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(BL小説)風のゆくえには~永遠のはじまり

2016年04月28日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

<浩介視点・4月26日>


 慶の誕生日は4月28日。今日は26日火曜日。慶はあと2日で42歳になる。

 火曜日が休みの慶に合わせて、おれも午後休みを取って、一緒に誕生日のプレゼントを買いにいくことにした。プレゼントは前から決めてあった。それは……眼鏡。

「くそー……屈辱……」
 慶が悔しそうに言うのがおかしくてケタケタ笑っていたら、「笑うなっ」と蹴られた。

 ここは都内にある眼鏡店。その店頭で「とにかく一回かけてみて」と無理矢理慶に眼鏡をかけさせたところ、あまりにもくっきり見えるようになったらしく、悔しくてしょうがないらしい。

 それもそのはず。その眼鏡というのは……リーディンググラス。つまり、老眼鏡。

「なんで40そこそこで老眼……」
「慶、目がいいからねえ。目が良い人って老眼くるの早いとかいうよね? うちの学校でまだ39なのに使ってる先生もやっぱり目いいんだよね」
「お前だって悪くないだろ」
「悪くはないけど良くもないよ。眼鏡も一応持ってるじゃん」
「でもなー……」

 今年のお正月くらいから、慶が「小さい字が読みにくい」と言いはじめた。はじめは疲れ目なのかと思っていたけれど、どうもそうではないようで、「これ8?いや6か?」とかしょっちゅう言っている。

「あー慶、眼鏡似合うねえ。ちょっと大人っぽく見える」
「おれはとっくに大人だ!」

 ぷんぷん怒っている慶。まるで子供。可愛すぎる。

 店頭で話していたら、店員さんが出てきてくれた。30代前半くらいの結構美人。やたらと愛想がいいのは元々なのか、慶がイケメンだからなのか分からない。防御策として、わざと目の前で「仏頂面しないの」と言って慶の頬を触ったり、お揃いの結婚指輪が目に入るようにしていたら、察してくれた。さすが新宿というべきか。

 なんでもいい、という慶にいくつもかけさせて、美人店員とおれとで選んだのは、黒縁の眼鏡。とても老眼鏡には見えない。オシャレ!

 タイミング良くすぐに検診もしてもらえて、在庫もあったため40分ほどで出来上がるといわれた。

「お買い物に行かれても、ここでお待ちいただいても、どちらでも」
 美人店員に言われて、遠慮なくここで待たせてもらうことにする。40分なんて慶と一緒にいたらすぐに過ぎてしまう。


 カウンターの隅に二人で並んで座って、とりとめもない話をしている最中、そこに置いてあった卓上カレンダーを見ていたら、ふと思いだした。

「今年、5月10日火曜日なんだよね。おれこの日も早退するから、どっかおいしいもの食べに行こうね?」
「5月10日……は、なんだっけ?」
「だーかーらー」

 この人、本当に全然覚えてない。

「5月10日は高校入学して初めておれたちが話した日!」
「あー、そっかそっか。そうだったな」
「もー!」

 ふくれてみせると、慶は「まあまあ」と手を振り、

「お前ホントよく覚えてるよな」
「覚えてるよ! 本当はもっと色々あるけど言うの我慢してるんだからねっ」
「色々?」

 首をかしげた慶に人差し指を立ててみせる。

「うん。例えば……、昨日は初めてって、痛っ!」

 無言で蹴られた。

「あ、慶も覚えてた?」
「覚えてねえよっ」

 慶、顔真っ赤。これは覚えてるな……
 そう。昨日はおれ達が初めて一つになった日。あれから何度体を重ねただろう……。

 意識がふわ~っと浮いていきそうになったところで、

「あ、5月10日って……2週間後?」
「え?」

 誤魔化すためのようにジッと卓上カレンダーを見ていた慶の声に引き戻された。

「うん。そうだね。ちょうど今日から2週間後だね」
「へえ……じゃあ、今日だ」
「え?何が?」

 おれが聞くと、慶はニヤッと笑った。

「さあ、何がだろうな」
「えええっ」

 何かあったっけ?! えーとえーとえーと……
 5月10日は高校入学後、初めて話した日。あの時、おれはバスケの自主練をしていて、それで……
 ぐるぐるぐるぐるっと26年前あたりのことを思いだす。

「あ」
 そうか……もしかして。

「もしかして、慶が、おれのこと体育館で初めて見た日?」
「正解。さすが」

 おおおっと慶が小さく拍手をしてくれる。

 そう、前に聞いたことがある。おれと体育館で初めて話した日、よりも前に、おれがシュート練習をしているのを見たことがある、と。その一生懸命さを羨ましいと思った、と。でも、おれが一生懸命だったのは、中学の時に見た憧れの『渋谷慶』のようになりたかったからだ。そう思うと、やっぱりおれ達は出会うべくして出会い、惹かれあったのだと思う。

「おれにとっては、今日がはじまりの日、だな」
「慶……」

 あれから26年……色々なことがあった。高校時代の自分は本当に子供だったと思うけれど、じゃあ今、その時と何が違うのかと問われれば、中身はたいして変わっていない気もする。


