原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

民事訴訟手続~その1

2011-06-15 | 民訴法的内容
昨日,現代の悲劇ともいえる,携帯電話破損による(一部)データの消失という事態に見舞われ,そんなこんなで更新する暇がございませんでした(涙)一部だったので,まだマシだったのですが…。

今日は,先生の顧問先の会社へ。就業規則改定の打ち合わせ。詳しい話はもちろんできませんが,合理性が認められるか,司法試験に出てもおかしくないレベル。私もかなり意見を求められ,修正案の提案もして参りました。

さて,今日は表題の話を。今年の問題を見るに,刑訴のみならず民訴も実務的な手続の理解を試す問題が増えた傾向にありますので。

民事訴訟手続のスタートは,まず訴状の提出からです。例外は有名ですね,簡裁では訴状によらず口頭で訴え提起が可能です(271・273)。とは言っても,実際に口頭で訴えが提起されるのは極めて稀です。簡裁には,本人でも簡単に作成できる訴状の書式例があるので,それが使われるケースがほとんどであると思います。

さて,訴え提起の効果として,ご存知の通り,時効が中断します(民法149)。起訴前の和解(即決和解)の申立て,支払督促の申立ては,その手続が訴訟手続に移行するときは申立時に遡って訴え提起があったものとみなされます(275・395)。「申立時に遡って訴え提起があったとみなされる」という規定は,時効との関係で意味を持ちます。

では,この申立て→訴訟手続への移行の際にやっぱり訴状を出さなくてはいけないのか?申立書を訴状に代えることができるのか?

答えは…,どちらも×。というか,両者の真ん中くらいが正解。訴状は出さないものの,申立書を流用することはできず,「訴状に代わる準備書面」というものを提出します。この「訴状に代わる申立書」,労働審判なんかの審判手続から訴訟手続への移行の時(例えば,労働審判法24条で審判を打ち切って訴訟手続へ移行するとき)なども同じです。申立てを流用できないのは,考えればわかるところでしょうか。訴状って,そりゃやっぱり厳格なものです。必要的記載事項もきっちり規定されています。申立書はもう少しラフなものですから,やっぱりそれをもって訴状として流用することは認められないのでしょう。

話がやや脇道にそれたので,元の,訴状の話に戻します。訴状には何を書くのか?必要的記載事項は,「当事者及び法定代理人」と「請求の趣旨及び原因」ですね(133Ⅱ)。「訴訟代理人」は必要的記載事項ではありません。法定代理人(親など)は,ほとんど本人の身代り的立場。だから,話を聞くのも本人尋問の手続です(211)。訴訟代理人は,そういうことはありません。あくまでも第三者。

訴状に不備があれば,補正命令の対象になります。これは,「裁判長」が主体です(137Ⅰ)。補正命令・訴状却下の対象になるのは,必要的記載事項に関する不備です。その他は,対象になりません。まぁ,実際のところはちゃんと直してもらうのですが。

では,短答肢風に。

「訴状は,簡潔・明瞭に書かれるべきなので,最小限の事項に絞って書くべきである。つまり,いわゆる要件事実・主要事実以外の記載はしてはならない」

×ですね。請求を理由づける事実,いわゆる重要な間接事実の記載が求められます(規則53Ⅰ)。

それから,あと,訴状には添付する書類があります。まず,訴状の副本です。何に使うのかといえば,被告に送達するためです(規則58Ⅰ)。被告の数だけ必要です。被告が3人なら3通。裁判所がコピーとって送ってくれればいいじゃないか,とも思うかもしれませんが,そういうことはダメ。あとは,甲号証(原告が出す証拠)の写し(規則55Ⅱ)。それから,一定の訴訟類型では,特別に添付が求められる書類があります。不動産にかんする事件では登記事項証明書,手形・小切手に関する訴訟では手形・小切手の写し,です(規則55Ⅰ)。ここは,特別に添付が要求される訴訟類型もある,という押え方でいいでしょう。

手形・小切手に関する訴訟の話になったので,ついでに確認。手形・小切手に関する訴訟は,もちろん,通常の手続で審理をすることもできますが,簡易迅速な手続である手形・小切手訴訟(350以下)によることもできます。原告がどちらの手続でやりたいのかを明らかにするために,手形・小切手訴訟による手続を希望する場合には,「手形訴訟による審理及び判決を求める」と訴状に記載しなくてはなりません(350Ⅱ)。

今日はこの辺で。続きは,また書きます。

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