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スケッチ貯金箱

日々描いたマンガやスケッチ、似顔絵などを貯めていく貯金箱のようなブログ。

似顔絵(菅野美穂さん・「坂の上の雲」 正岡律) (portrait MIHO KANNO)

2010-12-13 23:04:43 | 似顔絵
NHKの「坂の上の雲」で、正岡子規の妹役を演じている菅野美穂さん。
病の床に臥す子規の許を訪れた幼馴染み・秋山真之(あきやまさねゆき)に向かって子規は、
自分の無念の心情と、俳句文学への想いを吐露する。
子規の妹で、その介護を一手に引き受けている律(りつ)は、
それを物陰から聞いている。
結核から脊椎カリエスになり、背中の傷口からは
神経が剥き出しになっているような凄まじい状態。
介護といっても、結核の薬も無い時代、
激痛に泣きわめく兄をなだめすかしつつ傷の手当てをする毎日。
苛立つ兄に「木石(ぼくせき)のような女」などと随筆に書かれたり、
介護の他の日常の用事、子規の門人たちの相手、
その目まぐるしい生活は、自分のことなどとても考えられないものだったろう。
しかしその兄は、買い物に出かけた妹をひたすら待つ俳句も読んでくれるのだった。
結局律は、兄を尊敬していたのだろう。
しかし、真之を送る道すがら、律は言うのだ。
「うちはいかん妹なんじゃ。
兄(あに)さん、もう死んでもええよ…心の中でそうつぶやくんじゃ。」
もう十分苦しんだから、短いけど十分濃い人生だったんだから、
もう楽になってもええよ。そう思う妹。
「でも兄さんは、どんなに苦しゅうても、生きようとするんじゃ。」
上の絵に描いたような表情で、律は真之に訴えかけるように言う。
「兄さんは、私の作ったごはんを、残さず食べるんじゃ。」
兄の生きたい気持ち。無念の気持ち。
それを可哀そうで辛く思う自分。その情けなさ。しかし兄を楽にしてあげたい気持ち。
その心の中のせめぎあいを、切なく溢れるその気持ちを、
菅野さんは素晴らしい演技で演じ切った。
日本人は、明治人は、美しかったと思う。