原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

民事訴訟手続~その3

2011-06-21 | 民訴法的内容
先週末は労働法三昧(就業規則改定等),昨日と今日は刑事三昧(接見・証拠開示・弁論要旨起案等)。その合間を縫って,講演会(*もちろん,私が講演するのではありません)の原稿とレジュメ作成。これは,得意中の得意分野です(笑)

さてさて,今日は「その3」。前回,訴状の送達まで来ましたので,今日はその先です。

訴状が相手方に送達されたら,相手方は,答弁書を作成して提出することになります。答弁書は,被告が最初に提出する準備書面です。ここで,「準備書面」とは,口頭弁論において陳述しようとする事項を書面に記載して裁判所及び相手方に通知しておくものです(161)。口頭弁論は,書面で準備することが求められているわけです。一般的に答弁書では,原告の請求の趣旨に対する答弁(「原告の請求を棄却する」との判決を求める,といった内容),請求原因に対する認否,被告の主張,などが記載されます。管轄違いの抗弁など本案前の答弁があれば,それも記載します。管轄違いの抗弁については,本案につき弁論をし,又は弁論準備手続で申述した時には応訴管轄が生じてしまいますので(12・13Ⅰ),ここで主張しておかなくてはなりません。二重起訴に触れるなど,訴え却下の申立てについては,(訴訟政策的・公益的判断なので)訴訟要件の存否は原則として職権調査事項であり被告の主張は要しないものの,職権発動を促す意味で記載されます。「訴訟要件の判断は職権調査事項であり被告の主張は要しない」というのは短答で出しやすいので,押さえておいてください。なお,答弁書での認否の対象は,主要事実です。何のために認否をするかというと,要は,争点を絞り込むためです。被告として争わない(≒自白する)のはどこなのか,どこを争うのか,そういった部分をあぶり出すものです。主要事実・間接事実・補助事実,自白した場合,いずれも不要証効(179)はあります。ただ,拘束力(弁論主義の第2テーゼ)があるのは主要事実であり,そして,訴訟で審理するのは主要事実の存否ですから,主要事実が認否の対象となります。もっとも,そうは言っても,裁判所に自らの主張をよく理解してもらうために,間接事実や補助事実についても(一般的に)認否がなされ,それが望ましいとされています。

答弁書が出て,それを口頭弁論で陳述して(口頭弁論に)顕出したら,原告はそれに対する反論として,(次回口頭弁論期日までに)原告第1準備書面を提出し,被告はそれへの反論として,被告第1準備書面,さらに,原告第2準備書面,被告第2準備書面…,と続きます。口頭主義・直接主義が原則ではありますが,実際には,裁判官はこの準備書面を熟読して検討するので,非常に重要な意味を持ちます。口頭でばーっと主張されてもよくわからないですからね。

さて,答弁書が出された場合の効果については,しっかりと確認しておく必要があります。最初の口頭弁論に被告が出頭しない場合でも,その答弁書の記載事項は陳述したものとみなされます(陳述擬制)。第2回目以降の口頭弁論期日にはこれは認められないですね(158)。もっとも,簡易裁判所では,第2回口頭弁論期日以降も擬制陳述がされることは押さえてください(擬制陳述の拡張,277)。また,答弁書を含む準備書面に記載しない事項は,相手方が在廷しない場合には主張できないことも併せて確認を(161Ⅲ)。

では,今日はこの辺で。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