笑い通しの80分でした。
幕が上がると、薄暗い舞台には家具や装飾品が並び、ブリンズリーとキャロルの声が響いてきます。
フィアンセのブリンズリーを父親のメルケット大佐に好印象を与えるため、ブリンズリーの心配をよそにハロルドの部屋から無断で借りてしまった家具や装飾品を並べ準備万端といったところでしょうか。
大富豪のバンベルがー氏がブリンズリーの作品を見学にくることもあり、ブリンズリーにもキャロルにもこの機会を人生最大の好機にすべく思惑が広がります。
ブリンズリーは、キャロルとの結婚、芸術家としての富と名声。
キャロルも、ブリンズリーとの結婚、著名な芸術家の妻となること。
そんな2人が一息つこうとしたとき、舞台は明るくなります。
部屋の配電盤のトラブルで、停電になってしまったのです。
照明を通常とは反転させて、暗闇の中の人間模様を見せる舞台の始まりです。
暗闇を想定しているため、明るい舞台上を手探りで動き回る仕草が笑いを誘います。
さらに、お酒好きの隣人ミス・ファーニバル、ブリンズリーと親しいゲイの美術品蒐集家のハロルド、元恋人のクレアなど、個性的な登場人物も良い味を出してます。
他人の姿が見えないとなると、人間本音が出てしまうところも笑いを誘いますね。
大切なものを勝手に持ち出され、キャロルとの結婚を聞かされて怒るハロルド。
キャロルとの結婚に怒る、クレア。
クレアの暴露に怒る、キャロル。
娘を騙したことに怒る、メルケット大佐。
どんどん窮地に追い込まれる、ブリンズリー。
場当たり的な行動が、周囲の怒りを買うことに。
電力会社から派遣されたシュバンツィッヒが修理を完了し、「光あれ!」の言葉と共に明かりが灯ります。
ブリンズリーの運命は?
普段、エルファバやアイーダ、川島芳子といった毅然とした女性を演じている姿しか見ていないため、キャロルを演じ濱田さんの可愛いこと!
キャロルを観ているだけでも、口元がゆるんできそうです。
対する荒川さん演じるブリンズリーは、日の目を見ない芸術家という雰囲気にはあまり見えないかな。
心配性の芸術家と思っていたら、話が進むにつれ徐々に分かる人間関係。
狼狽して冷や汗をかいているのか、熱演のためかはともかく、シャツは汗びっしょり。
荒川さんの表情の変化が何とも言えませんね。
栗原さんのハロルドも、観ていて笑いがこみあげてきますね。
いや~、こんなゲイのイメージが妙にはまっている気がします。
ところで、大切な仏像を落として壊してしまいますが、あれって鋳造品ではなくて磁器だったんですね。
そんな仏像、あるのでしょうか?
セクシーな八重沢さんのクレアって、どうなんでしょう?
2階からキャロルやメルケット大佐、ブリンズリーにウオッカをかけていますが、暗闇にもかかわらずちゃんとかかるのでしょうか?
それに3人とも、雨漏りなんていっていましたが、酒の匂いで分かるのではなんて突っ込みをしたくなります。
観ていた私もはめられてしまった、高橋さんの電気技師のシュバンツィッヒ。
あれだけ芸術論を歌い上げたあげく、派遣された技師と本人が名乗るまでバンベルガーと思ってしまいました。
確かに大富豪にしては、服装が違いすぎましたね。
四季が「笑劇」と称しているものに、今年も11月に公演が予定されている「解ってたまるか!」がありますが、笑いの質が違うため「ブラックコメディ」の方が圧倒的に笑えますね。
ブリンズリーの場当たり的な行動の面白さのような舞台は、昨年青山円形劇場で観たマイケル・クーニーのコメディ「Cash On Delivery(えっと、おいらは誰だっけ?)」小林 隆さん、岡田達也さん他出演を思い出します。
時には、こんなコメディで笑いの渦に巻き込まれるのも楽しいですね。
自由劇場 | 2008年10月25日 |
ブリンズリー・ミラー | 荒川 務 |
キャロル・メルケット | 濱田めぐみ |
ミス・ファーニヴァル | はにべあゆみ |
メルケット大佐 | 志村 要 |
ハロルド・ゴリンジ | 栗原英雄 |
シュパンツィッヒ | 高橋征郎(劇団民藝) |
クレア | 八重沢真美 |
ゲオルク・バンベルガー | 勅使瓦武志 |