
何年か前の今頃、梅雨時のシトシト雨の降る夜、日付が変わりそうなかなり遅い
時間に、行きつけのバー「グロット」へ行った事がありました。
バーテンの大木さんが黙って、私の愛聴盤のこのCDをかけてくれました。
都会の、深夜のバー(それもこんな雨降りの夜)っていうのは、ホントに
雰囲気が良くて、遠い外国の異空間みたいです。
そんな夜更けに、地下のバーで一人で飲むものといったら、シングルモルト・ウィスキーのロックしかありません。
居心地の良い地下のバーだから、外の雨の降る音なんか聞こえるはずがないんだけど、手に持ったグラスの中の氷が
ウィスキーに出会って溶け出す時の「ピシッ」という音なんかが、何故か雨の音に聞こえたりして・・・。
いいんだなあ、これが。
もちろんこの時のお耳のお供は、デューク・ジョーダンの「Flight To Denmark」
というCDに決まってます。
雨の夜に雨にちなんだ曲を静かに聴く・・・これって最高にいいんですよ。
デューク・ジョーダンは映画「危険な関係」のテーマ曲がかなりヒットした後、
パタリと名前も出なくなり、かなり不遇な時を過ごしたらしい(ジャズで生活も
難しくなってNYのタクシー運転手などもやったらしい)。
その後デンマークへ渡り、10年を彼の地で過ごし、このCDは彼が再び米国へ
戻ったその復帰第一作目なのだそうです。
長い下積みの生活や異郷の地での毎日など、彼がどう感じたのかは知る由もない。
でも言えることは、「このCDのどの曲も素晴らしい!」、この事です。
枯淡の境地と言おうか、肩に張った力など全く感じさせないのに、聴く人の心に
肉薄してくる、あの澄んだピアノの音・・・。
雨の日の夜、しみじみと一人で聴きたい曲です。
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