顔を真正面から描くの、けっこう難しいですよね。
バランスの崩れがすぐに目立つし、かといってバランスにこだわってばかりいると表情がおろそかになる。
鼻筋を正面から描くのが難しいという話がありますが、私はこう思うんです。
人は、他人の顔を見るとき、表情にあまり影響しない部分は、無視して見ているのではないかと。
表情にとって重要な要素は何で、不要な要素は何か、描く人間は見分けて取捨選択しなくてはならないのだと。
鼻筋は、顔立ちには影響しても、表情の変化にはあまり参加しない部分です。
だからあえて描かないというのも「あり」だろうということです。
そのまま描くのだったら、デジタル技術には敵いません。
要素の選り好みこそ、人間らしい絵の描き方に通じるのではないでしょうかね。
というわけで、正面から見た絵を一枚。
ちょっと男装の麗人的な感じになった(?)かも。
描いたら、誰かに似ている気がした。
考えたら、若いころの母の面影がするのだと気付いた。
母の少女時代の写真は、残っていない。
しかし以前に見た覚えはある。母が処分してしまったのか。
それとも実家の整理のどさくさで、遺品の中から漏れてしまったのだろうか。
いずれにせよ、写真も物だから、いずれは大方無くなる。
それでも心の中のイメージは、絵の中に顔を出したりするのかもしれない。
記憶の中だけの人が、時折顔を覗かせるということだろうか。