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 本は私の人生の友・・・

『月夜の森の梟(ふくろう)』

2022年01月09日 | 

著者 小池 真理子

 

「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」

作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。

残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。

心の底から生きることを励ます喪失エッセイ52編。

 

>病気がわかった後のこと。梟の声に気づいた時、部屋の中にいる彼の耳に届くよう、私は窓を少し開けた。

風のない晩だった。梟の声は遠く近く、よく聞こえた。

明かりを消した室内に青白い月の光が射(さ)し込んで、薄墨色の影を作っていた。

萩原朔太郎の詩の世界みたいだった。

 

>夫、妻、娘、息子、兄弟姉妹、両親、ペット……亡くした相手は人それぞれだ。

百人百様の死別のかたち、苦しみのかたちがある。ひとつとして、同じものはない。

それなのに、心の空洞に吹き寄せてくる苦しみの風の音は、例外なく似通っていた。

大きな死別経験のあるなしにかかわらず、年齢も性別も無関係に、人は皆、周波数の同じ慟哭を抱えて生きている……

それが、連載を終えた今の私の実感である。

この一年は、夫のいない時間を生き始めなくてはならなくなった私が、

思いがけず無数の読者の、同様の想いに励まされてきた一年でもあった。

 

ご主人の藤田宜永(よしなが)さんが直木賞を受賞したとき、

先に受賞していた小池さんは とても嬉しそうで、赤いバラの花束を渡しながら

思わず藤田さんの頬にキスをしてました…

 

本の内表紙のレモンを薄切りにしたような月の写真もステキです…

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