はかせ社労士 ぼちぼちお仕事中!

社会保険や働き方にまつわる「よもやま話」をご紹介します。
(扱う法律の内容は概要です)

もはや戦後ではない?(脱退手当金)

2009-12-24 | よもやまばなし社会保険
 勤務先の大学の4年生は「社会福祉士」の受験間近。
直前期だけに、質問の内容もケッコウ奥深い。

 が、得点の上積みは「重箱の隅」より“キホン”と“法改正”、
重箱の隅は実務で思い出せばいいんです、
なんて社労士に一発合格できなかったワガ身を振り返ることなくアドバイス。

 「徴用から60年余 元朝鮮挺身隊7人 年金手当金、わずか99円
(東京朝日(新潟)2009年12月23日35面)

 それでも気になる“重箱の隅”。
記事は厚生年金の「脱退手当金」に関するもの。
ソコソコ出題があり、マスマス気になったトコロ(結局受験時には出題ナシ)。

 記事の金額に間違いはありません(はず)。
ホウリツどおり計算すると、こういうことになってしまうんです。
年金は原則、保険料を払ったときの金額を
もらう時の価値に置き換えて支給します(マクロ経済スライド)。
 ところが、この「脱退手当金」と「脱退一時金」(帰国する外国人向け)は
払ったときの価値のまま

 この「脱退手当金」(現在は廃止)は別の意味でも問題が。
過去にもらっていると、この分は年金額に反映されないのです!
(入っていた期間は基礎年金の期間に算入=カラ期間)。
ムカシの若い女性の場合、“寿退社”でこれをもらっていたことも。
すると厚生年金がもらえないことも!!第二の「消えた年金」とも。

 ところで今は厚生年金となった国鉄・電電・専売の旧三公社
(←これを知ってるヒトもケッコウなトシ?)
の共済年金の「退職一時金」(厚生年金の脱退手当金相当)をもらったヒトは、
これを返して厚生年金をもらうことになってます。ただし返す際は利子つき
返す」ケースでは利子つきなのに、記事のような「もらう」ケースではなぜ?

 年金をもらう手続きの用紙(裁定請求書)をよく見ると、
恩給」やら「八幡共済」やら「旧外地」やら「旧陸海軍」やら「沖縄」といった言葉が。
年金は戦費調達のために始まったとも言われてます。

 戦後六十余年、“年金の世界”でも、戦後は終わっていません。
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保険証の重み(健康保険の広域化)

2009-12-20 | よもやまばなし社会保険
続き

 勤め人じゃないヒトが入る健康保険、
国民健康保険ではまずは都道府県単位での「広域化」が考えられています。

国保広域化法案提出へ」(東京朝日(新潟)2009年12月5日7面)

 クニは多くの保険者を広域化したがってきましたが、
(→平成19年度版『厚生労働白書』66頁
まずはおサイフが逼迫(ひっぱく)してる市町村国保から、ということでしょう。
後期高齢者医療制度で「広域連合」というかたちで
すでに都道府県単位でまとめられています)

 今回行ってきた京都では、先をにらんで検討が進められているもよう。

国保一元化3パターンを提示 府研究会中間報告案
(大阪朝日(京都)2009年12月12日35面)
※雑誌『週刊社会保障』No.2559,36-39頁にも詳しい記事アリ

 記事によると、都道府県での一元化を前提にメリットデメリットを検討。
保険料が市町村別のままだと効果が薄いし、
同じにするとこれまでの市町村別の取り組みが消えてしまう、という内容。

 同じことが全国規模の一元化でもいえるわけですが、
年金と違っていつでもだれでも必要な健康保険、
一生涯に差をつけてきた中国を眺めながら、
さまざまな種類の保険証のある日本では、
人生の重み”を、どうとらえることになるのでしょうか?
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保険証の重み(健康保険の一元化)

2009-12-19 | よもやまばなし社会保険
 突然ですが、京都へいってきました。といっても観光ではなく、
(京都暮らしが長かったのでいまさら観光でもないのですが)
「京」の名の由来、中国に関連する研究会があったから。

 関心があったのは今の中国の
農村部都市部の健康保険制度の違い、その今後について。

 中国にも「戸籍」があるのですが、日本のそれとは大違い。
農村戸籍と都市戸籍の2種類があり、
生まれたときにどっちが一生涯が決まってしまうほど。
社会保障などで都市戸籍のヒトのほうが断然優遇されてます。
(→くわしくはスズキの論文などで)

 つい最近まで農村戸籍のヒトには、健康保険さえなかったんです!
最近ようやくできたのですが、中身は依然大きな
で、研究会ではどうやったら差が埋まるのか?
さらに「一元化」はありうるのか?
といった議論になり、大変興味深かったでした。

 「一元化」といえば日本でも。
日本の健康保険もいろいろなトコロ(保険者)が保険してます。
(「保険するトコロ」参照)
そしてそれぞれがイロイロな意味でアップアップです。