 慶ははあっと大きくため息をつくと、

「まさかあの時にみた、下手っくそなバスケ部員と一緒に老眼鏡を買いに来る日がくるとは……」
「あはは」

 慶の言葉に笑ってしまう。

「それを言うなら、おれだって。中3の時に偶然見た、キラキラ眩しいバスケ部員の男子が、老眼鏡をかける日がくるとは……」
「くっそー……」

 慶はブツブツ言いながら頬杖をついた。

「お前だってそのうちくるんだからなー老眼」
「そうだねえ」

 ふと、先日実家に帰ったときに両親と話したことを思いだす。

「父に聞いたら、父は50になってから作ったって。おれの中で父って眼鏡かけてる印象だったんだけど、あれ、遠近両用だったんだってさ」
「今、お父さん、眼鏡かけてないよな」
「うん。仕事やめてから、老眼鏡だけにしたんだって」
「お母さんは?」
「まだ老眼きてないって言い張ってる」
「あはは。すげーな」

 昔と決定的に違うのは、こうして普通に両親の話をしていること。両親とこんな穏やかな関係になれるなんて夢にも思わなかった。それもこれも、すべて慶がいてくれたおかげだ。慶が世界を変えてくれた。

 そんな昔と今に思いを馳せていたところ、

「渋谷様、おまたせいたしました」
 美人店員が商品をもってやってきた。促されて慶が試しにかける。やっぱりかっこいい!

「慶、かけて帰ったら?!」
「バカ言うな。こんなのかけて歩いたら酔っちまう。視界がぼやけてて」
「あ、そうなんだ……」

 そうか。近い物みるの専用の眼鏡なんだもんな。せっかく似合うのにもったいない……。

 美人店員がニコニコと伝票を差し出してきた。

「お会計は……」
「あ、おれが。カード切ります」

 クレジットカードを取りだすと、美人店員が「やっぱり」と小さくいって更に笑顔になった。

「お誕生日プレゼント、ですね?」
「あ……はい」

 カルテを見て、慶の誕生日が明後日だと気が付いたのだろう。

「おめでとうございます」
「もう、おめでとうって歳でもないんですけどね」

 慶が苦笑すると、美人店員は「いえいえ」と手を振って、

「お幸せですね。こうしてプレゼントくれる方がいらっしゃることも、プレゼントをする方がいらっしゃることも。羨ましいです」
「…………」

 思わず顔を見合わせる。

(お幸せですね)

 本当だ。本当に幸せだな、おれ達……



 その後、ケーキを買って帰った。慶が前から食べてみたいと言っていた店のケーキだ。

 帰宅後、ソファーに並んで座り、さっそくケーキを取りだして、その美しいフォルムに感動する。

「うまそー」
「食べるのもったいないくらいキレイだねえ」

 チョコレートのコーティングがキラキラ輝いている。今日の日にふさわしいケーキだ。

「誕生日には二日早いけどな」
「ああ、違う違う」

 慶の言葉にブンブン手を振って否定する。

「誕生日はまた別。これは今日の記念日ケーキね」
「記念日?」

 首をかしげた慶に、うんうん肯く。

「はじまりの日記念日、でしょ?」
「ああ……」

 ちょっと照れたようにうつむいた慶がとてつもなく可愛い。

「そうだな。あの日からはじまったんだもんなあ……」
「うん」

 そして長い年月、一緒にいた。これからも一緒にいる。

「これからもずっと、一緒にいような?」
「うん。ずっと……永遠に」

 真面目にいったのに、慶に吹き出された。

「永遠に、か。なんか大袈裟だな」
「えーいいじゃん。大袈裟でも」
「……そうだな」

 慶がふっと笑って、軽く唇を合わせてくれた。

「じゃあ、今日は、永遠のはじまりの日記念日、だ」
「うん」

 再び唇を合わせる。愛おしさが伝わってくる。

 過去も現在も未来も、いつでも、慶の隣にはおれがいておれの隣には慶がいる。

 永遠に。永遠に一緒にいる。






<慶視点・4月28日>


 朝起きたら、隣で寝ていたはずの浩介がいなかった。

「…………こーすけ」
 布団にくるまったまま、不安になって小さく呟く。浩介が先に起き出していることなんて珍しくないのに、なんだか心がざわざわするのは、きっと雨のせいだ。
 
 雨は嫌いだ。特に春の雨にはいい思い出がない。
 古くは高校二年生の連休明け、雨の中、初めて浩介が美幸さんと並んで歩く姿をみた。いまだに思い出してはムカついてるおれは相当に執念深い。

 そして最大の最悪の雨の思い出は、13年前の4月初め。浩介が日本を離れるという話をしにきた夜の翌朝の雨だ。

『自分の可能性を試したい』

 そんなカッコいいことを言って、おれを置いて3年間日本を離れた浩介。
 本当は、その理由の他に、親の束縛から逃れたかった、とか、おれに対する執着心が異常なものになっていた、とか、色々な理由があったということは後になってから知った。

 あの頃のおれは、医師になって4年目に入り、ようやく自分一人で判断させてもらえることが増えてきた時期で、一人前になるために必死だった。だから『可能性を試したい』といった浩介の気持ちが分からないでもなくて、最終的には浩介の背中を押したのだ。
 あの時の3年は忙しすぎてあっという間に過ぎ去ったし、浩介のためにもあの3年はあるべくしてあったのだとは思う。

 でも。

 今、また、3年離れ離れになれ、といわれたら、もう無理だ。おれは生きていけない。

 だから、こうして雨が降っていると、あの時のことを思い出して、ストーンと体が落ちていくような感覚にとらわれることがある。また置いていかれたらどうしよう、と、どこまでも落ちていく感覚に恐怖する。でも。

