貝 の 火
昨日ビデオで観た『クラシックTV』で,「ニーベルンゲンの指環」が話題となった。それを聞いていて,なぜか宮沢賢治の『貝の火』を連想していた。
全部演奏するのに15時間を要するという,この壮大なワグナーの楽劇と,文庫本で29ページの賢治の童話を比較するのは変な話だが,恐らく世界を支配する力を与えるという黄金の指環と貝の火の宝石に通じるものを感じたのだと思う。
『貝の火』は賢治初期の作品だが,発表されたのは彼の死後である。
子兎のホモイは,散歩の途中でひばりの雛が川におぼれているのを見て,川に飛び込んで,命がけで助ける。
その後高熱を発して何日か寝込み,全快して外に出ると,助けたひばりの親子が待ち構えていて,王様からの贈り物だと言って,内部で火が燃えている見事な宝珠をホモイに渡す。
家に帰って両親に見せると,それは「貝の火」といって,王に選ばれたものに渡されるという。そして,生涯それを持ち続けることができたのは鳥で二人,魚で一人しかおらず,大事にするようにいわれる。
ホモイが貝の火を手に入れたという話は広まっているらしく,動物たちはホモイに対して恭しい態度を示し,はじめは戸惑ったホモイはだんだんと慢心を覚え,母親に言いつけられた用事を,ほかの動物にやらせるようになる。
いつもホモイをいじめていた狐も,臣下の礼をとるようになるが,ずる賢く立ち回り,ホモイをおだててもぐらの一家をいじめたり,盗品のあぶらげを食べさせたりする。
それを知った父親は,その都度ホモイを叱り,貝の火が曇ってくると警告する。しかし,貝の火は前にも増して美しくゆらめいている。
ある日,狐は動物園作りにホモイを誘い,ガラス箱に閉じ込めた獲物をホモイに見せる。捕らえられた鳥たちは,口々にホモイに助けを求めるが,狐に脅されたホモイは家に逃げ帰る。
貝の火を見ると,小さな曇りが見える。翌朝それは更に大きくなっていて,父親に問い詰められたホモイは,ことのいきさつを白状する。
父親はホモイとともに狐のところに行き,狐を追い払い,鳥たちを解放する。鳥たちはお礼を言い,貝の火がどうなっているかを問う。父親は貝の火を曇らせてしまったことを詫び,皆に見せるが,それはもう灰色の石になっている。
その時,突然石は粉々に砕け,再び合体して貝の火になり,どこかへ飛んで行ってしまう。
気がつくと,石のかけらが目に入って,ホモイは失明している。
以上がこの童話のあらすじである。この童話から何か教訓だけを得ようとするのは,わたしには不満である。賢治は,父親の言葉として,「泣くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は,一番さひはひなのだ。」と,わが子を慰め,励ましている。
賢治は,この童話を通して,人の業あるいは性を表現しようとしているのではないだろうか。そして,それはどこかで,「雨ニモ負ケズ」の「サウイフモノニワタシハナリタイ」に通じるものがあるような気がする。(ちくま文庫『宮沢賢治全集5』より引用)
役所広司さん
カンヌ国際映画祭で役所広司さんが主演男優賞を受賞した。嬉しいニュースだ。
最近はラーメンのCMでテレビによく登場なさるが,国際的にご活躍だったとはめでたい。
彼の演技で印象に残っているのは,何と言っても『Shal we ダンス?』の杉山正平役。草刈民代を相手役として,実直なサラリーマンがふと目覚めて,社交ダンスにのめり込んでいく演技は抜群だった。
ハリウッドでリメイクされた映画も見たが,リチャード・ギアを役所広司に重ねると,どうも見苦しくて,途中で止めてしまった。
千代田区役所に務めていたことから,仲代達矢がこの芸名をつけたとか。そんな話も,彼にはぴったりくる。
役所さん,おめでとうございます。
ドクダミ
ドクダミ属ドクダミの一属一種。
地下茎で繁殖し,旺盛な生命力を示す雑草だが,人からはあまり好かれない。
わたしはこの植物の匂いが何故か好きである。
STOP WAR!