以下は今しがた発見した石平さんのツイートで知った記事である。
@liyonyon
プーチンが喜び、バイデンが迷惑し、安倍は激怒する「岸田首相の平和主義外交」のゆくえ(現代ビジネス)
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bab266564f6dbfb2b000a8afdc58e47b550ffb2?page=3
見出し以外の文中強調は私。
自らカードを放棄した首相
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、世界の外交・安全保障観を揺るがせた。
当たり前のように享受している平和がある日突然、他国からの侵攻で破壊され、頼りにしていた援軍も現れないという現実はあまりに冷厳だ。
「明日は我が身」と危機感を強める欧州では、これまでの「国是」を転換する国も相次いでいる。
だが、ロシアや中国といった核保有国と向かい合う日本はその議論すらタブー視され、岸田文雄首相は自らカードを放棄する道を選択した。
果たして、日本は平和と安全を守り続けることはできるのか。
ロシアのプーチン大統領が2月24日の軍事侵攻後も言動をエスカレートさせている。
欧米や日本などが非難を強め、ロシアへの制裁強化に踏み切ったことに反発。「西側諸国は経済分野で非友好的手段をとり、NATO(北大西洋条約機構)は攻撃的な声明を出している」などと怒りを見せ、27日には核戦力部隊を含むロシア軍の抑止力を特別警戒態勢とするよう命令した。
「ロシアは最も強力な核保有国」と威圧するプーチン大統領が、「核カード」を手に恫喝している状況に欧米は揺れる。
「話せばわかり合える」といった綺麗ごとは有事に意味をなさず、核戦力で脅しをかけてくる相手といかに対峙するのか、核を本気で使いかねない敵国から自国をどのように守るのか、という現実に即した安全保障政策の見直しを余儀なくされているのだ。
ドイツのショルツ首相は27日、これまで抑制方針だった国防費を対ロ防衛のため大幅に引き上げる歴史的転換を表明し、独連邦軍の軍備増強を進める考えを示した。
ドイツはロシアからの天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」計画も凍結するなど見直しの動きを急ピッチで進める。
「永世中立」を国是とするスイスは、欧州連合(EU)と歩調を合わせてプーチン大統領やラブロフ外相を対象とする資産凍結などの対ロ制裁に加わると表明。
スウェーデンも紛争地域には武器を供与しないとの国是を破り、ウクライナに提供すると発表した。
アンデション首相が「これがスウェーデンの安全保障にとって最善」と言うように、いずれの国家もウクライナ危機をターニングポイントに「国是を守って、平和と国民の安全を守れなければ意味がない」と必要な転換を図っているところだろう。
安倍晋三の爆弾発言
だが、そのロシアと近い日本は安全保障政策の見直しを図るどころか、議論さえもタブー視される雰囲気にある。
安倍晋三元首相は2月27日のフジテレビ番組で「世界はどのように安全が守られているのかという現実の議論をタブー視してはいけない。日本国民の命、国をどうすれば守れるか、様々な選択肢を視野に入れて議論すべきだ」と述べ、米国の核兵器を自国で共同運用する「ニュークリア・シェアリング」(核共有)について日本も議論すべきとの考えを示した。
ドイツやベルギーなどNATOの一部で採用されている核共有は、非核保有国が米国の核兵器配備を受け入れ、その抑止力を享受する政策だ。
ただ、唯一の被爆国である日本には「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まない」という非核三原則がある。
1967年12月、当時の佐藤栄作首相が衆院予算委員会で「平和憲法、核に対する三原則の下において日本の安全はどうしたら良いのか。これが私に課せられた責任だ」と表明し、71年11月の国会決議を経て、歴代首相は三原則を「国是」として堅持することを誓ってきた。
