すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

岡田尊司「人格障害の時代」

2005-05-07 09:00:34 | 書評
全部ゲーム脳が悪いんだよ


最近ネットをにぎわしているあの人ですが、あぁいうのって、「人格障害」に分類されるんでしょうなぁ。
どういう経緯で、あそこまで強烈なキャラが成り立ってしまったのやら。


で、「人格障害の時代」。

ベックの理論では、人格障害を生き残りをかけた適応戦略の産物だと考える。認知療法では、心的な過程を情報処理として捉えるが、環境からの人力情報を、選択・統合し、行動として出力する情報処理の仕方には特有のパタンがあり、それを「スキーマ」と呼ぶ。人格障害の人は、偏ったスキーマを身につけている。それは、過程で、ゆがんだ環境で生き残るために身につけたプログラムであり、かつては適応的だったが、今は適応上不利な「信念」や「方略」(行動戦略)として現れる。
(中略)
 自己愛の傷つきを持っていようが、共感的な環境に恵まれなかろうが、どんな不利な状況の中でも、子供は生き延びねばならない。過酷な幼い日々の中で身につけてしまった、偏った生き残り戦略が、後年、生きづらさとなって、もう一度本人や周囲を苦しめることになるのである。
岡田尊司「人格障害の時代」42~43頁 平凡社新書

ようは、人格障害は、トラウマで形成されてしまう。そして、そういう過程で固着してしまった性格は、なかなか治りようがない、ということです。

まとめてしまうと、至極まっとうな話です。


というか、本書自体が、全部、至極まっとうな話ばかり。
でも、どこか理屈が怪しい。

現代の厳しい競争社会では、人間の価値が全て金銭で還元されてしまい、その思想が子供にまで影響し、日常で接するテレビゲームが世界を二元化してしまことに慣れさせ、そのため全てを安易に快楽で解決するという環境が出来上がり、所謂「きれやすい」性格となってしまう。

そんなマスコミで騒がれるような事態を全部ゆるーくごった煮にしてしまい、全て「人格障害」と結びつけちゃってます。
だから解決策も、精神科医という専門職とは関係なく、「躾が大事だ」という、まぁ、至極まっとうな常識的な説教オチになってしまっております。

なんつーか、………その危機感に共感できないわけではないんですが…………。もそっと、客観的な資料が必要かなぁ~、と言った感じです。


ようは、ちょっと俗っぽいです。
その代わりと言ってはなんですが、本自体は読み易いです。

人格障害に、興味を持ち始めた方には、悪くないのでは?


人格障害の時代

平凡社

このアイテムの詳細を見る

最新の画像もっと見る