フレドリック・フォーサイス(KADOKAWA)
一番最初に読んだのは「ジャッカルの日」。実によくできた話と思っていたら、かなりの部分が実話に基づき、その後の小説も自分の経験や現地調査に基づいているのが、本書で分かる。また、同署の執筆動機がカネがなくなりそれを稼ぐためだったというのも面白い。作家になったけど、実際はジャーナリストを抜けていないからその後の小説もかなりの部分実体験に根差すところがある。
もともとジャーナリストだし、その経験から冷戦時代の東ドイツでの活動やアフリカでの取材などいろいろな実話があり、現代国際政治の舞台を追体験することもできる。
そもそものスタートが、空軍のパイロットになる夢から始まったところが面白い。最初の少年時代については若干物足りない感じもしたが、手相を見てもらって自分の幸運がついていることを知っているのが強み?になっていろいろな危険なところも渡り歩く原動力ではないか。
41ページの外国語習得の話は有益だ。限界がどこにあるか分かったね。
さて、内容紹介は、詳しく・・・(週刊文春から引用です)
『フォーサイスはスパイ小説を超える生き方を歩んだ 『アウトサイダー』な作家が描く鮮やかな自伝
スパイ小説の第一人者として人気の高いフレデリック・フォーサイスが、自伝『アウトサイダー 陰謀の中の人生』を著した。インテリジェンスに詳しい作家の手嶋龍一さんが、本書の読みどころを案内する。
文句なしに面白い――昨今、そんな新刊に出遭うことは、万馬券に当たるほどの幸運と言っていい。フォーサイス少年はスピットファイアーを駆って大空を飛びたいと憧れていた。ケンブリッジ大学の入試面接でも「パイロットになりたい」と告げ、安全だが退屈な人生を拒んでしまう。まさしく筋金入りの『アウトサイダー』なのである。この特異な自伝は、短編の狙撃手、ロアルド・ダールが人生を綴った『少年』、続く『単独飛行』の系譜を継ぎ、消えゆく大英帝国の青年群像を彷彿とさせる。
ふたりとも金持ちの子弟が学ぶパブリック・スクールに通いながら、大学には進まない。冒険旅行に出かけ、軍用機の操縦桿を握り、やがて作家になる軌跡はぴたりと重なっている。
「人生はおびただしい些事と、数少ない大事件から成りたっている。自伝では退屈にならぬよう内容を厳しく吟味すべきだ。どうでもよい事柄はばっさり切り捨て、鮮やかに記憶に残っている出来事だけに絞り込むべし」(『単独飛行』より)
フォーサイスもダール流の「自伝の鉄則」にあくまで忠実なのである。
フォーサイスは語学の才能を生かして、ロイター通信の特派員となり、ドゴール時代のパリから冷戦都市ベルリンに赴いていく。彼の地で東ドイツの情報当局の峻烈な検閲体制のもと記事を紡いでいく。検閲はジャーナリストを鋼のように鍛えるという。一段と逞しくなった彼は、BBCの特派員として内戦下のビアフラの悲惨な現実と向き合う。だが、祖国とメディアの官僚体質と思うさま衝突する。
この時、英国秘密情報部と密やかな関係が培われる。後年、その絆が南アフリカで大きな実を結ぶことになる。この国の白人政権は人種隔離政策は放棄したのだが、核弾頭は密かに所有していた。作家は、情報当局の密命を帯びて現地に飛び、ボタ外相に核の扱いをどうするのかと尋ねた。一連の事実は『ジャッカルの日』に劣らず面白い。
評者:手嶋 龍一
(週刊文春 2017.3.2号掲載)
著者について
●フレデリック・フォーサイス:1938年イギリス生まれ。空軍のパイロットなどを経て、ロイター通信、BBC放送の記者を勤めた後、作家に。71年ドゴール暗殺をテーマに書いた長編『ジャッカルの日』で小説家としてデビュー。綿密な取材とストーリーテリングの天賦の才で世界をわかせ続けている。著書に、『オデッサ・ファイル』『戦争の犬たち』『神の拳』『アフガンの男』『キル・リスト』など多数。
●黒原 敏行:1957年生まれ。東京大学法学部卒。英米文学翻訳家。訳書に、『コブラ』『双生の荒鷲』(以上、KADOKAWA)、『幻の女』『エンジェルメイカー』『怒りの葡萄』(以上、早川書房)、『まるで天使のような』(東京創元社)、『すばらしい新世界』(光文社)など多数』
・・・確かに文句なく面白い。イギリス人の冒険精神野現れだし、そういう人物なんでしょうね。
もう一度「ジャッカルの日」を読むか、映画を見たくなった。
お勧めですよ!
