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(BL小説)風のゆくえには~同窓会…でもその前に

2016年06月24日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

前半若干の性描写がありますが、R指定するほどじゃないと判断したため、短編カテゴリーに入れました。
この程度なら大丈夫ですよね? 大丈夫じゃないです?^^;



<登場人物・あらすじ>

渋谷慶……研修医一年目。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。
桜井浩介……高校教師4年目。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。


高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。

それから8年4か月。
慶は4月から社員寮で一人暮らしをはじめ、浩介は以前から住んでいるアパートで一人暮らしを続けている。
2000年4月下旬の日曜日、高2の時の同窓会に二人で出席することになり……





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『風のゆくえには~同窓会…でもその前に』(浩介視点)




「お帰りなさいませ」

 玄関で三つ指ついて出迎えると、慶は一瞬呆気にとられた顔をして、それからゲラゲラ笑いはじめた。

「お前、何やってんだよー」
「新婚さんゴッコ」

 真面目に答えて、慶のカバンを受けとる。今日は日曜日だけれど、慶は仕事だったので、合鍵で中に入って掃除をしながら待っていたのだ。
 
「お仕事お疲れ様でございます。お風呂になさいますか? ご飯になさいますか? それとも……」
「……って、こら」
「ぐえっ」

 抱き寄せようとしたところ、容赦なく足で腹のあたりを押しかえされた。

「ひどいー暴力亭主ー」
「あほか」

 慶は呆れたように言うと洗面台に手を洗いに行ってしまった。

「もーノリ悪いなー」
「ノってどうすんだよ。もう行く時間だろ」
「まだ30分あるよ」
「30分しか、だ」

 今日は高校2年生の時のクラス会がある。
 前回は『全員ハタチになった記念同窓会』だった。あれから5年……

「今年は結婚する人多いらしいよ。ミレニアム婚ってやつ」
「ふーん?」

 着替えるためにクローゼットの前に立った慶の後ろで、ぶつぶつ言い続ける。

「それに影響されて、慶にちょっかい出す女子が多そうでやだなー」
「なんだそりゃ」
「だって前回だってさ……」

 そう。前回は、慶があまりにも女子にまとわりつかれていることにムカついて、途中でトイレに連れ込んだんだよな………

「今回もそんなことになったら……」
「ならねーよ」
「なるよ絶対」
「ならねーよ。うるせーな」

 ばさりとシャツを脱いだ慶。惜しげもなくさらけ出された鍛えぬかれた完璧な背中……
 我慢できなくて、つーっと指で辿ると、慶がのけぞった。

「ちょっ、浩……っ」
「ん?」
「なにして……っ」
「トイレですることになる前にしておこうかと」
「ばかお前っ」

 文句を聞き流して、肩から腰にかけて唇を這わせていく。

「時間……っ」
「じゃ、しないから。抜くだけ。ね?」
「ね、じゃねーよ変態……っ」

 悪態をつきながらも抵抗の手の力は極々弱め。本気で嫌な時は本気で蹴ってくるので、これはオッケーということだ。

(やった♪)

 体の位置を入れかえて、キスをしながらベッドに押し倒す。耳から首をたどり、鎖骨に歯を立てて吸い付く。

「んんっ、ばかお前、そんな強くしたら跡が……っ」
「うん。わざと。マーキングしてるの」
「ばか、やめろって」
「やめなーい」

 しつこく吸い付きながら、ズボンを脱がすと、ぴょこんと慶のものが飛び出てきた。

(やめろ、なんて言いながらこの状態……)

