待ちに待った、大阪公演初日です。
私の中で、特別な思いがある公演です。
ちょうど、半年前。
1幕ラスト近く、修道院に戻ってきた智恵さんのマリアと修道院長が「すべての山に登れ」の直前、大きな揺れにおそわれ、そのまま中断となりました。
私は、その時丸ノ内線新宿駅で、経験したことも無い揺れに不安を感じていました。
後に甚大な被害をもたらした震災であることを、様々な形で思い知らされました。
劇場では、帰宅出来ない観客に対して、最大限の配慮をしてくれていたそうです。
当時の日記にも書きましたが、中断したサウンド・オブ・ミュージックでは、智恵さんが観客にサインをして声を掛けてくれたそうです。
千秋楽予定の日、中断した11日の振替公演が実施されましたが、来場出来た方はごく一部の方だけでした。
チケットを持たない私は、劇場前で職員の方にカンパニー全員の無事を聞き、開演時刻に無事を祈り、劇場を後にしました。
結局、千秋楽公演は中止となりました。
私の中では、11ヶ月間通った演目が終わらぬまま、時が止まったままになりました。
そんなこともあり、大阪初日はカンパニーの無事を自分の目で確認出来る場でもあったのです。
直前まで、アイーダを智恵さんが演じていたこと。
はるちゃんにとって、地元の大阪であること。
ようやく四季のサイトに掲載された稽古場写真を見るたび、初日に智恵さんが舞台に立つことはないであろうことは、容易に予想されました。
直前まで迷いましたが、自分の区切りでもあるため、予定通り早朝ののぞみに乗車しました。
はやる気持ちが抑えられず、開演前に劇場エントランス前に着くと、ご招待客向けの受付が設置され、300名以上と思われるチケットが用意さていたのに驚きました。
ロビーには、各界の見覚えのある方がチラホラと。
客席をのぞくと、見覚えのある緞帳が目に飛び込み、サウンド・オブ・ミュージックの舞台が行われる実感が湧いてきました。
オーケストラピットがないのが、唯一残念です。
客席内が薄暗くなり、鐘の音が響き渡り、いよいよ開幕です。
下手から秋山修道院長が現れ、『朝の祈り』です。
Dixit dominus domino meo
Sede a dextris meis
最初のフレーズに、東京とは違った感動が体を駆け抜けました。
東京では、手にした聖書なのか、歌集なのか解りませんが、冊子を両手で開いたまま歌っていましたが、今回は歌が進むにつれ、ページをめくっていました。
そして、修道院長のソロパート最後の
Gloria Patri, et Filio
Et spirtui Sancto
辺りで、ゆっくりと十字を切っていました。
「目を閉じて、耳を澄ませば。囁きが聞こえてくるの。」はるちゃんマリアの声が響き、幕が上がると、自分でも驚きましたが、頬を涙が流れていくのを感じました。
マリアの歌声も、見慣れたセットも変わらぬまま。
止まっていたのは、私の中の時間だけだったんです。
同時に、ようやく安心出来ました。
そんな思いが、涙となったようです。
今回の舞台を観て感じたのは、1・2幕共に台詞が追加されていること。
私が気付いたのは、6ヶ所くらい。太字が、追加された台詞です。
記憶の中なので、性格ではありませんが・・・。
まず、「もうすぐ十七歳」の歌い出しの前。
リーズルとロルフの会話です。
(ロルフ)僕には情報がある。
(リーズル)素敵!
(ロ)それほどでも。
(リ)素敵よ。この時期にフランツに電報が来るのを知ってたの。
(ロ)毎年妹から誕生祝いの電報が届くんだ。
(リ)やっぱり素敵!
次は、エルザが大佐にパーティを開いてくれるよう頼むシーン。
(エルザ)ねえ、私のためにパーティを開いて。
男爵やみんなを招いて。貴方の友達に会ってみたいわ。
大げさじゃなくて良いから、少しだけ豪華に。
3つめは、修道院に戻ったマリアの事でシスター・マルガレッタと修道院長の会話。
(マルガレッタ)その嬉しそうにも、辛そうにも見えるんです。
(院長)事情を尋ねましたか?
(マ)いいえ、お祈り以外は口をきかないんです。
(院)会いましょう。
4つ目は、2幕「ひとりぼっちの羊飼い」の後、子どもたちとマックスの会話です。
(ルイーザ)どこのホール?
