アヴェンジャー〈上〉 (角川文庫) | |
フレデリック フォーサイス | |
角川書店 |
フレデリック・フォーサイスの国際サスペンス小説・「アヴェンジャー」は、最近読んだ沢山の本の中で
もっとも面白かった一冊でした。
あまりの面白さに途中で止められず、文字通りメシを食う時間も惜しんで上下2冊を読了しました。
コソボ・クロアチア紛争の現実を縦軸に、ヴェトナム戦争の過去を横軸に、壮大なスケールで物語が展開
しますが、「一瞬たりとも活字から目が離せない」という状態になるのは、この小説に現実から遊離した部分
がまったくなく、これが小説だとは思えない、リアリティに満ちた語り口によるところが大だからでしょう。
「現実に進行中の国際紛争や歴史的な事実」に立脚し、ストーリーを大胆に展開してゆくフォーサイスの
手法は、これまでの「ジャッカルの日」、「オデッサ・ファイル」、「戦争の犬たち」など、どの著作にも共通
しています。
しかし、この「アヴェンジャー」はその国際サスペンス小説としての完成度の点で、ダントツだと思われます。
因みに、太平洋戦争で、日本軍は、米軍が戦線に投入した新鋭の雷撃機に悩まされましたが、その新鋭機が
「アヴェンジャー(復讐者)」というネーミングでした。真珠湾以降、緒戦でゼロ戦を主力とする日本軍に
押されっ放しだった米軍が、新鋭機にアヴェンジャーと名づけたのもうなづける気がします。
ま、この年齢(とし)になっても、面白くて途中で止められない程の本が次々と出てきたり、
心を揺さぶられるような音楽との出会いが頻繁にあるというのは幸せなことかもしれません。