ビリーブ(映画)
予告編の画面を撮影。
Primevideo配信の映画,『ビリ-ブ 未来への大逆転(原題:On the Basis of Sex)』を見た。2018年に公開された実話に基づく,典型的なAmerican Justiceを内容とするハリウッド映画である。
主人公のルース・ベイダー・ギンスバーグは,1956年,9人の女子学生の一人として,ハーバード大学のロースクールに入学し,癌を発病した夫の介護のためにコロンビア大学に転じ,首席で卒業する。しかし,弁護士事務所への就職は,女性,ユダヤ系,子持ちを理由にすべて拒否され,ラトガース大学に黒人教授の後任として職を得る。大学では法律と性差別の講義を受け持つ。
ルースは,ある独身男性が母親の介護に要した費用を免税の対象にと申請し,免税措置は独身女性に限るとして拒否されたことで訴訟を起こし,敗訴した事件に興味を持つ。そして,これは,親の介護を女性に押し付けようとする性差別であると考え,当事者の男性を説得して,弁護士である夫の協力を得て,控訴審に提訴する。
人権問題を扱う事務所や弁護士は,敗訴の影響を恐れて支援を断るが,彼女の控訴趣意書に動かされて協力するようになる。
法廷で弁護を行うのはルースにとって初めてであり,国側の弁護士や判事からの質問にうまく答えられず劣勢を強いられるが,最後に開き直って,法は正義を実現するものであり,正義に反する女性差別の条項は一つずつ正していくのが法律家の役割であると,切々と判事の心に訴え,勝訴を勝ち取る。
この裁判は,性差別が合衆国憲法に違反すると認定した最初のものであったという。ルースはその後も女性差別問題で数々の勝訴をおさめ,1993年に最高裁判所の判事に任命される。
映画は淡々と物語を進めつつ,それなりの感動を与えてくれる。主演のフェリシター・ジョーンズは好演である。
わたしがこの映画を観て驚いたのは,1970年代のアメリカに,女性差別がそれほど根強く残っていたのかということである。記憶の範囲でいえば,日本では女性差別は今でも続いているとはいえ,それが憲法に言う基本的人権に反するものであることは,戦後憲法下では当然と考えられていたと思う。
現在のアメリカでは,女性の残業は認められ,消防士や海兵隊員にも女性は進出している。わたしがこの裁判から生きてきた50年間に,それだけの変化があったということなのだ。小さな変化でも,50年間積み重なると大きくなる。良いことも,悪いことも。
成人式
横浜市の成人式で,男性が派手に着飾り,群れをなして大騒ぎしている様子が報じられている。わたしは20歳になった年,目黒区長から成人式の招待状をいただいたが,同じ寮にいた学生は話題にもしなかった。息子たちの世代にも,こんなバカ騒ぎはなかったように思う。いつごろからこうなったのだろう。ちょっと切ない気がする。