全日本柔道選手権大会
(2007/4/29 日本武道館)
昨年と同じ対戦となった決勝戦を制した鈴木桂治(平成管財)が2年ぶりの優勝を飾った。優勝インタビューで、本人が言っていたように、優勝の要因は、穴井戦で勝ちを拾ったことと、その後の開き直りだった。
鈴木は、2回戦(鈴木にとってこの日の緒戦)で、大藤尚哉(総合警備保障)を小外刈り一本で退け、3回戦で100kg級で台頭しつつある穴井隆将と対戦した。穴井は天理大学を卒業したばかり。傍で、天理大の大先輩、篠原信一が指示と声援を送る。
無差別級の大会にあっては、スピードあふれる試合展開となった。しかし、攻めながらも互いに決め手を欠くなかで、終盤、穴井が積極的に仕掛けて、時間切れとなり、判定に持ち込まれた。
6分間の試合時間の終わりを告げるブザーが鳴ったとき、穴井は、通路で声援を送っていた篠原に向かって、「やった!これでいいですね!」というような自信の表情を見せた。篠原も小さくガッツポーズをしていた。一方の鈴木は小首をかしげ、負けを覚悟したような表情だった。
しかし、判定は2対1で鈴木の勝ち。武道館を埋めた観客からも「エーッ!」というどよめきがあがり、篠原もがっかりした表情で、控え室に戻っていった。
その後の2試合(準々決勝、準決勝)の鈴木には、本来の切れ味が戻っていた。とくに準決勝では、片渕慎弥(JRA)を相手に、開始28秒、小内刈りで鮮やかな一本勝ちをおさめた。そして、決勝戦。旗判定になったが、3対0と石井慧(国士舘大学学生)を見事にくだした。
日本柔道界の精鋭が集結するこの大会で優勝するためには、5試合(または6試合)勝ち続けなければならない。そして、そのためには、実力とともに運が味方してくれることも、時に必要である。
鈴木にとって穴井戦の勝利は、実力よりも運がよかったといえるものだった。ただ、それを無駄にしなかったのは、やはり鈴木の実力があってこそのものだった。
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