「ま……そうなったら今度は追いかけていくけどな」

 思わず一人ごちる。今度は見送ったりしない。どこまででも追いかけていってつかまえてやる。
 だから、だから浩介。ずっとずっと一緒に……



「慶? 起きてる?」
「……………」

 ひょいっと顔をのぞかせた浩介の姿に安堵する、と同時に無性に腹が立ってきた。

「どうかしたの……って、わあっ」

 ベッドに近づいてきた浩介の腕を思いっきり引っ張り、布団の中に引きずりこむ。悲鳴をあげた浩介の頭をぎゅうううっと抱きしめる。

「…………どうしたの?」
「どうしたの、じゃねーよ。なに先起きてんだよ。なんでおれが起きた時いねえんだよ」
「えええっだってもう6時45分だよ? 朝ごはん……」

 腕から出ていこうとする浩介を再び羽交い締めにして、耳元でささやく。

「朝食の前にお前食わせろ」
「えええっ」

 浩介のわたわたが大きくなる。

「無理無理無理っ時間ないって!」
「時間は作るものだぞ」
「そんなっ、だいたい、昨日の夜したばっかりじゃん!」
「5時間も前の話だ」
「5時間もって………んん……」

 文句を言っている口をふさいで、舌を絡めとると、あっという間に甘い息遣いに変わった。浩介の下半身に手を伸ばすと、もうすでに十分な固さにまで成長しつつあって、思わずニヤリとしてしまう。

「よし。すぐすむからじっとしてろ」
「もう、慶……」

 浩介の文句を聞き流し、さっさと自分の下着とパジャマの下だけ脱いで、浩介の下着も引き下ろす。

「その誘い方、ほんとムードなさすぎ……」

 はあ……とため息をついた割には、浩介のものはすっかりやる気でそり返っている。そのそり返ったものにべったりとジェルを塗ると、浩介が小さく喘いだ。たまらない。早くほしい。

「ムードあってもなくてもやるこた一緒だ。いただきまーす」
「あ……慶、そんな急に……っ」

 ゆっくりゆっくり腰を落としていく。

「慶……っ」
「んん……っ」

 一つになり、背中に回された手に力をこめられ、おれはようやく安心する。

 今、浩介はおれと一緒にいる………



**

 いつもは7時15分に家を出るのに、もう20分になろうとしている。朝食も食べ損ねた。だって、おれはさっさと終わらそうとしたのに、浩介が……

「わあっもう間に合わないーっ」

 半泣きで浩介が言うのに、「大丈夫大丈夫」と背中をたたいてやる。

「ちょっと走れば間に合うって。荷物持ってやるから」
「うう……ありがと。あ、慶、これ、一口アンパン!」
「お、サンキュー」

 お互いアンパンを頬張り、ドアを開けようとしたところで、

「慶、慶!」
「あ?」

 呼ばれて振り返ると、ちゅっと軽くキスされた。浩介がニッコニコで言う。

「お誕生日おめでとう!」
「……深夜0時過ぎに聞いたぞ?」

 言うと、浩介は首をふった。

「本当のおめでとうは今だよ? 慶が生まれたの朝の7時21分だってお母さん言ってたじゃん」
「そうだっけ?」
「うん。そうだよ? おめでとう、慶」

 もう一度キスをしてくれる浩介。

「生まれてきてくれてありがとう。おれと出会ってくれてありがとう」
「…………」

 …………。可愛い過ぎだろ。
 くそ、時間があったらこの場で押し倒してやるところだ。でも時間がないっ。

「浩介」

 もう一回、ぎゅううっと抱きしめあってから、玄関を開ける。

「行くぞ」

 雨の匂い。雨の音。でも、あの時とは違う。

 おれ達は二度と離れることはない。
 永遠に。




---------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!

おかげさまで無事にここまでたどり着くことができました。
今から25年前、当時高校2年生だった私の頭の中に突然現れた、慶と浩介。
その二人のことをこうして私以外の方に知っていただけたことが、どれほど嬉しいことか………感謝してもしてもしたりません。

とりあえず、この二人の物語を書くことは今日で休止いたしますが、でも、二人は今日の読み切りのような、何もない平凡な日々を送り続けています。(今、ちょうど駅に向かって走っているところです!)
いつかまたその日常を切り取りたくなったら、このブログに帰ってこようと思います。
今まで本当に本当にありがとうございました!

(→……すみません。早々に帰ってきてしまいました。亀更新になりますが再開しております。どうぞよろしくお願いいたします。(5月11日))


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BL小説・風のゆくえには~その瞳に3*R18 ・完

2016年04月27日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  その瞳に*R18

 真木さんの声が頭の中でグルグル回っている。

『今日の夜、慶君と約束してるんだよ。俺が今滞在してるホテルの部屋に招待したら、喜んで行く!って言ってね』
『今夜は楽しい夜になりそうだなあ。慶君も期待してるだろうから応えてあげるけど、いいよね?』

 慶と真木さんが、そういうことするってこと……?

『後からみっともなく騒いで慶君を困らせたりしないようにね。人間引き際が肝心だよ』

 引き際? 引き際……。おれは引かないといけないのか……?



