はかせ社労士 ぼちぼちお仕事中!

社会保険や働き方にまつわる「よもやま話」をご紹介します。
(扱う法律の内容は概要です)

あってはならない条件(過労死)

2009-11-28 | よもやまばなし働き方
 「過労死の企業名「不開示は不当」遺族、国を提訴
(大阪朝日 2009年11月19日28面)

 働きすぎといわれている日本の労働者もここ数年、
労働時間は年平均1800時間とクニが立ててきた目標をほぼ達成。
でも実感がない?「平均」ってところがカラクリ

 パートやアルバイトのヒトの働く時間がもともと短いのはアタリマエ。
いわゆる”非正規“が労働者の3分の1を占めるまでになっていることを考えると、
そう、そのぶん正社員さんの働く時間がジツは延びていて
「平均」ではトントンということが十分考えられます。

 だからカロウシという悲しい出来事が増えてきてしまっているんでしょうか。
クニも数値目標達成で満足しているわけではなく、

・時間外労働の労使協定の限度時間を定めたり
(例:1か月で45時間まで)
・時間外・休日労働が月100時間超
(または2~6月平均で月平均80時間超
で健康障害が起きやすくなるというシグナル

を発しています(厚生労働省:労働時間適正化キャンペーンHP

 労災保険の世界ではカロウシが起きてしまってからの対応は
ずいぶん進展してきているのですが、“死”は起こってからでは遅すぎます。

 「安全及び衛生に関する事項」は
労働契約を結ぶ際の相対的明示事項のひとつですが、
そんなことを労働条件に記す会社(“死”が労働条件のひとつ)なんてありえません。
となると、労災の手続き事例からカロウシの実態を把握しているクニの出番では?

 記事によると不開示の理由は
過労死した個人が特定される恐れがある、ということだそう。
その遺族がクニによる公表を求めているわけですから、
考える余地はありそうです。

 働くヒトごとや会社の垣根を越えて労働時間を分け合う“ワーク・シェアリング”、
働くことだけが人生ではないという“ワーク・ライフバランス”といった、
クニが呼びかけるフレーズをアタリマエのものにするためにも…。
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空白の5年(高年齢雇用確保措置)

2009-11-23 | よもやまばなし働き方
 お年寄りの年金、今は60歳からもらえる場合もありますが、
これからもらう方の多くは65歳から。
(国民年金法26条・厚生年金保険法42条

 定年退職、こちらは60歳を下回らないこと。
これもホウリツ(高齢者雇用安定法)で決まってます。

 となると「空白の5年」はいかに?

 「定年後の再雇用 地裁が請求棄却」(東京朝日(新潟) 2009年11月17日33面)

 ある会社の定年退職者が65歳まで雇い続けないのはホウリツ違反だ!
と訴えた裁判の結果です。
えっ、65歳?60歳のハナシ(8条)とは別の条文(9条)に定めがあるんです。

①定年の引上げ
②希望者に対する65歳までの雇用の継続
③定年の定めの廃止

 のいずれかを採用しなさいと。(高年齢雇用確保措置

 この会社では子会社へ転籍(ただし給料ダウン)して契約社員として働く、
という選択肢を準備しており、この子会社は同じ企業グループなので
自社で雇っているのと同じだ、と認定したそうです。

 外に放り出されて給料ダウンは納得いかなかったのでしょうが。
原告が昨年度定年退職していた点も判決に影響したのでしょう。
今年の3月末までは雇用継続措置は会社のルール(就業規則)で、
場合によっては一方的に決めることができたのです
(ただし中小企業は再来年の3月末まで

 現在は雇い人と勤め人が相談して
具体的な方法を決めなければならないことになっています。
労使協定が必要ということ)

 ちなみに今すぐ65歳まで確保する必要はありません
来年3月間末までは63歳、2013年の3月末までは64歳OK
これは65歳前に支払われる特別支給の厚生年金
支給開始年齢のタイミングにあわせています。
こうすることで勤め人の「空白の5年」を埋めようとしているわけですね。

