氷
何かがきっかけで,ふと昔のことを思い出すことがある。
今日,冷蔵庫から氷を取り出しているときに,30年以上前のことを思い出した。
外国旅行をすると,水に気をつけろとよく言われる。わたしも,フィンガーボールの水で痛い目にあった記憶がある。
よくある失敗は氷に油断することである。飲み水に気をつけても,氷を口に入れて用心を台無しにしてしまう。
パラグアイにJICAの仕事で行っていた時のことだ。わたしより1年近く後から赴任された方が到着して挨拶にお出でになった。もうそのころは,わたしは当地の水に慣れていたが,その方には用心して湯冷ましの水を差し上げた。その時親切のつもりで,水道水で作った氷を冷蔵庫から出してコップに入れてしまった。
お気の毒に,その方はその日から3日間ほど,強烈な腹痛と下痢に見舞われた。今でも思い出すたびに,申し訳ない気持ちになる。
もう一つの思いでは,仕事でインドネシアに行った時のことだ。
休日にボゴール植物園を散歩していると,二人連れの女学生に声をかけられた。自分たちは英語を勉強しているので,一緒に散歩して話をしてくれないかという。わたしは日本人で,その上あまり英語が上手とは言えないからと断ろうとしたが,構わないし,むしろその方がいいといわれて応じることにした。
2時間近く話をしながら楽しく散歩していたら,昼近くなった。そこで,彼女たちに,「君たちがよく行くレストランに連れて行ってくれないか。昼飯をごちそうしたい。」と申し出て,観光客は入らないようなたたずまいの食堂に案内された。
喉が渇いていたので,冷たいビールをと注文したところ,ぬるま湯のような瓶ビールにそえて,氷を満たしたグラスを出された。
ここで飲むのを断ったら彼女らを傷つけることになると思い,いかにも美味そうに(実際美味かった)ビールを平らげた。
天はわたしの思いやりを愛でてくれたのか,お腹のトラブルは全く起こらなかった。
STOP WAR!