「ちょっと、大丈夫?」
 いきなり頭上から涼やかな声が聞こえてきた。

「………あかね」
 見上げると、目の前にアーモンド型の綺麗な瞳があった。おれが唯一本音を話せる友人、あかね……

「なんでここに」
「なんでってあんたが電話してきたんじゃないのよ」
「……そうだっけ?」

 覚えていない。無意識にあかねを呼びだしていたらしい。
 あかねはやれやれ、と息をつくと、隣にストンと座ってきた。あたりが暗くなった公園は人影もまばらになっている。

「何があったの? そんな死にそうな顔して」
「うん……もう、死にそう……」

 かいつまんで真木さんの話をする。話だけでも気持ち悪くてクラクラする。
 なんとか全部話し終わったけれど、いつもだったら、すぐにあーだこーだと言いだすあかねが眉を寄せて黙ってしまった。
 やはりあかねも黙るような話なのか……と余計に落ち込みそうになった。けれども、

「……真木ってまさか……」
 あかねが難しい顔をしてつぶやいたので驚いてしまう。

「何? 知ってるの?」
「うん……ちょっと電話させて」

 あかねは素早く携帯を操作すると、立ち上がった。

「忙しいところごめんね、陶子さん」 

 週末あかねが手伝いにいっている新宿のバーのママにかけているようだ。なんなんだろう……

「……で、あんたはどうしたいわけ?」
 しばらくして戻ってきたあかねに問われ、詰まってしまう。

「どうって……真木さんと一緒にいた方が慶が幸せになれるなら……」
「別れる?」
「……………………やだ」

 正直に答えるとあかねが「バカじゃないの?」と呆れたように言った。

「じゃあやることは一つ。慶君をきっちり繋ぎ止めること」
「でもさ、本当は真木さんに譲ったほうが慶が幸せに」
「バカっ」
「痛っ」

 思いきりはたかれた。

「譲るってなに、譲るって。慶君はものじゃないのよ?」
「だって……」
「それに、真木と一緒になって幸せになれるとは思えない」
「……え」

 あかねの携帯にメールの着信があり、それを見たあかねが画面を開いて見せてくれた。どこかのバーのソファに座っている真木さんと数人の男性……

「こいつでしょ? 真木って」
「う…………うん」
「やっぱりね」

 あかねは携帯の画面をパタンとしめると、

「2か月くらい前から、新宿界隈に出入りするようになった奴でね、噂になってたのよ。あの外見で目立つから余計にね」
「噂……?」

 真木さんは大阪の病院に勤めていて、2か月前から交換研修でこちらに来ていると言っていた。だからホテル住まいなんだと……

「評判悪いよ。男とっかえひっかえ食いまくってるって。一度に数人とかもありでね」

 まあ、私も人のこと言えないけど、とあかねは自虐的に言ってから、

「つい先日も、陶子さんの友達がやってるバーで言ってたって。今、ものすっごい美形の子を狙ってるって。落として連れてくるから楽しみにしててって。そういいながら、この日もカワイイ男の子2人お持ち帰りしたってさ」
「な……」

 なんだ……なんだそれっ。そんな遊びみたいな気持ちで慶に……っ。

 怒りで頭が沸騰したところで、おれの携帯が鳴った。また母親じゃないだろうな?!とキレながら見てみると、

「……慶っ」
 慶からのメールだった。

<キャベツ買ってきて。実家から桜えび送ってきたからお好み焼きにしよーぜ。今から真木さんの部屋で資料映像見せてもらうけど、終わったらすぐ帰るから>

 キャ……キャベツ?! お好み焼き?! って、慶!!

『慶君も期待してるだろうから応えてあげるけど、いいよね?』

 真木……っ!! なにが、期待してる、だ! 勘違いするな! 慶はおれとお好み焼き食べるんだよ!!


 慌てて慶の携帯に電話をするけれども、電源が切られていてかからない。おそらく、その資料映像とやらを見る寸前にメールして、携帯の電源を落としたのだろう。「くそっ」と口汚く言ったところで、

「行くよ!」
 あかねにグイッと腕を引っ張られた。

「どこのホテルかも部屋番号も聞いた! タクシーで行けばすぐ着く!」
「!」

 一緒に走りだす。慶……慶。どうか無事で。どうか無事でいて……っ


**


 真木が滞在しているのは、都内でも有名なホテルだった。宿泊客でない人も利用するレストランがいくつも入っているため、大きなロビーにはたくさんの人が行きかっている。

「タクシー代払っておくから先行って」

 そういってくれたあかねを置いて、すぐに入ったはいいけれど、広くてどちらに行ったらいいのか分からない。客室に向かうエレベーターは……、と焦りながら探していたところで、

「あれ? 浩介」
「け……慶!!」

 探している張本人が、目の前に現れて心臓が止まりそうになった。
 慶……どこもなんともなってない? 着衣の乱れもないし、えと、それから、それから……
 あわあわしていると、慶が「あ」といって眉間に皺をよせた。

「まさかお前も真木に呼びだされたのか?」
「え」

 慶、真木って呼び捨てにした。慶はムッとしたまま言葉を続けた。

「あいつ今伸びてるから話できねえぞ」
「え?」

 伸びてる……?

「膝で鳩尾に喰らわせたあと、完璧に延髄斬り決めてやったからな」
「え……」

 鳩尾? 延髄斬り? って、えええええ?!

 身長164センチの慶……20センチ以上背の高い真木を伸してしまったってこと?!

