以下は昨日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
彼が本論文を発表した理由は現今の電力行政を巡る日本のみならず世界の愚かさの根源を指摘する爲である事は言うまでもない。
見出し以外の文中強調は私。
いい放射線
遺伝に興味を持ったハーマン・マラーは米コロンビア大のトーマス・モーガン教授の研究室に入った。
ここでは猩々蝿(しょうじょうばえ)の奇形を見つけてはそれがどう遺伝するかを研究していた。
モーガン教授はその研究で「遺伝子は染色体の上にある」ことを見つけ、ノーベル賞を貰っている。
マラーもそれを夢見て研究に励み、あるとき猩々蝿に放射線を中ててみた。
そしたら子はみな奇形だらけで、その奇形は次の世代にも遺伝した。
ある条件下では次世代がみなメスだけになることも分かった。
メスだけではその種は絶滅する。
マラーの研究は世界大恐慌の直前に発表され、世界に大きな衝撃を与えた。
ヒトも放射線で奇形児を生み、滅んでいくのか。
研究者は競ってマラーの研究を検証した。
しかし銀蝿に放射線を中てても奇形は生まれなかった。
蛙もマウスも異常は見られなかった。
だいたい放射線は危ないのか。
生命が誕生したころは崩壊前のウラン235がごろごろし、地上は放射線だらけだった。
それが危険なら生命は絶えていたはずだ。
結論を先に言うと、ヒトも生き物も高い放射線量を浴びると細胞が元気になる。
*私は、この個所を読んで、日本よりも自然放射線量の数値が高い欧米諸国の人間達の成長スピードが速いのは、そのせいではないかと思った。*
もちろん遺伝子細胞が傷つく場合もある。
奇形が生まれそうだが多くの生き物では傷もの細胞は自ら命を絶つ。
生き永らえれば奇形を生む。だから死を選ぶ。
何となし大和魂を思わせる。
これをアポトーシスと呼び、人体でもしょっちゅう細胞が自殺している。
ただ猩々蝿では傷ついた細胞が自殺せず、生き延び奇形を生む。
ごく例外的な存在だった。
当時はそこまで分からなかったが、マラーの研究はいかがわしく見え、やがて忘れ去られていった。
それから10年。
真珠湾攻撃があって米国は原爆を作る気になった。
放射線の人体への影響が気になった米政府はマラーを探し出して研究を再開させた。
しかし彼の研究は猩々蝿止まり。
広島と長崎に原爆を投下したころにはマラーは解雇されていた。
当時は米国だけが原爆を持っていた。
その威力は広島で証明された。
問題は撒き散らした放射線だ。
放射線がマラーの言うように奇形を生み、民族をも破滅する後遺症を持つとしたら、だれが米国に歯向かうだろうか。
で、米国はスウェーデンに手を回してマラーにノーベル賞を与えさせた。
それで「放射線は奇形を生む」伝説ができた。
世界は「米国に逆らうと何十万も殺されたうえ、放射線のせいで奇形児が生まれ、民族は滅んでいく」と信じ込まされた。
一方で、もはや草木も生えないと言われた被爆地で緑が芽吹き、かなり被爆した人々もまともな2世3世をなし、平均寿命を大きく超えて長命を寿いでいた。
世間の戸惑いを見た米国はマラーのデータ、つまり猩々蝿をヒトの体重に換算したもっともらしい許容景「年間1ミリシーベルト」を打ち出した。
それを英国の国際放射線防護委員会(ICRP)に追認させた。
因みに『DNAは放射線が大好き』(服部禎男)によればヒトがその500倍の放射線を浴びると細胞が活性化して「糖尿病も筋萎縮症も改善した」(山岡聖典岡山大教授)報告がある。
CTスキャンは一度に基準の10年分の10ミリシーベルトを浴びるが、ヒトの細胞は正常を保ち、アポトーシスが機能することも確認された。
菅直人は東電福島事故のとき、そんなカビの生えた米国製のインチキ数字を立ち退きの基準にした。
おまけに意味もなく放射線の恐怖を煽り、便乗立ち退き者も続出した。
東電はそれでも立ち退いた人すべてに月10万円を払い、全国の納税者も2.1%の復興税を払っている。
しかし県民は満足しなかった。
1ミリシーベルトのペテンに加え、天変地異にまで国の責任を問うたが、最高裁が蹴った。
世間がどんな目で福島県民を見ているか。
