カンナ燃ゆ 水煙290号(2007年8月) 2008年10月30日 | Weblog 地に余熱空より秋のきたりけり <台湾・行天宮> 立秋や祈りの人の中にいる 静けさを深呼吸して夏未明 釣竿を肩に少年晩夏光 積乱雲見上げて母と墓参り カンナ燃ゆ三十八度の日中に 法師蝉去りゆくものを追いて鳴く
夕涼し 水煙289号(2007年7月) 2008年10月30日 | Weblog 青空が恋し李の種を吐く 夕涼しアイルランドの歌を聴く 夏草の中に埋もれて夏草刈る 曇天の風をとらえてのうぜん花 七月の寝椅子に読みぬ文庫本 向日葵のむこうを下校の少女たち 夏休み始まる弾みしリコーダー
浴衣の少女 水煙288号(2007年6月) 2008年10月30日 | Weblog 半袖の手首に涼しブレスレット 子ら駆ける植田に影を映しつつ 入梅の真青な空を見上げたる 苗色の播州平野梅雨に入る 頂の風遠くよりほととぎす とりどりの浴衣の少女踏切に ゆらゆらと身をあずけおりハンモック
山法師 水煙287号(2007年8月) 2008年10月30日 | Weblog 夏近き木陰の風の芳しき 緑いま風に湧き立つ真昼なり 田は水を受けて輝き夏浅し 桐の花かなたに雲の湧きいずる 山法師空より星を受けて咲く 蝶の道われも歩みて夏真昼 ものの影みな涼やかに朝の眼に
花楓 水煙286号(2007年4月) 2008年10月30日 | Weblog 清明や竹の触れ合う音のする 静かさや舞う花びらの絶え間なく 整然と春の水待つ田のありて 四方より囀り上がる頂へ もう誰も見上げぬ桜しべ降らす その先に青空のあり花楓
野遊び 水煙285号(2007年3月) 2008年10月30日 | Weblog 野遊びの子らとりどりのお弁当 頂に立てば一面畦青む 新刊の図書を抱きて春風に 自転車を立ち漕ぎ少女の春休み ランニング芽立ちの空気吸い込んで 鶯や未来予測の本を読む 花映す水面をくぐりかいつぶり
二月の針葉樹 水煙284号(2007年2月) 2008年10月30日 | Weblog 厳かに立ちて二月の針葉樹 二月早やいらかの波を光らせる 早春の山路どこかで水の音 春早し鳥居の彼方に田の光る 紅梅にごうごうと吹く風のあり 春耕の彼方に大き観覧車 梅林に光と香りと静けさと
寒晴 水煙283号(2007年1月) 2008年10月30日 | Weblog きしきしと初雪踏んで境内を そこはかとなく淋しさも年変わる 正月の街のむこうに瀬戸の海 六甲に霧たち昇る寒の入り 大枯野雲の広さをうつしけり 寒晴の予感の中へシャツを干す もくれんの冬芽を高く青空へ
寒林 水煙282号(2006年12月) 2008年10月29日 | Weblog オートバイ楽しジャケット夕陽色 大雪や少女の輪唱聴いている 友来るポインセチアの赤を抱き <春日若宮おん祭り> 流鏑馬の少年凛と冬の朝 <興福寺> 冬の陽へ阿修羅の瞳まっすぐに <東大寺戒壇院> 静かなる気迫真冬の四天王 午後三時陽は寒林に輝きぬ
銀杏並木 水煙281号(2006年11月) 2008年10月29日 | Weblog 脱ぎ捨てし輝き銀杏並木冬 冬紅葉うえに真青な空ありて えのころも薄も荻も枯れし野に 冬耕の田に撒かれいし菜屑かな 晴れ渡る空へすらりと後の月 菊並ぶぬくき冬日を浴びながら 初しぐれ熱き海鮮ピザを食ぶ