「あの……それは……」
「くっそーすっかり騙されてたっ。おれに親切にしてくれたのもそういうことが目的だったのかと思うと、延髄斬りくらいじゃ気が済まねえ。もうあと2、3発喰らわせてくればよかった」
「慶……何も、されて、ない? 大丈夫?」

 ドキドキする心臓を押さえながら聞くと、慶は思いきり顔をしかめて、

「されてねーよ。気色悪いことは言われたけど」
「きしょ……?」

 雑踏で会話がよく聞こえないので、自然と距離が縮まっていく。

「なんか……おれのことが美しい、とか、自分の隣にふさわしい、とか。意味わかんねえ」
「………」

 何が隣にふさわしい、だ。ふざけるな。ナルシストの勘違い男め。

「それとか……」
 慶はちょっと言いにくそうに言葉を詰まらせてから、ぼそっと言った。

「おれの知らない快楽を教えてやるとか……出さないでイカセテやる、とか」
「…………」

 それは……
 慶は今日一番のしかめっ面をして吐き捨てるように言った。

「つかさ、男なんだから出してなんぼだろ。何が出さないで、だ。ふざけんな」
「慶……」

 慶はひとしきり怒ってから、急に声を小さくした。

「まあ、そういうコースの風俗もあるって話は聞いたことあるけどな」
「え?! そうなの?!」
「肛門科の先生が言ってた。カップルでも、彼女が彼氏の……」

 慶は言いかけてから、「何の話してんだおれたち」と苦笑した。

「で、お前はどうしてここに? 呼ばれたのか?」
「ううん……慶が心配で」
「心配?」

 きょとん、とした慶。

「心配って?」
「あの……真木さんに無理矢理、その……」
「あるわけねーだろ。見くびんな」
「だって……」

 あの体格差だ。まともにやりあったら、いくら慶だって敵わないだろう。真木は油断していたんだと思う。慶は見た目は本当に天使そのものだし、真木の前では言葉遣いも丁寧だったから、こんなに凶暴だとは想像もできなかっただろう……。

「あ、いいこと思いついた」

 慶がいきなり手を打った。

「そんなに心配っていうんだったら、やっぱりキックボクシング習ってもいいよな?」
「え」

 その話に繋がるんだ?!

「やっぱさー仕事柄、手怪我するとまずいから、足技鍛えたいんだよなー。キックボクシングもテレビで見たの真似してみたんだけど、イマイチ分かんなくて。こう手を構えるだろー? それで……」
「慶、慶、慶っ」

 ああ、もう、慶……

「ここ、ホテルのロビー。いきなりそんなことやり始めたら……」
「あはは。だな」

 慶がキラキラの笑顔で笑ってくれてる。

「早く帰ろうぜー。あ、お前メールみた? お好み焼き……」
「うん! キャベツ買って帰ろうね?」

 歩き出したところで、視界の隅にあかねの姿が入った。

(……あかね)
 ピースサインをしてくれてから、すーっと雑踏に消えていったあかね……。

(また世話になっちゃったな……)
 あかねには本当に頭が上がらない。今度お礼をしなくては………

「浩介? どうした?」
「ううん。何でもないっ」

 慶の横にぴったりとくっつくと、慶がぽんぽんと背中をたたいてくれた。
 慶の隣にはおれがいる。おれの隣には慶がいる……。



 お好み焼きをお腹いっぱい食べて、片付けも全部終わらせてから、コーヒーを持ってソファに座る。いつもの寛ぎタイムだ。

 高校生の頃はコーヒーを飲めなかった慶も、大学を卒業するころには自らすすんで飲むようになっていた。自動販売機で缶コーヒーを買うおれを「大人~~」とからかっていた高校時代の慶が懐かしい。

「何ニヤニヤしてんだよ?」

 コーヒーカップに口つけながら慶がいうので余計にニヤニヤしてしまう。

「いや……慶も大人になったなあと思って」
「なんだそりゃ」

 慶は肩をすくめ、カップをテーブルに置いた。

「そりゃ大人だろ。一応社会人だし」
「…………あ」

 ふいに、今日の昼に真木に言われた言葉を思い出した。慶は今、仕事で悩んでいる。その悩みを聞いてあげている、と……

「なんだよ?」
「あの………」

 慶はおれには仕事の愚痴を一切こぼさない。疲れた、とか、忙しい、とか漠然としたことは言うけれど、具体的なことは何も……。それはおれなんかに話してもしょうがないから、だよな……

「真木さんが言ってたんだよ。慶は今、仕事で悩んでるって。そういうこと、おれに話してくれないのは………話しても無駄だから?」
「なんだそりゃ。つか、真木の話すんなよ胸くそ悪い」