 ちなみに支給開始年齢の引き上げ時期は、
女性の場合は男性と比べて5年遅れ
でも性別を問わないのは、男女雇用機会均等法
(性別を理由として定年について差別的取り扱いをしてはならない6条
があるからです。
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夜のお仕事(衛生管理者)

2009-11-18 | よもやまばなし働き方
 ワタクシゴトですが、第二種衛生管理者という資格をとりました。
名前のとおり、会社で働くヒトの健康をサポートする役どころなんですが、
必要なのは50人以上の会社、しかも原則その会社で働くヒト
社労士のように請負って独立した仕事ができる資格ではありません。

 それができる資格は「労働衛生コンサルタント」。
ただこちらは、学歴・実務経験ともにスズキはアウト
社労士の試験では「労働安全衛生法」の問題はサッパリでしたし…。
そんな簡単に専門家になれるわけ、ありませんね。

 それでも関連することを勉強し続けることは、本来のお仕事の知識を深めることも。

長期夜勤とがん」(東京朝日(新潟)2009年11月3日be23面)

 労働時間は原則1日8時間・1週40時間
と決められていますが、いつ働くかは制限ナシ。
日曜だろうと夜だろうと働く人がいるからこそ、例えばコンビニは“便利”なわけです。
とか十一とか、営業時間由来の数字のつく大手コンビニも多くが24時間営業)

 ただ、夜間法定休日に働くと、お給料を一定割合プラスする必要が。
それだけ働くヒトの負担が大きいということをホウリツも認めているのでしょう。
お天道様が沈んだ後の働き方は、“動物”でもあるヒトにとっても要注意なのでは?

 衛生管理者の試験には「労働生理」や「労働衛生」といった科目もあって、
疲労や睡眠にかんする知識も問われます。

 「どれだけ働くか」はこのところの“過労死”の問題もあり
よく取り上げられるようになってきてますが、
この記事は「いつ働くか」を問題視してWHO(世界保健機関)が研究した成果にかんするもの。
 夜間交代勤務は、ヒトに対しておそらく発がん性があると判定したそうで、
これはタバコに対する判定に次ぐ強さなのだとか。

 若かりし(?)ころ、仕事の徹夜明けでヘロヘロのとき、
朝風呂の後(タバコは吸いませんが)空きっ腹にビールをキューっ
なんてのがウマかったことがありましたが、
今は次の日のことを考えるととてもできません。
それ以前に疲れと睡魔でバタンキュー。

 スズキのカラダも「衛生管理者」として、少しは機能してくれているようです。
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貰(もら)いすぎ?払いすぎ?(企業年金)

2009-11-13 | よもやまばなし社会保険
(続き)

 純粋な公的年金ではありませんが、
ここのところ「企業年金」のことが何かと話題に。

強制減額なら提訴も 年金問題日航OBら反発
(東京朝日(新潟)2009年11月6日7面)

早大の年金減額 二審で一転容認 東京高裁
(東京朝日(新潟)2009年10月30日33面)

 ともに「確定給付企業年金」といわれる会社独自の年金。
この年金は“退職金”で払うはずのおカネを毎月積み立てて会社が運用し、
約束した利率を上乗せして退職後に“年金”として払うというもの。

 今問題になっているのは約束した利率が高すぎて
会社の経営を圧迫するのでこれを今から下げられないか、というもの。
ちゃんと手続きすれば約束を変えられなくはない(=下げられる)のですが、
今年金をもらっているヒトからするとアテが外れるわけで酷なハナシ。
退職金は賃金の後払い という考え方もあり、
すでに勤め上げているのに一部働いていなかったことにしよう、
というおかしなハナシにもなりかねません。

