未来オーケストラ
テレビ朝日の『題名のない音楽会』60周年企画、『山田和樹が育む未来オーケストラ』が4回にわたって放送された。
オーディションを経て選ばれた18歳以下104名からなるオーケストラを「未来オーケストラ」と名付け、指揮者の山田和樹さんが本番に向けて育て上げる企画である。
第一回は山田さんによるオーディションの審査風景が放送された。上は18歳から下は7歳まで、経験の長さも数カ月から十数年まで、さまざまな応募者がいたが、いずれもその技術の高さに驚かされた。山田さんは、結局、応募者全員を合格とした。
第二回と三回は全体練習を2回に分けて放送した。指揮者と演奏者とのやり取りの中で、オーケストラの成長して行く様子がはっきりと示され、大変興味深かった。
山田さんが最初に心がけたのは、子供たちとのコミュニケーション。譜面台に子供たちの呼び名を書いた紙がつるされていて、山田さんはその名前で呼びかけ話しかける。子供たちがそれに反応し、打ち解けて行く雰囲気が画面から伝わってきた。
練習中、ソロやパートの演奏に拍手をするように子供たちに指導して、参加者の一体感を醸成する。指揮者は心理学者でもあると感心した。
山田さんは譜面を見ないで、間違えてもいいから指揮者を見るように注意する。すると、音の伸びが違ってくるのがわかる。
演奏方法でも、例えばチェロの弓をアップ・ダウンで動かすのでなく、ダウン・ダウンで弾かせたり、ホルンを持つ肘をあげさせたりして、意外性の中で音の違いを子供たちに理解させた。
参加した子供たちは、高い技術を身に着けているのだから、練習に耐える素直な性格で、さらにその楽器が好きなのであろう。スポンジが水を吸うように山田さんのアドバイスを聞き、吸収していた。
練習の過程で、この番組の司会者の石丸幹二さんが、山田さんが出す指示の意味とその効果について解説してくれ、おかげでよく理解できた。理解するというのは楽しいことだ。
山田さんは、子供たちに、「自分の音を出せ」と何回も注意する。そしてその音がまとまってくるのがオーケストラだという。多様性の統一。なるほどとうならされた。
子どもたちの楽しそうな笑顔、どん欲に指揮者の言葉を聞こうとする真剣な瞳、練習で演奏される曲のフレーズ、それらを見聞きするだけで、十分楽しめる放送だった。
第四回は本番の演奏を放送した。
会場は東京藝術大学の奏楽堂。満員の聴衆である。
曲はベートーベンからガーシュインまで、13の交響曲を結んだ『クラシックのおもちゃ箱』と題するオムニバス。ガーシュインの後にラベルが来るというように、曲想の違いの連続を、子供たちは鮮やかに切り替えながら演奏していた。
このオーケストラの演奏はこれっきりである。まさに一期一会。指揮者も子供たちもそれを意識した熱気が伝わってきた。フィナーレで腕を振り上げる子供たちの表情は実に晴れやかだった。
指揮者も子供たちもこれで終わるのは惜しいと、予定外のアンコール演奏をした。曲はベートーベン第九の第四楽章。聴衆も一緒に、指揮者にうながされて歌った。わたしもそれに和して歌った。そして終わったときは、テレビに向かって思わず拍手していた。
山田和樹さん、そして子供たち、ありがとう。
山田さんが言っていた。「日本の未来は明るい」
STOP WAR!