 慶は眉を寄せると、おれの膝に自分の足をのせてきた。

「無駄とは思わねえけど……まあ、時間がもったいないとは思う」
「もったいない…………」

 時間がもったいないって、それはイコール無駄ということでは……

「浩介」
「え」

 慶がおれにまたがり、軽くキスしてくれた。沈みかけたおれの心に、すっと入ってくる光……

「だってさ、おれ、お前と一緒にいるときは、お前のことしか考えたくないから」
「え」

 目の前に慶の瞳……湖のようにキラキラしている瞳……

「何が面白くてせっかくの時間に仕事の話しなくちゃなんねーんだよ」
「あ………」

 ぐっと腰を押し付けられ、洋服越しに熱が伝わってくる。

「あと……あとね」
「なんだ」

 慶の唇がおれの額や頬に触れてくれる。気持ちいい……
 でも理性をかき集めて、真木にいわれたことを慶に確かめる。

「おれ、運動苦手だから慶と一緒にしてあげられない……」
「そんなこと」

 呆れたように慶は言うと、おもむろにおれのベルトを外しはじめた。

「別にお前にそんなこと求めてねえよ。つか、お前、苦手ってほど苦手でもないだろ。やらないだけで」
「苦手だよ」

 おれも慶のベルトに手をかける。

「そんなことねえのに……ってああ、でも、いっつも一緒に運動してんじゃん」
「え?」

 慶はイタズラそうに笑うと、またチュッと軽くキスしてくれた。

「今から、するだろ?」
「慶……」

 可愛い慶……。
 キスを深いものにしながら、ソファに押し倒す。

「あ、それから」
「なんだ。まだあんのか」

 首元に唇を落とすと、ぎゅっと背中に手を回して抱きしめてくれる。

「慶……おれで満足してる?」
「え?」

 一番聞きたかったことを耳元でささやく。

「おれ、慶のことちゃんと感じさせてあげられてる?」
「………………浩介」

 ぐいっと頬をつかまれ、顔を上げさせられた。目の前に慶の綺麗な瞳……。

「さっきから変なことばっか言って………それも真木に言われたのか?」
「………………」

 黙っていると、強引に体の位置を変えられた。慶が馬乗りになってこちらを見下ろしている。

「…………お前は?」
「え?」

 慶、真顔……怒ってる……?

「お前はおれで満足してんの?」
「あ……当たり前でしょっ」

 これで満足してないなんて言ったらバチが当たるっっ

「そうか………。じゃあ、おれで感じてる?」
「…………っ」

 服越しに股間を押しつけられ、声が出そうになりながら、こくこくとうなずく。
 すると、慶はふっと笑って、その綺麗な顔を近づけてきた。

「おれも同じ」
「慶……」

 重なる唇から愛しさが伝わってくる……。
 ああ、でも、でも……

「でも慶……」
「なんだよ。しつけーな」
「だって……」
「なんだ」

 身を起こしてお互いの服のボタンを外しながらボソッという。

「射精を伴わない絶頂……って、慶、興味ない?」
「ない」

 慶、バッサリだ。

「出さないでイクなんて、女みたいでやだ」
「………………」

 あ、そうか………。今更ながらあらためて気がつく。
 慶は女扱いされることをものすごく嫌がる。
 子供の頃、小柄で中性的な顔をしていたせいで、からかわれたりしたことがトラウマになっているのだろう。
 実際、その外見とは裏腹に慶はものすごく男らしくてかっこよくて……

「なに? お前、興味あんの?」
「え」

 我に返ると、目の前の慶がニッと笑っていた。

「そしたら肛門科の先生に聞いてきてやろうか~? おれがじっくり開発してやるよ」
「わわわっいえ、結構です! いりません!」
「そうか?」

 けけけと笑った慶。愛しい慶……
 瞳を合わせ、再び唇を重ねる……

 慶……。
 本当のおれの姿………あなたを汚そうとするおれを、あなたを束縛しようとするおれを知ったら、あなたはどう思うのだろう。

 あなたの瞳におれはどう写るのだろう……。



 これから、約5ヶ月半後………
 おれは慶の元からいなくなる。慶を殺してしまわないために……

 

--------------------------------

☆続きのお話書きました → その瞳に・後日談


お読みくださりありがとうございました!
浩介は約5ヶ月半後から3年間、アフリカのとある国に行ってしまいます。
(もし、ご興味もってくださった方いらっしゃいましたら、目次ご参照いただきたく…。その後の二人のお話が年別一覧になっております)

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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
「その瞳に*R18」目次 → こちら




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BL小説・風のゆくえには~その瞳に2*R18

2016年04月26日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  その瞳に*R18


*具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*





「君は慶君にふさわしくないよ」

 真木さんの真っ直ぐな瞳に射貫かれて、おれは身動きできなくなってしまった……。




***


 慶が真木さんをおれに紹介してくれたのは、おれの誕生日から約一か月後のことだった。

「真木さんが是非お前も一緒に食事でもって」

 この一か月で、慶と真木という名の慶の勤務する病院の系列病院の医師は、急激に親しくなったようだった。最近の慶の会話の中にしょっちゅう「真木さん」という言葉が出てくる。はじめのうちは「真木先生」だったのに、気が付いたら「真木さん」になってるし……。どんな人だか知りたくて、その誘いも二つ返事でOKした。


 待ち合わせはスポーツジムの休憩スペースにした。
 おれの仕事終わりが何時になるのか分からなかったので、慶と真木さんにはジムで時間を潰して待っていてもらったのだ。職場を出るときに連絡した際には「今、スカッシュやってるところ」と言っていた。

「ごめんっ待たせたっ」
 
 おれが到着して5分ほど経ってから慶が現れた。シャワーを浴びたのだろう。まだ髪が濡れている。首にタオルを巻いたままだ。

「ううん。全然だいじょう……」

 ぶ、と言う代わりに息を吸い込んでしまった。
 慶の後ろにいる、長身の男性……

(うわ……かっこいい)

 そう。「かっこいい」という言葉が良く似合う男性だった。
 180センチをゆうに超えているだろう長身。細身なのにガッチリした体型。頭が小さい。スタイルがいい。そして何より顔が良い。涼し気な目をした美形の男性。中性的な慶の美しさとは違って、男らしい美形というんだろうか。

「すみません、お待たせして。真木英明です」
「あ……桜井、です」

 差し出された手を、反射的に握り返す。がっちりとした大きな手……

(いきなり握手って……外国人みたいだな)