安倍氏の発言には、自民党幹部から「非核三原則の『持ち込ませず』の例外をつくるかどうか、議論を封じ込めるべきではない」(高市早苗政調会長)、「それが国民と国家を守るのであれば、どんな議論も避けてはいけない」(福田達夫総務会長)といった声があがるものの、一部野党は「首相を曲がりなりにも務めた人物が間違っても口にすべきではない」(共産党の小池晃書記局長)などと反発。立憲民主党の泉健太代表は「なんだって議論は良い、というのは違う」と批判した。
岸田政権も否定的だ。
岸田首相は2月28日の参院予算委員会で「非核三原則の堅持という我が国の立場から考えて認められるものではない」と否定し、安倍氏の実弟である岸信夫防衛相も「政府としては政策上の方針として非核三原則を堅持していく考えに変わりはない」と述べた。
被爆地・広島出身の宰相として「核なき世界」を追求する岸田氏の立場は一貫しており、その信念は揺るがない。
ただ、国家と国民の生命を守るための「抑止力」の観点からは、首相がこのタイミングで否定的に言い切ることへの懐疑的な見方があるのも事実だ。
今回のウクライナ危機では、米国のバイデン大統領やNATOが軍事介入しないことを早い段階で表明したことが「ロシアへの抑止力がなくなって、やりたい放題を許した一因」(外務省関係者)とも指摘されている。
なぜウヤムヤにしなかったのか?
*岸田文雄の頭脳は朝日新聞を購読・精読して出来上がっている頭脳だからだろう*
バイデン大統領は「選択肢は2つ。ロシアと第三次世界大戦を起こすか、国際法違反の国に代償を払わせるかだ」とした上で、後者の対ロ制裁強化の道を選択したことを明らかにしている。
だが、「世界の警察」といわれた米国が介入してくるのか否かが分からなければ、それ自体が抑止力として働き、プーチン大統領の判断に影響した可能性は捨てきれない。「本気で核戦力を使いかねない」とみられ、核保有国としての存在感を強調するプーチン大統領とはあまりに対照的だ。
オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は2016年6月、米国テレビのインタビューで、中国の習近平国家主席に対して「日本は一夜にして核を開発できる」などと伝えたことを明らかにしている。
対北朝鮮政策で米中協力を模索する中での発言とされ、日本が検討もしていない「核開発」で核保有国の中国に揺さぶりをかけていたといえる。
厳しい局面の外交交渉では、こうした「ブラフ」も時としてあらわれているのが現実だろう。
その意味では、岸田首相が即座に安倍氏の発言を完全否定したことは「抑止力」とはなりえない。
全国紙政治部記者が語る。
「日本が核開発することは現実的ではなく、非核三原則の見直しも難しいかもしれない。ただ、岸田首相は『現時点では考えていない』『今すぐに検討するつもりはない』などと含みを持たせる答弁にとどめておけば良かった。
普段は『検討する』が口癖なのだから、抑止力の観点からは得意の曖昧戦略をとるべきだった。プーチンを喜ばすだけの、岸田首相の平和主義外交は、バイデン大統領をはじめ、欧州にも奇異に写るだろう」
非核三原則が「議論もしてはならない」という4原則になっていることを懸念する向きは少なくない。
今から12年前の2010年1月、自民党の河野太郎元外相はブログに「最初から非核三原則ありきではなく、アメリカの核を持ち込むNuclear Sharingも検討すべきだと訴えた。検討の結果、するかしないかを決めればよいわけで、最初からそれを排除して核抑止の議論を狭めるべきではないだろう」とつづっている。
政府の公式見解は核共有政策について「検討したことはない」というものだが、あらゆる事態を想定すべき国防という最重要テーマで議論そのものが「封殺」されてしまえば、バイデン氏の「ブラフ」にもなりえない。
核保有国が軍事侵攻して威嚇すれば、他の核保有国は関与しないという前例にもなった今回のウクライナ危機。
ターニングポイントと見る欧州が「国是」の転換を図る中、ロシアや中国といった核保有国と向かい合う日本はどうすべきなのか。
タブーなき、岸田首相の「聞く力」が試されている。