映画ではイヤと言うほどに使われつくされた展開、
恋人同士の芝居から本気になるパターン・・・・。そして異教徒、
格差(女性が裕福で男性が貧乏)のある恋愛。ただ少し違うのは、
芝居を演じて心を通わせるのであるが、二人のキャラクターもあり、
熱情にうなされる所なく、決して結ばれる事はない事を、
大人として理解し距離を保っている。
「SIR(あなたの名前を呼べたなら)」に近いが、そこまで
感情は燃え上がっていない。
観ていて嫌な気持ちになる事はなく、それでいて物足らない感じも
しない。穏やかな作品だった。祖母のキャラクターも良く、
ラフィと同居の男達も良く、自殺したティワリ(何故か上位の
カースト)の話も上手くストーリーに絡まっていた。