
(2012.01.29 静岡県静岡市清水区折戸)
故郷を訪れた折、無性に懐かしい海を見たくなって、法事の席をそっと抜け出し、海へ急ぎました。
この海岸のことを、50年前も今でも、土地の人は海・海岸と言わず、「ハマ」と言っています。
このハマでは実によく遊びました。
波打ち際から急に深くなっており、波も荒く、危険なために、かなり以前から遊泳禁止になっています。
このハマで私は何度溺れ死にかかったことか・・。
波打ち際の強い巻き波にゴロゴロと体を揉まれ意識を失いかけたり、引き波に足をすくわれ背の立たない深み
までさらわれたり・・。
それでも1日過ぎると、溺れ死にかけた恐怖よりも、海で友達と遊ぶ楽しさが勝って、自然に
足が海に向かってしまう毎日でした。
それにあの頃、親も決して「危ないからハマで泳ぐのはやめろ」とは言いませんでした。不思議なくらいに。
冬や春には、このハマで釣りをしたり、広大な砂浜で野球をしたり、凧揚げをしたり。
時にはよその畑のサツマイモを勝手に収穫して、ハマでヤキイモにして食べたり(もう時効だよね)。
あれから50年、いや60年近くか・・。
ハマはうんと変わってしまいました・・・悪い意味で。
かつての美しい白砂青松の海岸線は、テトラポッドだらけ。
ハマへ下りる砂の丘はコンクリートの護岸と化し、広大な砂浜は波で削り取られ海に浸食され、昔日の面影は
ありません。その変貌は経済成長の結果のその代償とも言えるものであることを私は知っています。
少年時代の私を育んでくれ、甘美な思い出に直結する懐かしいハマ。
そのハマが海に沈み、波打ち際はテトラポッドだらけになり、変貌してしまった海岸線を見て、
楽天的な私もかなり暗然とした気持ちになりました。
俺のハマを返してくれぇー。