(マックス)どこでも良い。
そうだな、ザルツブルクのコンサートホールだと思って。
とにかく、お客様は満員だ!
これは、変わったのかどうか解りかねるのですが、
「何かいいこと」と後の大佐とマリアの会話です。
(大佐)君との結婚は誰に申し込めばいい?が、
二人の結婚は、誰に申し込めばいい?になっていました。
5つ目は、「もうすぐ十七歳」の直前。
(リーズル)愛するって、どんな気持ち?
(マリア)私、自分のことを考えなくなった。何をするにも、彼のことを考えるようになったの。「人を愛する」その意味がようやく解ったの。
きっと、貴方もいつか、本当の意味が解る~♪
最後は、電報を届けに来たロルフとリーズルから。
(マリア)ちゃんと渡すわ。
(ロルフ)直接渡すよう命令されています。命令ですので。
(リーズル)ロルフ!結婚しているのよ!
他にもあったのかも知れませんが、こんな感じです。?フランツのお祝い電報の件は、初めて知りました。?
愛することについてリーズルに語る一節は、マリアの心の変化を表現していて、良いですね。?
これとは対照的に、『新しいお母様を紹介するわ。」と言っているのだから、『結婚しているのよ』は、無くても良いのかなとも思えます。
これだけ台詞が加わるとなると、公演途中での変更は出来ませんね。
?5番目の台詞は、智恵さんでも聴いてみたかったな・・・。
はるちゃんがマリアとして舞台に立つのは、昨年の7月中旬から8月中旬までだったので、実質1年振りのマリアです。?マリア仕様なのか、ウェーブがかかった髪が以前とは違ったイメージです。?「サウンド・オブ・ミュージック」気持ちよく歌いあげています。?仕草も良いかなと思っていたら丘を降りてきて舞台センターへ移動している時、ガッカリしたような印象の表情をするんですね。?でも、何かに気付き振り返り、再び丘に駆け上がっていくので、何に気付いたのかは解りませんがストーリーを感じます。?歌い終わると、丘の上でピョンピョンと跳びはねていました。
智恵さんの場合、自分を育ててくれた山や自然=マリアの家族のようなイメージで、様々なものに「おはよう!」と笑顔で声をかけているかのような仕草とは対照的でした。?
「自信をもって」では、元気いっぱいのマリアで、好感が持てます。?ただ、元気が良すぎるのか、帽子に手が伸びることが多いです。?ギターを振り回すようになると、帽子を片手で押さえたり、リュックが暴れるのでショルダーベルトを握ったりと、ちょっと忙しいです。?東京でも書いていたと思うのですが、ギターケースの扱いがこのシーンの時だけは床にゴツンと音がする置き方をしていました。?トラップ邸やマリアの部屋、トラップ邸を出て行く時には音を立てずに扱っていましたから、ふだんは多分大丈夫なんでしょうね。?
子どもたちとの対面後、改めて名前と歳を聞くシーンでは、リーズルの「家庭教師は必要ないわ!」に満面の笑顔で「良かった、お友達になれるわね。」と即答。?ここは、ちょっと躊躇いながらの切り返しがマリアの本心だと思うのですが・・・。?
「ドレミの歌」では、グレーテルがギターの弦を鳴らす辺りから、最後の極めポーズを取るまで、マリアも子どもたちもちょっと余裕が無いのかなという感じでした。?初日だから、ちょっと緊張気味なのかなとも感じました。
大佐の理解を得られ、エルザの応援にご機嫌なマリアがお菓子をつまみ食いするシーン。
はるちゃんの演技を観て、改めて智恵さん巧いなとと思ってしまいました。
?相変わらず、驚きのリアクションが大きめなマリアです。?
そんなこともあり、1幕はまだお転婆な感じの女の子な印象です。
?意図的なのか、たまたまそう見えてしまうのか??2幕では落ち着いた印象のマリアに変わっていくので、これもありなのかな。
?2幕のマリアは大人びた印象となり、妻であり母となるのですが、母として子どもたちと接するという感じは弱いかな。?