 ああ、ホント、可愛すぎる。

「慶、可愛い」
「うるせーばか」

 真っ赤になった慶。なんでこんなにいつまでも可愛いんだろう。ずっとずっと変わらない。

「可愛い可愛い可愛すぎるっ」
「だからうるせーって……、んんんっ」

 舌を絡めるキスをしながら、扱きはじめると、合間の息が甘いものに変わっていく。
 ああ、たまらない………

「浩介……」
「……っ」

 ふいに慶の細い指が、半分だけファスナーを開けておれのものを取りだしたので、息が止まりそうになってしまった。亀頭を指で撫でられ焦ってしまう。このままじゃ……っ

「慶、待って……っ。汚れちゃう……っ」
「知ったこっちゃねえなあ」
「わーっ意地悪ーっ」

 大袈裟に文句を言うと、慶が笑って一端手を離した。その隙に慌ててズボンを脱ぐ。なんとか汚れてない。ギリギリセーフだ。

「上も脱げよ。汚れるぞ?」
「うん」

 笑いまじりの言葉に素直にうなずいてワイシャツも脱ぐ。

「浩介」
「ん」

 おいで、というように手を広げてくれた慶をぎゅうっと抱きしめる。素肌の触れ合いが気持ちいい。

「慶……大好き」
 慶の首筋に顔を埋めながら、再び印をつける。

(同窓会で変な虫が寄ってこないように……)

 慶はおれのもの。慶はおれのもの。
 呪文を唱えながら跡をつける……


***


 同窓会の会場であるイタリアンレストランには、時間ギリギリに到着した。店を貸し切りにしての立食パーティー形式らしい。明るい店内には懐かしい顔ぶれがわんさかいる。

「きゃー渋谷くーん」
「お医者さんになったんでしょー?」
「え、あ、まあ……」

 案の定、着いた早々に慶が女子達に連れ去られてしまった。

(やっぱりじゃん……)

 はああああ……と大きくため息をついたところで、

「桜井!おせーよ!」
「わ、溝部。久しぶり」

 変わらない大きな声。卒業後も何度か会ってはいるけれど、最後に会ったのはもう一年以上も前だ。

「久しぶり」
「山崎」

 あいかわらず控え目な感じで、山崎が溝部の後ろから顔を出した。

 なんだかみんな、社会人の雰囲気になったな……

「一年ぶりだよな」
「なかなかこういう機会がないと集まれないよね」

 3人でうんうんうなずいていたところ、

「酔っぱらう前に会費払ってくれ」
「委員長!」

 ビックリするくらい変わっていない委員長が名簿を片手にやってきた。

「委員長、幹事ありがとうね」
「いや。やるって約束したからな」

 お金を渡しながら言うと、あっさりと何でもないことのように委員長に言われた。こういうところも委員長らしい。変わってない。

「渋谷は……」
「代田さん達に連れ去られた」

 ムッとして答えると、委員長は「ああ……」とうなずき、

「代田達、さっきまで渋谷はいつ来るんだってうるさかったもんなあ。じゃああとで……」
「ダメダメダメダメ!」

 溝部が「冗談じゃねーよ!」と、がなりたてた。

「桜井、お前、渋谷のとこいって、金払いにこいってここに連れてこいよ」
「あ、うん」

 それはもう。言われなくても行くつもりだった。けれども。

「それで渋谷を餌に女子を集めるんだ」
「は?」
「代田達じゃなくて……」

 溝部の視線の先には、鈴木さんと小松さん。溝部、まだ鈴木さんのこと気になるのか……。

 溝部はバシバシと山崎の腕を叩くと、

「なあ、山崎。お前もあの彼女と別れたんだろ? 次行こうぜ次」
「え」

 あっさりと言う溝部の言葉に驚いてしまう。

「山崎、別れちゃったの? 職場の同僚の子だったよね?」

 一年前の記憶を呼び起こして山崎を振り返ると、山崎は苦笑ぎみに首を振った。

「オレ、しばらく女はいいよ……」
「なにいってんだよ! 失恋の傷を癒すには新しい恋! それ一番! だからさっさと渋谷連れてこい桜井!」
「んーなんか色々変だけど、まあいいか……」

 クラスの派手目グループだった代田さん達よりは、真面目グループだった鈴木さん小松さんの方がマシだしな……

 そんなことを考えながら、すれ違う懐かしい面々に挨拶しつつ、代田さん達に取り囲まれている慶の元にいき、

「慶」
 とんとんっと肩を叩いて振り向かせると、慶はあきらかに「しまった」って顔になった。

(ほら、だから言ったでしょっ)
(しょうがねーだろー)

