読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「東京タクシードライバー」

2016年03月31日 | 日記
山田清機(朝日新聞出版)

確かに都内でタクシーに乗っていると、いろいろな運転手さんがいる。年代や雰囲気でそのドラマというか過去が見えるような気がするし、それもなまなかな話ではなかろうと推測される。それをまとめたノンフィクションだから興味深いがその底しれぬ深さも感じられるそれぞれの人生がかいま見えるのだ。

内容紹介は
『13人の運転手を見つめた、現代日本・ノンフィクション
事実は小説よりせつなくて、少しだけあたたかい。夢破れても人生だ。夢破れてから、人生だ。

【第一話 奈落】
妻に逃げられホームレスになり、タコ部屋から生活を手にした男(45歳)
【第二話 福島】
3人の連れ子のため、ひたむきに生きる男(52歳)
【第三話 マリアと閻魔】
「路肩に車を止めて、ハンドルを抱えて泣きました」(59歳)
【第四話 「なか」】
不倫している女性を諭し、その場でつき合いを申し込んだ男(56歳)
【第五話 ひとりカラオケ】
「あなたが専業主夫をやってください。私が働きますから」
【第六話 泪橋】
アメリカに渡り、帰国後映画にも出るも結局辞めた甘いマスクの男(52歳)
【第七話 缶コーヒー】
サラリーマン時代、上司の「失敗」をかぶって辞めた、バイク好きな男(52歳)
【第八話 愚か者】
気の優しい、いじめられっ子が持つ誇り(38歳)
【第九話 偶然】
「流し」で稼ぐ玄人(48歳)
【第十話 平成世間師】
石原裕次郎に「タメ口」をきいた男(76歳)
【長いあとがき】

●「第一〇話 平成世間師」より
その若い男は、チケット客だった。予約を受けて府中まで迎えにいくと、胸に白い布で包んだ骨壺を抱えた姿で現れた。納骨にいくから会津磐梯山の麓まで連れていってくれという。府中からは相当な距離である。骨壺を持って電車に乗るのは、はばかられたのかもしれない。
ひとまず郡山まで出てから、猪苗代湖方面に向かう国道四九号線に入ると、猪苗代湖の手前のトンネルに入る直前で、男が車を止めてくれという。紅葉の季節で、道路には無数の落ち葉が敷き詰められていた。
竹内が路肩に車を寄せると、男は骨壺を抱えたまま車を降りて、トンネルの脇にある小道を上がり始めた。小道はちょうどトンネルの真上のあたりまで続いており、そこまで上ると見晴しがきく地形になっているようだった。
男の話では、骨壺に入っているのは、結婚して間もなく亡くなってしまった妻の骨だということだった。それ以上のことを男は話そうとしなかった。
男はトンネルの真上に立って骨壺を頭上に高くかかげると、いきなり大声で叫んだ。その絶叫を竹内は一言一句記憶している。
「おーい、ミナコー。見えるか。見えるかー。ここにふたりでよく来たよな。この景色、一緒によく見たよなー」
男は骨壺を高くかかげたままの姿勢で、しばらく泣いていた。竹内も、トンネルの下でもらい泣きをした。

●[長いあとがき]より
元社長は、分厚いノートをダッシュボードにしまい込むとこう言った。
「旦那、来年はいい年にしましょうよ。がんばってさ、来年こそいい年にしようよ」
「はい。いい年にしましょう」 』

ついでに著者紹介
『 山田清機(やまだ・せいき)
1963年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立』
・・・とあるけど、著者もなかなかではない人生経験の持ち主だ。だからこの「長いあとがき」が重いのだ。成毛さんではないがノンフィクションの面白さである。
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