・・・あれから2年、僕は背の高い怪しい男と一緒に住んでいた。
男は“エカキ”と呼ばれていた。
真っ白い紙に、先の黒い木の棒を使って手品のように、風景を作り出していく。
それが誰かの気に入るものだった場合、エカキにお金が入るらしい。
そんなとき、エカキの顔はとてもうれしそうだった。
僕も、そんなエカキを見ているとなんだかとてもうれしくなるんだ。
「おい、ホーリーナイト。そろそろ帰るか?」
公園で日向ぼっこをしていた僕にエカキが話しかけてきた。
ホーリーナイトというのは2年前のあの日、エカキと僕が友達になったときに、エカキがくれた名前だ。
「お前はとても美しい色をしているなぁ。黒は高貴な色なんだぞ。」
家までの帰り道、腕の中の僕にエカキは話しかけてきた。
「黒・・・夜か。“聖なる夜”なんてどうだ?お前にぴったりだろ?」
不思議な安堵感に包まれていた僕は、うとうとしながら話を聞いていた。
「ホーリーナイト!お前は今日からホーリーナイトだ!」
突然の大声に眠りを妨げられた僕は、抗議の声を上げた。
エカキはそれを承諾の合図とでも思ったらしい。
「そうか!気に入ったか、ホーリーナイト!お前も気に入ったんだなぁ!」
僕の両脇を持って掲げたままうれしそうに大声を張り上げていた。
僕は正直、名前なんてどうでもいいと思っていた。
ただ、お腹が空いていた。
あくびをしながら全身をドーム型に伸ばした僕は、歩き出したエカキの後ろを付いていった。
エカキは脇にスケッチブックを挟んでいる。
どうやら昼寝している僕を描いていたらしい。
エカキは僕を見ながら、スケッチブックを黒く塗ることが多かった。
それまで描いていた風景画とかは結構な値段で売れていたけど、僕をモデルにした絵はなかなか売れなかった。
絵を見たお客さんの反応は大体同じだった。
「黒猫なんて不吉だ、こんな絵はいらない。」
そのセリフを聞くたびにエカキは悲しそうな顔をした。
そして、僕にこういうのだ。
「いつかきっとお前の良さをわかってくれる人が来るさ。こんなにキレイなんだもんな。」
そんなとき、僕はなんだか申し訳ない気持ちになって、一言だけ短く返すことにしていた。
「そうだね。」って。
でも、最近は絵がさっぱり売れていない。
僕に会う前に描いていた絵は、一枚を除いて全部売れてしまった。
最後に売れたのは秋の初めだったから、3ヶ月近くもお金が入ってないことになる。
それでもエカキは僕を描き続けていた。
「いつかお前の絵がみんなに認められる日が来るぞ。もう少しの辛抱だ。」
そういってエカキは「にっ」と笑った。
相変わらず風のような笑顔だ。
ただ、その顔は前よりも痩せていた。
「もうすぐクリスマスだな。ホーリーナイト。」
歩きながらエカキが言った。
「去年は二人で一本のチキンを食べたなぁ。あれはうまかったなぁ。」
僕の脳裏にエカキの部屋で食べたチキンの味が思い出される。
僕の名前が最もよく合う日だからってことで、手持ちのわずかなお金でチキンを買ってくれた。
とても美味しかったあの味を、今年も食べれるのかと思うと僕の小さな胸は高鳴った。
男は“エカキ”と呼ばれていた。
真っ白い紙に、先の黒い木の棒を使って手品のように、風景を作り出していく。
それが誰かの気に入るものだった場合、エカキにお金が入るらしい。
そんなとき、エカキの顔はとてもうれしそうだった。
僕も、そんなエカキを見ているとなんだかとてもうれしくなるんだ。
「おい、ホーリーナイト。そろそろ帰るか?」
公園で日向ぼっこをしていた僕にエカキが話しかけてきた。
ホーリーナイトというのは2年前のあの日、エカキと僕が友達になったときに、エカキがくれた名前だ。
「お前はとても美しい色をしているなぁ。黒は高貴な色なんだぞ。」
家までの帰り道、腕の中の僕にエカキは話しかけてきた。
「黒・・・夜か。“聖なる夜”なんてどうだ?お前にぴったりだろ?」
不思議な安堵感に包まれていた僕は、うとうとしながら話を聞いていた。
「ホーリーナイト!お前は今日からホーリーナイトだ!」
突然の大声に眠りを妨げられた僕は、抗議の声を上げた。
エカキはそれを承諾の合図とでも思ったらしい。
「そうか!気に入ったか、ホーリーナイト!お前も気に入ったんだなぁ!」
僕の両脇を持って掲げたままうれしそうに大声を張り上げていた。
僕は正直、名前なんてどうでもいいと思っていた。
ただ、お腹が空いていた。
あくびをしながら全身をドーム型に伸ばした僕は、歩き出したエカキの後ろを付いていった。
エカキは脇にスケッチブックを挟んでいる。
どうやら昼寝している僕を描いていたらしい。
エカキは僕を見ながら、スケッチブックを黒く塗ることが多かった。
それまで描いていた風景画とかは結構な値段で売れていたけど、僕をモデルにした絵はなかなか売れなかった。
絵を見たお客さんの反応は大体同じだった。
「黒猫なんて不吉だ、こんな絵はいらない。」
そのセリフを聞くたびにエカキは悲しそうな顔をした。
そして、僕にこういうのだ。
「いつかきっとお前の良さをわかってくれる人が来るさ。こんなにキレイなんだもんな。」
そんなとき、僕はなんだか申し訳ない気持ちになって、一言だけ短く返すことにしていた。
「そうだね。」って。
でも、最近は絵がさっぱり売れていない。
僕に会う前に描いていた絵は、一枚を除いて全部売れてしまった。
最後に売れたのは秋の初めだったから、3ヶ月近くもお金が入ってないことになる。
それでもエカキは僕を描き続けていた。
「いつかお前の絵がみんなに認められる日が来るぞ。もう少しの辛抱だ。」
そういってエカキは「にっ」と笑った。
相変わらず風のような笑顔だ。
ただ、その顔は前よりも痩せていた。
「もうすぐクリスマスだな。ホーリーナイト。」
歩きながらエカキが言った。
「去年は二人で一本のチキンを食べたなぁ。あれはうまかったなぁ。」
僕の脳裏にエカキの部屋で食べたチキンの味が思い出される。
僕の名前が最もよく合う日だからってことで、手持ちのわずかなお金でチキンを買ってくれた。
とても美味しかったあの味を、今年も食べれるのかと思うと僕の小さな胸は高鳴った。
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