 今となっては悪名高き「後期高齢者医療制度」は一元化の一例。
(都道府県単位の「広域連合」で)
ただ、これまでの保険者がなくなったわけではないので、
制度を支える立場になった保険者からはブーイングも。
( 「健保連」意見広告(東京朝日(新潟)2009年12月17日12面など))

 それどころか、保険者のひとつ「協会けんぽ」の台所がとても苦しく
他の保険者からの助け舟を求めています。

来年度保険料率9,9%に引き上げ 協会けんぽ見通し
(東京朝日(新潟)2009年11月18日7面) 

2500億円肩代わり案 協会けんぽ分 健保組合・共済
(東京朝日(新潟)2009年12月5日7面)

続く
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落とし穴(石綿健康被害救済法/一般供出金)

2009-12-12 | よもやまばなし働き方
 今年は日本海側で年し。
その日本海をえると中国、ずいぶんご無沙汰してます。

 10年近く前のスズキは、中国の東北部「瀋陽」という街の外れで
農家の暮らしぶりを聞き取る調査(おしゃべり?)をしてました(→4ページ目)。

 日本よりも冬の訪れは早く、とにかく寒かった!電気はありましたが、
暖(だん)は石炭ボイラー、台所ではコークスや練炭も。
隣り街(といっても広い中国、ケッコウ離れてましたが)
炭鉱街で、石炭は今も中国のエネルギーの中心です。

炭鉱ガス爆発42人死亡確認 中国、なお坑内に66人
(東京朝日2009年11月22日4面)

 その街で同じような調査をされていた方の話では、
記事のような事故がおこると、
速やかにご家族の「バスツアー」が開催されたとのこと。

 事故なのに慰安(いあん)旅行?
いえいえ、事故を悟られないよう、できるだけ現場から遠ざけるため。
でも道中でバレて大モメだったとか。

 記事の事故はさらに北部の黒竜江省ですが、
石窟で有名な“大同”やさらに内陸部など、中国全土に“落とし穴”があるのかも。

 日本の商業炭鉱は、今では北海道に職業訓練用のものがあるのみで、
労働災害の主役ではなくなりました。
ところが近年、40年以上前の“掘り出し”モノが
労働災害としてジワジワと広がり始めています。

石綿労災、認定者従事 977事業場、公表
(東京朝日(新潟)2009年12月4日38面)

 燃えない綿、石綿(アスベスト)はその加工のしやすさから、
建築材や緩衝材として日常生活で多く用いられてきました。
ボクぐらいのトシだと、理科の実験で使った金網に張られた不燃材が有名。

 ところが発がん性がわかり、現在では全面使用禁止に製造等禁止物質)。
しかしお仕事で“綿”ボコリを吸い続けたヒトの病気が、ジワリと増えてきているのです。

 すでにお勤め先がない場合もありますが、
労災保険とは別枠での救済が進んでいます
ご遺族の場合も特別遺族給付金)。
また職種に関係なく、現在の労災保険料には救済のための費用が
上乗せされています。(一般拠出金
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合言葉(電子申請)

2009-12-08 | よもやまばなし社会保険
 先週末のスズキはまたまた地元の社労士会の研修へ。
今回は「新規会員研修」 会長センセイいわく、
「一生に一度しか参加できない」アリガタイ機会とのこと(確かに…)。

 内容は社労士としての心構えのお話で、
アタリマエのことですがアタリマエゆえに忘れてしまいがちなことばかり。

 これまで「字」面しか追っていなかったホウリツも、
実際に使えるよう磨きをかけなければ意味はナシ。
“はたらき方のルール” や “社会保険のつかい方” に磨きをかけること
のお手伝いとなる、社労士の役割を忘れてはなりません。

 磨きをかけるのは最近では「字」だけではなくなってきているようです。

 「国の電子申請 非効率」(東京朝日2009年11月8日1面)

 当日は社労士の電子申請の講習もありました。
記事には「全体の2割 利用率1%未満」ともありますが、
講習ではその多くが個人利用の場合という解説も。

 過去5年間で申請ゼロだったものには
雇用保険関連の「再就職手当、職業訓練受講」の手続きも。

 よくよく考えると、新たなお仕事探しで困っているとき、
そのためだけに、カネとジカンをかけて電子申請なんてするでしょうか?

 電子申請ならなんでもかんでも自宅で、なんてまさに字面の世界
実際にアシをはこばなきゃ意味のないものもありますし、
“社労士”を活用できるものもあります。

 社労士が扱う手続きで社労士が電子申請した割合は
昨年、3割を超えたそうです。
字面をそれなりに押さえている社労士なら、
一つのきっかけで二つ、三つの手続きが同時にできることも。
健康保険と年金 など)

 電子申請ならお相手と、対面しながら同時にできるわけで、
まさに“ワンストップ”(ただし“個人”をお相手にするのはまだまだ難しい現状も)。

 電子申請では、お互いの合言葉(電子署名)として
電子証明書」というものが必要。
その発行はジツは手作業で、添付書類に「印鑑証明」が必要。
「お仕事されるなら印鑑証明はもうされてるでしょうが」と講師のセンセイ。
いえ、まだしてません…。