 戸惑ったおれに、真木さんはにっこりとしてから、ふっと慶に目を落とした。

「ああ、慶君、髪の毛まだ濡れてるよ」
「!」

 当然、のように、慶の首にかかったタオルを取って、慶の髪にのせて拭きはじめる真木さん……

(な……っ)
 喉に何か突き刺さったようになって、叫びそうになったのを寸前で止める。

(なんだ、こいつ……っ)

「あーもう、真木さん、子供扱いやめてくださいっていつもいってるじゃないですか!」

 慶が笑いながら真木さんの手を逃れて自分で拭きはじめた。そんな慶を真木さんは目を細めて眺めている。可愛くてしょうがない、というように……

(………)
 ぞわぞわぞわっと総毛立つ。初めての感覚。危険信号が頭の中で点滅している。

(こいつ……っ)
 それは、直感。直感が告げている。『こいつは敵』。

(こいつ……慶のことが好きなんだ)

 慶と高校生の時に出会ってから12年半。
 今まで、慶が女性に言い寄られたところは数え切れないほど見たことがあるけれど、男性からはおれの知る限り一度もない。だから、慶を恋愛対象としてみる男は自分だけなんだ、と勝手に思っていた。でも、考えてみたら、有りえない話じゃないじゃないか。こんなに綺麗な人なんだから……


「じゃあ、行こうか。慶君、本当にこの前と同じ店でいいの?」
「はい! あそこの水餃子すっごくおいしかったので、こいつにも食べさせてやりたくて」
「そっか」

 無邪気に言う慶をにこやかに見たあと、真木さんはふいっとおれに視線をうつした。

「君たちは本当に仲が良いんだねえ」
「………っ」

 なんだ、その目。冷たい、蔑むみたいな目……
 固まって何も言えないおれにも気付かず、慶はご機嫌で真木さんの横に並んで歩きだした。

「はい!高校からの親友なんで!」
「そう。いいね。異業種の友達も必要だよね」

(!)
 自然な仕草で、慶の腰のあたりに手を回した真木さん。慶、全然嫌がってない……
 
(どうして……)
 ふいに一か月前のことを思いだす。真木さんとスカッシュをする、と言った慶をどうして止めなかったんだろう。止めていれば、二人がここまで親密になることはなかったかもしれないのに……

「浩介ー?」
「!」

 振り返った慶と、その横に佇む真木さんの二人の姿は、まるで映画のワンシーンのように美しくて……

(ああ……お似合いだな……)

 おれだけが、暗い暗い穴の中に落ちていく……



***


 食事のあとはすぐに解散になった。真木さんはもう一軒行きたかったようだけれども、慶が「明日早いから」と断ってくれたのだ。
 それでおれはそのままいつものように慶のマンションに泊まりにいった。

「お前、もしかして緊張してた? ちょっと変だったけど」
「あ……うん」

 ソファーの隣に座りながら、なんとか冷静を装って返事をする。

「はじめに握手の手、差し出された時からもうビックリしちゃって」
「あーそうそう、真木さん、外国暮らしが長かったらしくて、結構スキンシップ多いんだよな」
「………」

 多すぎだろ、というツッコミは何とか飲みこむ。

「水餃子、おいしかっただろ?」
「うん。おいしかった」
「今度は二人で食べに行こうな?」

 言いながら、慶がおれのシャツのボタンを外してくる。

「慶? 明日早いんじゃなかったの?」
「おう。早いからさっさとやることやろーぜ」
「…………」

 おれの真木さんに対するモヤモヤなんか知るわけもない慶が、呑気なことを言ってくる。少しお酒が入っているからか、妙に陽気だ。

「真木さんってさー、ホント、良い人なんだよ。色々相談乗ってくれたりとかしてさ」
「…………」
「お前にも会ってほしかったから、なんかすげー嬉しい」
「…………」

 慶は恋愛に関してはすごく鈍感なところがある。昔からそうだ。女の子に好かれていても全く気がつかなかったりしていた。たぶん、真木さんの気持ちになんて、どうひっくり返っても自分から気がつくことはないだろう……

「浩介?」
「………」

 真っ直ぐで、揺るぎがない、容姿も魂も美しい慶……
 おれには眩しすぎる……。

「どうした? 疲れてる? やめるか?」
「あ……ううん」
「あ、そうだ」

 慶が心配そうに言ってくれてから、何を思いついたのか、ぱっと表情を明るくした。

「お前、そこに座ってるだけでいいから」
「え」
「今日、おれのことにつき合わせた礼に」
「え……、って、慶っ」

 慶が楽しそうにおれのズボンを引き下ろすと、若干兆しのあったおれのものをぎゅっと掴んだ。たちまち素直に硬化していくおれの息子……

「け、慶……」
「いいからいいから♪」

 やっぱり慶、まだ酔ってるみたいだ。楽し気におれのものを扱きはじめた。

「おれがいかせてやるから、お前、手出すなよー?」
「………っ」

 慶の完璧な形の小さな口に、おれの醜悪なものが咥えられて、震えてしまう……なんて背徳感。
 それなのに、慶は少しも汚れず、輝いたままで……

「慶……」
「ん」

 舌を使って絡めとってくれ、快楽が背筋まで走っていく。
 我慢できなくて立ち上がると、慶が正座と膝立ちの中間みたいな恰好で咥え続けてくれる。

(ああ……綺麗だな)

