
(2009.11.09 日本橋三井タワー・「バッハに浸る夜」の開演5秒前)
この東京という大都会では殆ど毎日のように都内のどこかで無料の音楽コンサートが開かれています。私はかねてより「無料コンサート」に惹かれ、実際、よく足を運びます。その情報は最近では、
こちらを参考にすることが多いです。
「無料コンサート」の最大の魅力はもちろん無料で音楽を楽しめる事にありますがそれだけではありません。 むしろ大きなコンサートホールでの有料コンサートでは得られない魅力が沢山あります。
月2回(月曜日の夜6時30分開演)の
日本橋三井タワーアトリウムコンサートは
そんな「無料コンサート」の魅力を集約したような素晴らしいコンサートです。
①抜群の音響効果
4年前に竣工のこのビルは高層階にあのラグジュアリーホテルの「マンダリンオリエンタル東京」があり、高級感に溢れたビルです。
加えてコンサート会場の一階アトリウムはパブリックスペースなのに静寂そのもので、且つ5階まで吹き抜けのため、素晴らしい音楽演奏の環境です。
(私の知る限り、ベストオブベストの会場だと思います)
②魅力的な企画
いつもながら、コンサート内容のその企画力には脱帽です。
一般的には、有名曲を原曲通りに演奏するコンサートスタイルが殆どですが(それも無論ありがたいですが)、もう一ひねり加えた企画の斬新さがこのコンサートには見られます。
今回の「バッハに浸る夜」も、バッハの無伴奏チェロ組曲を本来のチェロの他にファゴット、ホルン、トロンボーン、チューバ、マリンバで其々の演奏を試みる、という斬新な企画でした。
それに加え、通常ですと「無言で登場し無言で舞台から去る」のが普通のコンサートですが、このコンサートでは演奏者が曲目や楽器のことを自分の言葉で聴衆に語りかける、というのが凄く良いです。
映画「モンテーニュ通りのカフェ」で登場する、あの悩めるピアニスト(自分と聴衆との距離について問題提起する、あのシーンです)の事を思い出させます。
③演奏者と聴衆との距離の近さ
僅か3~4mの距離を隔てて、演奏者が演奏中に見せる指使いや顔の表情、息づかいを身近に感じながら音楽を聴けるのは何という幸せでありましょう。
しかしそうした物理的な近さもさることながら、司会役の東京フィル主席チェリスト・金木氏によるユーモアを交えた曲目の紹介や進行、演奏者が自ら語る短いスピーチなどは私達との心理的な距離をぐっと近いものにしてくれます。
このような「会場全体を包む暖かさ・一体感」というものは大きなコンサートホールでの演奏会ではなかなか得られないものでしょう。
これからは、コンサートの終わった後で、「音楽を聴いた」のではなく、「音楽に触れた」と感じられる今回のようなコンサートの有り方の方がより重要な意味を持つようになるかもしれない(その方が望ましい)と考えるのであります。
④極めて高い演奏水準
其々の楽器のプロの演奏者ばかりが出演し演奏してくれます。この点でも他の無料コンサートとは一線を画しております(しかし私は音楽を目指す若い人の演奏を聴くのも大好きで、それが無料コンサートに行く目的の一つでもあります)。
「日本橋三井タワー・アトリウムコンサートは夕方6時30分開演ですが、座席確保のために一旦、5時15分頃に並ぶ必要があります。
5時30分になって順番待ちの列が座席に誘導され席を確保したらたら開演までの1時間をこのビル内の魅力的な場所で過ごしましょう。
私のお薦めは2階の千疋屋パーラーの奥のワインバー・「De Meter」で軽くグラスワインかコーヒー、または同じく2階の「ワイヤードカフェ ニュース」でビールを飲みながら備え付けのPCでインターネットを見たり・・(ハッピーアワーで夕方はビールが半額!)。
春先から夏にかけてはコンサート開演を待ちながらマンダリンオリエンタルのラウンジで夕焼けを肴に軽く一杯、もいいかもしれません。