魔法の弾丸

自己に対する選択毒性

切支丹

2008-08-18 19:52:29 | Weblog
 司祭は足をあげた。足に鈍い重い痛みを感じた。それは形だけのことではなかった。自分は今、自分の生涯の中で最も美しいと思ってきたもの、最も聖らかと信じたもの、最も人間の理想と夢にみたされたものを踏む。この足の痛み。その時、踏むがいいと銅版のあの人は司祭にむかって言った。踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分かつため十字架を背負ったのだ。

沈黙/遠藤周作




読後、何も考えられなかった。

衝撃だった。




信じるとは?





海と毒薬も同様に、著者の作品は非常に重い。

暗く、深く、重い海のように果てしなく。

gaze at

2008-08-17 19:05:43 | Weblog
―いつか「すこやか」になってやる。
「すこやか」を、「まっとう」に置き換えてもいい。

 けれどもそれを「執念じみた」気持ちで呟いている時点で、たぶん方向は少しずつ間違いはじめていた。そうして、間違っていることには気付かないまま―いや、どこかで気付いていたかも知れない。ここでも私は気付かないフリをしただけだったかも知れない―、幼稚な露悪趣味を発揮することでどこか「言い訳」をしているような気になりながら、そうすることによって自分がかつて求めていたものがどんどん遠ざかっていくことも感じながら、あのときからこんなに長い時間が流れてしまった。


「まっとう」であることを、誰が止めたっていうんだよ。誰に頼まれて今の自分をやってるんだよ。おまえは自分で選んで今の自分をやってるんだよ。

私の話/鷺沢萠






自分の心の奥底にある傷から排膿すること。
自分の傷がどこにあるのか、正確な部位を探り当てること。
明晰な意識と判断がなければ、この試みは失敗する。


それは麻酔なしに行なうのと等しく、かなりの激痛を伴う。
心の奥底に存在する汚くて、卑怯で、狡猾な部分を凝視するのだから。




見なくていいものは、見ないという態度では何も学ぶことはない。



きちんと全てを見せ、そこから自分で考えて、選択し、行動することを教えるのが教育の使命だと思います。







バリアーの分子生物学

2008-08-16 10:51:10 | Weblog


「形あるものには機能がある」

月田承一郎




僕が尊敬する生命科学者はともに京大医学部生化学講座の教授だった。



本庶佑      B cellにおけるSHMとCSRを司るAIDの同定

月田承一郎   上皮細胞におけるTJを構成するclaudinの同定




現象の本質を見極め、その原因を分子で捉える。





このような研究をこれから展開していくことを、僕は強く願う。





恋する研究者

2008-08-12 13:13:06 | Weblog
 生物学のいいと思うところは、研究者が対象にどれくらい惚れ込むか、囚われるかによって研究の質の決まること、言い換えると研究は紛れもなく個的であり、その人の表現にほかならないことです。


突き詰めた恋をしたことがあるかどうかの方がむしろ関係があるのです。


ボスを利用するのではなく、ボスから愛されたいという深層心理も情けないことです。熊大生に限らず、マニュアル人間、独立心の希薄なことは今日の若者の一般的気質といわれます。しかし、我が身ひとつ、切実な恋の心なくして生きられない者は必ずいるはずと確信します。

世紀末バブルの中で―日本人であるより人間/相沢慎一






生命科学者たちが語る言葉は、過去の偉大な哲人たちの思想よりも、心の深層まで到達する。




生きるという現象を分子の言葉で理解する。

さらに、生きるということは分子の動態のみにあらずと問題提起する。




抽象から具体へ

具体から、さらなる抽象へ



科学におけるパラダイムシフト



雑多な抗原提示

2008-08-12 08:56:01 | Weblog

Deletional Tolerance Mediated by Extrathymic Aire-Expressing Cells

James M. Gardner,1 Jason J. DeVoss,1 Rachel S. Friedman,2 David J. Wong,3 Ying X. Tan,1 Xuyu Zhou,1 Kellsey P. Johannes,1 Maureen A. Su,1,4 Howard Y. Chang,3 Matthew F. Krummel,2 Mark S. Anderson1*


The prevention of autoimmunity requires the elimination of self-reactive T cells during their development and maturation. The expression of diverse self-antigens by stromal cells in the thymus is essential to this process and depends, in part, on the activity of the autoimmune regulator (Aire) gene. Here we report the identification of extrathymic Aire-expressing cells (eTACs) resident within the secondary lymphoid organs. These stromally derived eTACs express a diverse array of distinct self-antigens and are capable of interacting with and deleting naïve autoreactive T cells. Using two-photon microscopy, we observed stable antigen-specific interactions between eTACs and autoreactive T cells. We propose that such a secondary network of self-antigen–expressing stromal cells may help reinforce immune tolerance by preventing the maturation of autoreactive T cells that escape thymic negative selection.


Science 8 August 2008:
Vol. 321. no. 5890, pp. 843 - 847
DOI: 10.1126/science.1159407