リーズルに『愛すること』を語るシーンも、姉という印象もありますが、好きなシーンの一つです。
大阪公演では、はるちゃんがメインとなるでしょうから、この先どんなマリアを生きていくのか、楽しみです。
はるちゃん、今回キャスティングされていない沼尾さん、智恵さん、そして土居さん。
20代から50代まで、各世代の俳優がマリアを演じているというのも、興味深いです。
秋山修道院長は、東京と変わらず。「すべての山に登れ」は東京以上に素晴らしかったです。
包容力の大きな修道院長は、安心して観ていられます。
久居シスター・ベルテ
佐和さん、倉斗さんに次ぐ、3人目のベルテです。
イメージ的には、倉斗さんに近いのでしょうか。
シスター全般に佐和さん、あべさん、矢野さんの3人がほとんど演じていただけに、私の中では3人のイメージが定着してしまったようです。
それだけに、特に『マリア』のシーンでは、久居さんにしても、保城さんにしても、山本さんにしても、ちょっと辛口になってしまいます。
ちょっと口やかましいベルテ、対照的にほんわかしたマルガレッタ。穏やかなソフィア。3人のバランスが取れていて、いい味をだしていると私は考えているのですが、初日の3人はまだバランスが悪いのかな。
一和ロルフ、相変わらずネイティブのような風貌です。
リーズルとの会話中の表情もいい感じなのですが、大佐を例にしてナチスに傾倒しない人間を批判する表情は、怖さを感じさせます。
後に、ナチス軍の1人となるロルフを、予感させるような表情です。
「もうすぐ十七歳」で男をアピールするのは、ネクタイを締める仕草でした。
『君はシャイで臆病♪』で、美女と野獣のビーストのように、リーズルの鼻の頭をチョンと触れていました。
お別れのキスは、石毛ロルフがやわらかなキスだったけど、出会い頭的なちょっと強めのキスでした。
ご機嫌なリーズルは、スキップをしながら舞台袖に捌けていきました。
五所リーズル、東京よりも可愛らしい感じのリーズルになっているような気がします。
子供達が歌う『サウンド・オブ・ミュージック』のハイトーンが綺麗に出ていました。
子供達
グレーテルの瀬尾美優鵜ちゃんは、お稽古中に前歯が抜けてしまったみたいです。
笑顔になると、ちょっとユーモラスに。
まだ緊張しているのか、「グレーテル!」と名前を言う前から口を大きく開いてました。(笑)
ブリギッタの菊田万琴ちゃんも、ちょっと緊張気味なのか、それとも開口を意識し過ぎているのか、どっちかな?
フリードリッヒの池本淳宏くんの
「さよならまたね」でのグッバ~~イのハイトーンが綺麗に伸びていました。
上手でマックス言葉を交わしている男爵が「いいねえ」というのに、思わず頷いてしまいそうでした。
マルタの河賀陽菜ちゃん、笑顔の可愛い子です。
「ひとりぼっちの羊飼い」で悲鳴を上げて走り込んできますが、今までの子達が上手袖に飛び込んでしまいそうな勢いだったのに対して、ベンチチェストの辺りで止まってました。演出が変わったのかも知れませんね。
クルトの山崎悠稀くん、クルトの役所って子役の中では難しい部分だと思うのですが、上手く演じていました。
東京公演ではそれぞれの役に対して4~5人がキャストされていたので、週あたり1回か2回の出演でしたが、大阪では2人で回していくようです。
事情はいろいろあるのでしょうが、負担が大きくならなければ良いのですが。
マックスとエルザ
この2人も、さすがベテランですね。
マックスで変わったところとしては、2幕冒頭。
子供達にザルツブルク音楽祭の練習をするシーンで、最初に歌うマルタに向かって「マルタ!」と声をかけたり、次に歌う子に向かって手を伸ばして合図をしたりしていました。
マックスの勅使瓦さん、東京と変わらずザルツブルク音楽祭の審査発表前のシーンから、泣かせてくれます。
大佐の村さんとのアイコンタクトや、足早に舞台を去っていく子供達へのさよならの思いを込めた優しい微笑み。
これだけで、涙が出てきます。
ツェラー長官
東京での高橋さんが見事にイメージにあっていたので楽しみにしていたのですが、今回は蛭沼さんだと思うのですが、白倉さん的な長官でした。
キャストが変わり、どうなるかと思っていましたが、やはり好きな作品に変わりはないようです。
さすがに智恵さんのいない舞台では通えないので、年末くらいにもう一度観に行けたら良いなと思っています。