劇団ふたりと聴くと、お笑い系を想像してしまいそうですが、こちらは中井貴一さんと段田安則さんが2001年にコンビを組み、2人だけで公演をされたことから始まったものだそうです。
2回目の公演となる今回、舞台が初めてと言うりょうさんを迎えてのストーリーは、たっぷりの笑いに、ホロッとさせられるシーンがあり、あっと言う間の2時間でした。
舞台は、昭和の30年代を思わせるレトロな雰囲気が漂います。
古物商を営む小倉小太郎の店舗兼住宅には、なにやら怪しげなものがたくさん置かれています。
コタツが置かれた和室の隣には小さな庭があり、洗濯物を干す物干しやブロック塀、塀の側には木の電柱が立っています。
40歳を過ぎても夢を追っているかのような一面と、剽軽で人の良い小太郎。
大家の娘で、幼なじみ。
小太郎をお兄ちゃんと呼んで慕う、バツイチのめぐみ。
そこに電柱から小太郎の住まいをのぞき、果てには塀をよじ登ったものの塀から落ちて記憶を失い、小太郎に救われたことをきっかけに共に生活をする大作。
この3人の不思議な生活が、物語を進めていきます。
前半は記憶を失った大作と小太郎の軽妙なやり取りがコミカルで、私の中では中井さんにこんな役を演じるんだと感じてしまいました。
こんなシーンを観ている方が、お笑い系の劇団ひとりさんをイメージしてしまいます。
そんな生活を始めるとき、小太郎が大作に「記憶が戻ったとき、だまって去っていかない」ことを約束させます。
40歳を過ぎても小太郎が独身のままなのには、理由がありました。
幼い小太郎は順子とともに、手紙や宝物を詰め込んだ宝箱を庭に埋め、30年後には結婚をする約束をします。
そのタイムカプセルを掘り出す日が、間近に迫っていたのです。
大作に少しずつ記憶が戻り、自分が誰で何のために小太郎の本を訪れたのかが解ったとき、大作は家を飛び出していきます。
自分に仕事を依頼した親切な先輩に裏切られ、自分の作品が他人の名前で出されることを知り、衝撃をうけまるめぐみ。
そんなめぐみを慰める、小太郎。
めぐみから、現れるかどうかも解らない人を待つことがなぜできるのか、もし現れなかったらどうするのかを問い詰められます。
自分が幼いときに両親を亡くし、孤独な精神状態に置かれた小太郎にとって、人を信じていくこと、信じる努力をすることがとても大切だったことをめぐみに語りかけます。
でも、その思いとは裏腹に裏切られることを恐れている小太郎がいることを、めぐみから指摘されます。
そして、めぐみから順子は大作と結婚していることを告げられる小太郎。
翌日、小太郎の元に戻ってきた大作から、事実を告げられる小太郎とめぐみ。
そこには、切ない現実が。
亡き順子の代わりに、小太郎とタイムカプセルを掘り出す大作。
それを見つめる、めぐみ。
菓子の空き缶のような箱には、幼い頃のめぐみの手紙も。
幼い頃の小太郎と順子の約束と、30年後思いもよらぬ出会いの中で交わした小太郎と大作の約束。
その2つが、同時に果たされたのです。
今日が千秋楽ということもあり、カーテンコールに応える3人の頭上には、カラーテープが飛び交っていました。
そして、最後に冒頭で大作が小太郎の家の塀を覗くような格好をした男が現れ、あっと言う間に塀を乗り越えて舞台上手に立ちました。
作・演出の福島三郎さんから、公演の挨拶でした。
私好みの芝居で、大満足の舞台でした。
劇団ふたり、ぜひ次回の公演も観てみたいものです。
PARCO劇場
小倉小太郎 中井貴一
大垣大作 段田安則
倉沢めぐみ りょう