4月のラマンチャの男以来、久しぶりに帝国劇場へ足を運びました。
昨年は、この時期にレ・ミゼラブルを観に毎週のように足を運んでいました。
このタイミングを計っていたかのように、来年のレ・ミゼラブルの発表が行われました。
劇場では、ロビーで流されているビデオからも、時折聞き慣れたメロディーが聞こえてきました。
3月の名古屋に始まり、金沢、松本、仙台を経て10・11月に帝劇公演となるそうです。
鬼が大笑いしていそうですが、今から楽しみです。
今回のミス・サイゴン、私は初見の舞台です。
ミス・サイゴンと言うと、本田美奈子さんの名前を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
今週は、彼女を偲ぶ記念週とのことで、ロビーの大型モニタからは当時の映像が流されていました。
この日、楽前日の南十字星を観てきた後だけに、ベトナム戦争を背景としたこの舞台は、いっそう切なさを感じさせられました。
戦禍によって家も家族も失い、生きるために17歳のキムが意を決してキャバレーに身を置くことに。
自分の置かれた状況や、これから起こることも十分に理解し得ないかのような仕草は、見ていて切なくなります。
井上さんのクリスは、素晴らしい歌声ですね。
戦いに疑問を抱き、虚無感に心を失っているかのようなクリス。
17歳のキムと巡り会い、心の拠り所のない2人がわずか一夜を共に過ごしただけで、共に暮らすことを誓うのも、心の隙間を埋めるためには互いに必要な存在だったということでしょうか?
ストーリーテラー的な存在の、エンジニア。
ベトナム戦争という特殊な戦争の時代を生き、成功を夢見てなりふり構わず商売をする男。
故に、その胡散臭さは、生き抜く上で身につけねばならないものだったのかも知れません。
エンジニアとクラブオーナーとの会話には、一瞬何の舞台を観ているのだろうと思うほどでした。
あれって、アドリブがかなり入っているのでしょうか?
橋本さとしさん演じるエンジニアが歌い上げるアメリカンドリームは、戦禍のベトナムを逃れ夢のような成功を思い浮かべているようにも思えます。
けれど、キング牧師の有名なスピーチで繰り返された「I have a Dream」とは逆に、この夢はほとんど実現性のない、ゆめのように感じます。
私の中では、歌の中で何度も出てくるアメリカンドリームと言うフレーズが、ベトナムに派兵したにも関わらず成果の上げられなかった、大国アメリカに対する皮肉にも聞こえてくるのですが・・・。
新妻聖子さんのキムは、1幕始めでは17歳の女の子の無垢な印象を感じさせます。
トウィからタムを守ろうと必死になるキムは、母の強さを感じさせます。
クリスとの再会が現実となるときに見せた表情は、3年間の辛さがなかったかのよう20歳の女の子の笑顔でした。
クリスに会いに行く時、身につけていたのは仏前での挙式の時と同じもの。
愛するクリスの前では、母である前に1人の女の子なんでしょうか?
それとも、タムと2人で耐えてきた時間を巻き戻しているかのようにも思えます。
トウィの神田さん、良い声をしていますね。
鈴木ほのかさんのエレンは、キムやタムに対して苦悩の表情を見せながらも、良き妻を演じています。
岸さんのジョンが歌い上げるBUI DOI、心に響きます。
と言いつつも、岡さんの歌声も聴いてみたいです。
これって、昨年のレ・ミゼラブルの時と同様にハードリピートの予感が・・・。
キムのラストには、どうにも納得がいきません。
トウィに対する謝罪なのか、タムを孤児として引き取らせるためなのか、あまりにも短絡的で悲し過ぎる最期です。
全てを失った彼女が手にした幸せなのに、最も辛い選択をする必要がどこにあったのか?
やり切れなさに、涙も止まる思いです。
何度かリピートしないと、理解しきれないのかな・・・?