 そんな会話を目でしてから、代田さん達にも聞こえる大きい声で言う。

「会費先払いだって。あっちで集金してるよ」
「あ、悪い。すぐ行く」
「えー行っちゃうのー?」
「ごめん、また」

 代田さん達五人に手をふり、そそくさとその場を離れる。

「……慶?」

 その直後に、慶がおれの腰に手を回してきた。人目があるのに珍しい。びっくりして慶をみると、気マズイという顔で慶がこちらを見上げていた。

「……なあ、浩介」
「別に怒ってないよ」

 ポンポンと頭をなでると、ホッとしたように慶が笑った。

「良かった。また便所に連れこまれちゃたまんねーからな」
「んんん? 連れこんで欲しい?」
「バカ言うなっ」
「えー」

 イーッとした慶の耳元にすっと顔を近づけて、低くささやく。

「しよっか?」
「………」

 途端に慶がドバっと赤面した。可愛い!! ……と、

「痛い痛い痛いっ」
 腰に回された手がグーに変わってグリグリ押してくるから、たまらず悲鳴をあげた。

「暴力亭主!暴力亭主!」
「うるせー!変なこと言うからだっ」

 わあわあ言いながら溝部達のところにたどり着くと、輪の中に溝部、山崎、委員長の他に、バスケ部だった斉藤も加わっていた。

「お前らあいかわらずイチャついてるな」
「そんなんだから彼女できねーんだよ」
「うるせーほっとけ」

 昔と変わらないやりとりが勃発しそうになったところで、

「だから二人も合コンのつもりで来てよ」

 はい、と斉藤にニコニコとハガキを渡された。綺麗な花の枠で彩られた往復ハガキ……

「結婚……?」
「披露パーティー?」

 文面を読んで「え!?」と二人で叫んでしまう。

「斉藤、結婚するの!?」
「うわっマジかっ! おれ直接の友達で初めて!!」
「おれもおれも!」

 わ~と言うと、横にいた委員長が真面目な顔をして訂正してきた。

「いや、さっきも言ったけど、うちのクラス、もうすでに既婚者3人いるからな」
「え!?誰!?」

 思わずキョロキョロしてしまう。その視界の端に、仏頂面の溝部……。

(溝部……?)

 あ、まさか………

「もしかして、鈴木さん?」
「ああ、正解」

 うわ、溝部、かわいそうに……
 そんなこと知らない委員長が淡々と続ける。

「それと井上と吉田。井上は旦那さんの転勤で北海道に住んでるから欠席。吉田は子供が生まれたばかりだから欠席」
「こ、子供……っっ」

 考えてみたら、みんな今年26歳になるんだ。当然といえば当然……

「ミレニアムベビーだな」
「おお、いいな。ミレニアムベビー」

 食いついた斉藤に溝部がボソボソと言う。

「お前だってミレニアム婚じゃねーかよ。流行りに乗りやがって……」
「流行りに乗ったつもりはないけどな」

 斉藤が苦笑気味に言う。

「付き合って5年だし、彼女今年で29だし、まあケジメってやつだよ」
「へええええ……」

 昔からなんでもそつなくこなしていた印象のある斉藤。結婚までもトントン拍子にすすめるんだなあ。なんだか急に大人びて見える……

「おめでとう、斉藤」
「おめでとう」

 おれと慶が交互に言うと、斉藤は照れたように「ありがとう」と小さく言った。その幸せそうな微笑みが羨ましくて、慶を盗み見ると、慶もおれのことを見てくれていて……

「慶、おれ達も幸せになろうね」

 我慢できずに人目も気にせず言うと、慶は一瞬詰まってから、

「そうだな」
 こっくりとうなずき、言葉を継いだ。 

「幸せになろうな」
「え」

 こんな人前で言ってくれるなんて……っ

「慶~~~~っ」
「うわっやめろっ」

 ギューギュー抱きしめて、「バカやめろ」と押しのけられたりしていたところ、

「よし!」
「わっ」

 いきなり溝部が大きな声で叫んだので二人で固まってしまった。

「な、なに?」
「そうだな! オレ達も幸せになろう!」
「はい?」

 なんだなんだ?