知っているかい。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
彼が本論文を発表した理由は現今の電力行政を巡る日本のみならず世界の愚かさの根源を指摘する爲である事は言うまでもない。
見出し以外の文中強調は私。
いい放射線
遺伝に興味を持ったハーマン・マラーは米コロンビア大のトーマス・モーガン教授の研究室に入った。
ここでは猩々蝿(しょうじょうばえ)の奇形を見つけてはそれがどう遺伝するかを研究していた。
モーガン教授はその研究で「遺伝子は染色体の上にある」ことを見つけ、ノーベル賞を貰っている。
マラーもそれを夢見て研究に励み、あるとき猩々蝿に放射線を中ててみた。
そしたら子はみな奇形だらけで、その奇形は次の世代にも遺伝した。
ある条件下では次世代がみなメスだけになることも分かった。
メスだけではその種は絶滅する。
マラーの研究は世界大恐慌の直前に発表され、世界に大きな衝撃を与えた。
ヒトも放射線で奇形児を生み、滅んでいくのか。
研究者は競ってマラーの研究を検証した。
しかし銀蝿に放射線を中てても奇形は生まれなかった。
蛙もマウスも異常は見られなかった。
だいたい放射線は危ないのか。
生命が誕生したころは崩壊前のウラン235がごろごろし、地上は放射線だらけだった。
それが危険なら生命は絶えていたはずだ。
結論を先に言うと、ヒトも生き物も高い放射線量を浴びると細胞が元気になる。
*私は、この個所を読んで、日本よりも自然放射線量の数値が高い欧米諸国の人間達の成長スピードが速いのは、そのせいではないかと思った。*
もちろん遺伝子細胞が傷つく場合もある。
奇形が生まれそうだが多くの生き物では傷もの細胞は自ら命を絶つ。
生き永らえれば奇形を生む。だから死を選ぶ。
何となし大和魂を思わせる。
これをアポトーシスと呼び、人体でもしょっちゅう細胞が自殺している。
ただ猩々蝿では傷ついた細胞が自殺せず、生き延び奇形を生む。
ごく例外的な存在だった。
当時はそこまで分からなかったが、マラーの研究はいかがわしく見え、やがて忘れ去られていった。
それから10年。
真珠湾攻撃があって米国は原爆を作る気になった。
放射線の人体への影響が気になった米政府はマラーを探し出して研究を再開させた。
しかし彼の研究は猩々蝿止まり。
広島と長崎に原爆を投下したころにはマラーは解雇されていた。
当時は米国だけが原爆を持っていた。
その威力は広島で証明された。
問題は撒き散らした放射線だ。
放射線がマラーの言うように奇形を生み、民族をも破滅する後遺症を持つとしたら、だれが米国に歯向かうだろうか。
で、米国はスウェーデンに手を回してマラーにノーベル賞を与えさせた。
それで「放射線は奇形を生む」伝説ができた。
世界は「米国に逆らうと何十万も殺されたうえ、放射線のせいで奇形児が生まれ、民族は滅んでいく」と信じ込まされた。
一方で、もはや草木も生えないと言われた被爆地で緑が芽吹き、かなり被爆した人々もまともな2世3世をなし、平均寿命を大きく超えて長命を寿いでいた。
世間の戸惑いを見た米国はマラーのデータ、つまり猩々蝿をヒトの体重に換算したもっともらしい許容景「年間1ミリシーベルト」を打ち出した。
それを英国の国際放射線防護委員会(ICRP)に追認させた。
因みに『DNAは放射線が大好き』(服部禎男)によればヒトがその500倍の放射線を浴びると細胞が活性化して「糖尿病も筋萎縮症も改善した」(山岡聖典岡山大教授)報告がある。
CTスキャンは一度に基準の10年分の10ミリシーベルトを浴びるが、ヒトの細胞は正常を保ち、アポトーシスが機能することも確認された。
菅直人は東電福島事故のとき、そんなカビの生えた米国製のインチキ数字を立ち退きの基準にした。
おまけに意味もなく放射線の恐怖を煽り、便乗立ち退き者も続出した。
東電はそれでも立ち退いた人すべてに月10万円を払い、全国の納税者も2.1%の復興税を払っている。
しかし県民は満足しなかった。
1ミリシーベルトのペテンに加え、天変地異にまで国の責任を問うたが、最高裁が蹴った。
世間がどんな目で福島県民を見ているか。
知っているかい。