 まずはジブンが市役所の窓口へゴー。
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ボランティアも仕分け?(障害者法定雇用率)

2009-12-05 | よもやまばなし働き方
 この夏スズキは、もうひとつの本業の(?)教員として、
あるボランティアに学生を引率しました。
それは“アビリンピック”という大会の新潟版
 主催の新潟県雇用開発協会からの依頼で、
当日の学生ボランティアの様子の原稿を書いているところです。

 正直にいいまして、
これまで“アビリンピック”というものを知りませんでした。
正確にいうと見落としていました。
社労士の試験でも必須の「厚生労働白書」にはちゃんと書いてあるんです、
アビリンピックのこと(試験には残念ながら出ませんが…)。

 何らかの障害を持っている方が、
日ごろの職業訓練の成果を競うこのアビリンピック。
(学生は競技者の誘導や競技のサポートをしました。詳しくはこちら
社労士のお仕事とも実は関係がありました。

 「障害者の雇用すすむ」(東京朝日(新潟)2009年11月21日38面)

 「障害者雇用促進法」というホウリツがありまして、
全従業員の1.8%(=法定雇用率)は障害者を雇うよう努めなければならない
と定められています。
実際には56人を超える会社が対象(56人×1.8%=1.008人)。
ただし“雇入れの自由”(←「三菱樹脂事件」参考)があるため、罰則はナシ

 ただそれでは空手形になってしまうので、

*達成したカイシャには、一人当り月額2.7万円をクニが支給(障害者雇用調整金
*未達成の場合は、一人当り月額5万円をカイシャは納付(障害者雇用納付金

 することになってます。この手続きに、社労士がかかわることがあるんです。

 記事は今年の6月1日時点で、
1千人以上のカイシャ1.83%とその法定雇用率を達成したというもの。
全体では1.63%

 この“納付金”と“調整金”、現在は300人を超えるカイシャが対象ですが、
来年7月からは200人を超えるカイシャ、
将来は100人を超えるカイシャにまで広がります。
詳しくは“社労士”スズキまで"。

 先日あったこのアビリンピックの関係者会議、主催者から申し訳なさそうに
「うちの上部団体(=高齢・障害者雇用支援機構)が
今「仕分け」で話題になっていますが、アビリンピックは来年も開催できるはずです」
とのこと。ここにも「仕分け」が、恐るべし。 
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保険するトコロ(健康保険の保険者)

2009-12-02 | よもやまばなし社会保険
 国民皆保険のニホンでは、お医者さんにかかるとき、
多くのヒトが実際の3割分の支払いですみます。
そのとき使うのが保険証
この保険証、イロイロながあります。
3割負担の証(あかし)であることに、かわりないのですが。

 スズキが今持ってるのは青色の“”(私学共済)。
前の職場では緑色のこれまた“紙”(国家公務員共済)。
桃色の“カード”(かつての政管健保(現協会けんぽ))だったこともあります。
さすがに全部は知らないのですが、健康保険や国民健康保険の多くは
現在個人ごとにカード化されているようです。
スズキが渡り歩いてきた(?)共済は昔ながらの“紙”で原則1世帯1枚。
「3割」の威力は変わらないけど、
保険証をつくっている保険するトコロ(保険者)は全国に5000以上もあるんです!
同じ「3割」なのになんでそんなにいっぱいあるの?

 「国補助の建設業者国保 入院医療費、実質タダ
(東京朝日2009年11月30日1面)

 国保(国民健康保険)といえば、
市町村が運営する自営業者や仕事のないヒトのための健康保険。
が、歴史を紐解(ひもと)くと、自営の同業者が集まってつくった
国保「組合」による国保のほうが先輩格。
(現在165組合)

 同じ「組合」でも、大企業の勤め人の
多くが入るが健康保険組合(約1500組合)。
こちらは会社の福利厚生もかね、
カイシャの儲(もう)けも入れながらの運営です。
しかも“現役”ばかりなのでハブリがよかったのですが、
このところの不景気でつぶれることが多いのが現状。

 「国保組合」は会社じゃないので儲けがない。
そこで税金が入っています。
(注:市町村国保や協会けんぽにも税金は入っています)
仕事のないヒトも入る市町村の国保にとって、国保組合はウラヤマシイ存在。
なので30年以上前から新たな設立が認められていません。
“現業”の方のほか、お医者さんや弁護士さんの組合もあるのですが、
社労士は歴史が浅いためつくることができませんでした。

 おカネに余裕があるので、あとでキャッシュバックが出来るわけ。
これは重い病気でオサイフのパンクを防ぐ
高額療養費」の考え方とは異なります。

 今の稼ぎが将来に反映される年金(長期給付)とは異なり、
おカネのあるなしを超えて今を助ける健康保険(短期給付)
健康保険はミンナの今を広く支える仕組みなのに、
保険したがるトコロがひとつにまとまらず
なんでこんなにバラバラたくさんなのでしょう?
(余談:スズキが加入してきた「共済」にもこのキャッシュバック制度(一部負担金払戻金
 がジツはあったりします。ヒトのことはいえません…) 
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