「委員長! 今フリーな子って誰だ?!」
「フリーかどうかは知らんが……」

 委員長は名簿を見返しながら、ふむ、と肯くと、

「逆に、新井、柏倉の2人は近々結婚するらしい」
「くそーっどいつもこいつもミレニアム婚かよっ」

 溝部がブツブツ言いながら「えーと、えーと……」と見渡していると、

「委員長~、ごめん、今着いたー会費払うー」
「あ、渋谷くんだ!」
「わあ桜井くん。懐かしー」

 わらわらわらと、女子達が集まりはじめた。

「え、何何? 斉藤君結婚するの?」
「きゃーおめでとーいいなー!」
「ねえねえ渋谷君は? そういう予定あるの?」
「医学部卒業したんでしょ? どこの病院に勤めてるの?」

 女子達の黄色い声。あいかわらずだ。あっという間に慶が取り囲まれてしまった。高校時代と変わらない。
 懐かしさにクラクラしそうになったところで、後ろからつんつんとつつかれた。溝部だ。

「桜井。お前何とかしろ」
「何とかって……」

 何とかできるならおれだって何とかしたい。慶はおれのものなのに、みんな図々しすぎるんだ。

(おれのものなのに。おれのものなのに……って、そうだ)

 いいこと思いついた。

「慶、ジャケット脱ごっか。暑くなってきたでしょ」
「え?」

 女子と話している慶から強制的にジャケットを剥ぐ。そして第一ボタンだけ開いていたシャツのボタンをすばやくあと二つ外し、鎖骨が見えるまではだけさせると、慶の美しい白い肌につけられた赤い印が、明るい照明の下でくっきりと映しだされた。

「………あ」
 慶の目の前にいた後藤さんがサッと顔を赤らめ、隣の女子にコソコソと耳打ちをし始めた。

「え、何?」
「あの……」

 それが伝染していき、微妙な空気が流れはじめたところで、慶に「飲み物取りに行こう」と誘ってその場を離れた。
 その途端、

「見た見た?! あれってさあ……」
「ちょっとちょっと、溝部君!」
「ねえ、渋谷君って……」

 きゃあああっとさっきと違う黄色い声があがって盛り上がり始めている。溝部が嬉しそうに女子と話しているのを、飲み物がもらえるカウンターの場所から見ながら、慶が首を傾げた。

「あいつら何盛り上がってんだ?」
「さあ? なんだろうね?」

 一緒に首をかしげながらも内心冷や冷やだ。

 これ、慶に知られたら確実に蹴り飛ばされる……


 その後もおれは慶の横にぴったりくっついて慶をガードしていたため、女子には鬱陶しがられたけれど、知ったことではない。



「じゃあ、次は斉藤の結婚式の二次会で!」
「またなー」

 懐かしい面々に手を振って、慶と二人で終電に乗りこむ。今日はこのまま慶の部屋に泊まりにいく約束なのだ。

「ケジメ、かあ……斉藤らしいというかなんというか」
「だね」

 二人でうんうん肯き合う。終電はほどよく混んでいて密着していても不自然じゃないから嬉しい。

「慶……」
「ん?」

 混雑に紛れて、慶の腰に回した手にぐっと力をこめる。

「おれ達も幸せになろうね?」
「………」

 ちょっと笑って、慶がこつんとおれの肩に額をくっつけてくれた。

 ああ。幸せだ……。こんな日がずっと続けばいい。ずっと、ずっと。 
 

 




---------------


お読みくださりありがとうございました!

ちなみに、前回の同窓会のお話は『R18・同窓会にて』になります。
そして、直近の同窓会が『カミングアウト・同窓会編』になります。

次回はその直近の同窓会の後の話を書けたらいいなあと思っております。もしお時間ございましたら、どうぞよろしくお願いいたします!!


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