 かといって日航の場合は、

経営再建のために税金が使われる→年金の支払に使われる

 となるのも考えもの。

 “年金”と“労務”を天びんにかけるという、
社会保険」「労務」士にとってはまさに大問題の出来事なのです。

~~~
 こう考えてくると研修のテーマ「在老」も実はおかしなハナシなのかも。
年金だけで生活できないから働きつづけるわけなのに。
でも「在老」は厚生年金が貰えるヒトのハナシなわけで、
基礎年金しか貰えないヒトのこともあわせて考えると、
ミンナの年金、ミンナで支えあわなくちゃ(国民皆年金)なのかも。

 両方の立場の知識を持つ社労士がお役に立つことで、
世のなかに新しい仕組みができるかも、
大それたことも考えた研修でした。
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貰(もら)いすぎ?払いすぎ?(在職老齢年金)

2009-11-12 | よもやまばなし社会保険
 今週初め、所属の社労士会の“必須”研修なるものを受けてきました。
午前はADR研修、午後は年金相談研修。
ADR=Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決

 ADRについては別の機会にご紹介することがあるはずなので、
今回は老いも若きも興味津々(?)の年金相談を。

 テーマは在職老齢年金(「在老」)。
年金が貰えてもお勤めしてればお給料が貰えるだろう、
だったら年金の一部(または全部)は払わないよ、
という仕組みのことです。

 自分が社労士として相談を受けるなら、
どのような時にどれだけ貰えないのか、
を説明するのでしょうが、今回は社労士向けの研修。

 講師のセンセイは相談を受けた事例からそこに潜む法律上の問題点
(必ずしも法律どおりに実務がなされていないことや、
 法律そのものが年金をもらうヒトのためになっていないこと)を解説。

 具体例を知ることも重要だったのですが、
実務家としてただ法律どおりに手続きを進めるのではなく、

・その法律が何のため にあるのか
ホントに年金をもらうヒトのためになっているのか
・もしアヤシイところがあれば
 専門知識を持つ社労士として問題提起しなければならないのではないか

という講師のセンセイの主張を強く受けとめました。

~~~
 社会保険庁が解体される来年から、
現在全国にある「年金相談センター」の業務は社労士会が引き受ける予定

 これまでは、法律どおりに手続きを進める(←ある意味アタリマエ)
社保庁の公務員が相談を受けていたわけですが、
同じ相談を専門知識をもつが公務員じゃない社労士が受けるわけです。
イロイロ考えされられることがありますが、
考えてばかりでボヤボヤしているわけにもいきません。

(続く)
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「労働者」じゃない働きかた(請負)

2009-11-08 | よもやまばなし働き方
 「縮む派遣 請負復権」(東京朝日(新潟)2009年11月4日2面)

 “派遣切り”なるブッソウなことばがささやかれ始めたのが去年の今ごろ。
それより少し前のキーワードが“偽装請負”。
いま「請負」という働き方が静かなブームなのだとか(?)。

 「請負」ってなんでしょう?
「請(こ)われて負(お)っている」んです(ってそのまんま?)
お仕事があるんだけど全部お願いしますよ、とアタマを下げられて、
よっしゃよっしゃ出来上がったら連絡するわ、ということです。

 お仕事をどうやって仕上げるかは仕事をするヒト次第。
そこには労働基準法の「指揮命令関係」はありません。
なので(労働基準法第9条の)「労働者」ではないことも。

 それってヒドイ?
いえいえ、頼む人がアタマを下げるぐらいですから、
頼まれる人のほうが本来エライんです。
お仕事のエリ好みだってできちゃうかも。

 だから働く人の最低限度を定めた労働基準法はつかわなくてもいいのでは。
頼まれる人はいわば一国一城の主(あるじ)。

 「請負」は本来誇り高いお仕事なんです。で、なんで今さら「請負」?

 まずは新聞のタイトルのように「派遣」が減ってきているから。
(今後法律が改正されると使えなくなるかも)

 そして「派遣」同様、使い方次第で安上がりにもなるから。
「請負」でアタマを下げるときに決める金額は全部コミコミ
労働基準法をつかわなくてもよいとなると、
労災保険や雇用保険のおカネを後で払う必要もありません。

 多くのヒトができる仕事の場合、
頼まれる人がエリ好みしていると、
頼む人は他へもっていっちゃうので即断即決、
金額は高くなるどころか安くなりがち
これは頼む人にとってアタマの下げがいがある?

 そんな頼まれる側の弱みにつけこんで仕事のやり方に口を出してしまうと、
もはや「請負」ではありません。
“偽装”になってしまうわけなんです。

 記事によると、そうならないようにするための工夫
(請負で働く人の工場内のエリアを分けたり、作業服の色を分けたり)
が進んでいるそうです。
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