「恋のうぐいす」。
何というユニークで、しかも美しい響きの曲名でしょうか。
この標題を見ただけで「一体、300年も前のルイ王朝時代に、フランソワ・クープラン氏はどんな想いでこの曲を創り、この標題を与えたのだろうか?」と、興味は尽きません。
クラブサン(チェンバロ)曲集の他の曲と同じく、この曲の標題についてもクープラン氏自身の説明は一切残存しておらず、私達は標題と曲そのものの美しさに浸りながらも、あれこれと連想を巡らすばかりです。
でも謎だからこそ、それはそれで良いのでしょうなあ・・・。
この曲は非常なスローテンポですが、優美かつ典雅な趣(おもむき)がしますし、
中世のフランス宮廷を彷彿とさせます。
どの部分をとっても、曲想そのものがまるっきり「浮世離れ」し、すぐには心に
落とし込めないかもしれません。
しかし、その超然とした曲の美しさには、それだけで胸を打たれます・・・少なくとも私の場合は。
(もう少し後の時代になると、音楽はより饒舌で時には感情過多にもなりますが、
この時代の音楽は未だ素朴さに溢れているように思えます)。
ところで、なぜこの曲が「4月に聴く曲」なのかって?
それは、この曲を聞くとまさに萌え出たばかりの新緑の林と、そこで飛び回る
うぐいすを連想するから。
また、この曲のみずみずしさ、純粋な美しさといったものこそ4月の今聴くのに
ふさわしいと思えるのです。
この曲を作ったフランソワ・クープランこそ、あの天国的な美しさの名曲「ルソン・ド・テネブル」を作曲した人です。
こちらもぜひお薦めしたいと思います。
(尤も、「ルソン・ド・・・」の方は、秋または冬に聴くのがよりふさわしい、と
私には思えますが・・・・)。
恋の夜うぐいす ― ラモー、クープランヴェイロン=ラクロワ(ロベール), ラモーワーナーミュージック・ジャパンこのアイテムの詳細を見る |