美島奏城  豊饒の海へ

豊饒の海をめざす、教育と文芸と風流に関する備忘録

塩川桐子著 『ふしあな』

2009年05月06日 | 漫画

  なじみの本屋のカウンターには、少し変わった品揃えの新刊コミックがならんでいる。この一冊も大手の本屋には並ばないような作品だが、個性的なので購入。作者は塩川桐子(とうこ)氏。

 

  あとがきを読むと10年ほど前に同名で刊行されていたものを、作品の加除を経て新装版として刊行したよし。

 

 本作は全6編が浮世絵調の線で描かれているという点が個性的である。さらに6編の短編が江戸情緒というか、かつての日本人の心の琴線にふれる内容なのだ。その6編が以下。一番発表の早かった「ふしあな」が書名となっている作品。

 

 1 「歳月」     2 「錆」        3 「寂滅」  

4 「散る桜」    5 「ふしあな」    6 「杜若」

 

  作品名が示すその内容は実に興味深い。「杜若(かきつばた)」は、植物のもつ生活史的意義を考える一層奥が深いと思われた。

 

 塩川氏は寡作らしく、多くを発表していないようだが、今後もこの手の作品を発表してほしいものだ。

 

 さらに、江戸研究家だった故杉浦日向子氏の漫画家時代の作品に心底通じるものを感じないではいられなかった。 


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