 慶の白い頬をみて思う。

(なんて綺麗なんだろう……)

 時々こちらを見てくれる瞳も湖面のように美しい。

 それなのに。

(汚してしまいたい)

 それは、昔からずっとずっと押し殺している感情。

 慶が他の人に見られるのが嫌だ。慶の美しさが人を引きつけるんだ。だから。だから。

(汚れてしまえばいい)

 醜悪なおれに穢されてしまえばいい。それで誰にも見向きもされなくなればいい。
 おれだけのものになって。おれだけのものになってよ、慶……

「……ぐっ」
 慶が奥まで入れすぎて、えずきそうになった瞬間……

「……っ」
 その苦しそうな表情に、おれの中の黒い感情が一気に吹き出した。

「慶……っ」
「……んんっ」

 慶の小さな悲鳴も無視して、後頭部を押さえつけ、思いきり腰を押しつける。もう一度、もう一度……腰を振り、慶の小さな口の中に自分の欲望を突っ込む。慶の苦悶の表情にそそられて、もう止まらない。

(汚れて……汚れて、慶)

 慶と体を重ねるようになってから、何度も妄想していた。慶を汚してしまいたい、と何度も思っていた。慶の美しい顔におれの欲望を吐きだして穢してしまいたい、と。でも理性がそれをとどめていた。

 でも……

(真木……)
 あの男……あの綺麗な男。美しい慶には、確かにお似合いかもしれない。

 だから、だから……

(汚れて、慶)

 慶の苦しそうな顔……涙の浮かんだ瞳……

(おれで汚れて、慶)

 何度も何度も打ち付けて、絶頂がきて……

「……くっ」

 その瞬間引き抜いた。勢いよく、慶の左目のあたりに白いものが飛び散る。

「……っ」

 頬にドロッと滴り落ちていく………
 慶……慶、おれの慶。おれだけの慶……

 意識が遠のく……



「……ってえ!」
「!」

 慶の声にはっと我に返った。慶、左目つぶってる!

「あ、ごめ……っ慶っ」
「おっ前なー!いきなり抜くなよ!目入っただろ!」
「ご、ごめん! は、早く洗いに……っ」

 慌ててそこにあったティッシュでざっと顔をぬぐってあげてから、洗面台に連れていく。

「……ごめんね」
「大丈夫」

 水を手のひらですくって、その中に左目を入れて洗いながら、慶が言ってくれる。

「お前、おれに飲ませないために慌てて引き抜いたんだろー?」
「え……」

 そうじゃない。顔にかけたかったんだ。
 ……なんてこと、言えるわけがない。

 でも慶はいたずらっ子みたいな笑顔を浮かべてこちらを見上げて、

「おれ、飲む気満々だったのに」
「慶……」

 慶……慶。キラキラしてる……

 こんなことをしても、少しも汚れたりしない、美しい慶。眩しい慶……

 ぎゅううううっと抱きしめると、ぽんぽんぽん、と背中をたたいてくれる。 

「もう気にするな」
「ごめんね……」
「だから大丈夫だって」

 優しい慶……大好きな慶……

「ばか、泣くなよ」
「え」

 言われて初めて気がついた。涙が流れ落ちている。

「…………ごめんね」
「しつこいぞ」

 ちょっと笑いながら慶がまた強く抱き締めてくれる。その腕が苦しいほど温かくて………おれは涙が止まらなかった。



 真木さんから連絡があったのは、それから5日後のことだった。

 慶には内緒で会いたい、と……。

 待ち合わせは都内でも有名な公園のベンチだった。日曜の昼間の公園は騒がしくて、周りに話を聞かれるおそれもなく、こういう話をするにはうってつけかもしれない。

「コーヒーでよかった?」

 ポンっと缶コーヒーを投げよこされる。そういう仕草もいちいちカッコイイ……悔しいくらいに。

 おれがベンチの隣に座るなり、

「単刀直入に聞くけど……」
 真木さんがにっこりと言った。

「君と慶君って、付き合ってるよね?」
「…………はい」

 おれも覚悟を決めてうなずく。

「高2の冬からなので、もうすぐ丸11年になります」
「へえっ、11年! 長いね~」

 楽しげだけれども、目が笑っていない……
 この雰囲気に耐えられなくて、こちらから話を切り出した。

「あの………話ってなんですか?」
「うん。君、慶君と別れてくれる?」

 は?

 あまりにも唐突で直球すぎる言葉に耳を疑った。別れる……だって? 何を……

「何を……」
「だって、君は慶君にふさわしくないよ」
「!」

 真木さんの真っ直ぐな瞳に射貫かれて、おれは身動きできなくなってしまった。真木さんはそんなおれに構わずつらつらと話を続ける。

「あの子は本当に綺麗な子だよね。初めて見たときには驚いたよ。今まで見た誰よりも美しく光輝いている」
「…………」

 そんなの………そんなのおれが一番よく知ってる。

「俺だったら、慶君をもっと輝かせてあげられる。支えてあげられる」
「…………」
「君は知らないだろうけど、慶君は今、仕事ですごく悩んでいてね。俺はそんな彼の相談にものってあげている」
「…………」

 何も……言えない。

「それに、君は運動苦手なんだってね? 俺は一通りなんでもこなすよ。そういったところでも慶君を満足させてあげられる」
「…………」
「それに、夜の生活でも」
「え?」

 慶、そんな話までこの人に……?
 疑いそうになったところを、真木さんに笑顔で否定された。

「慶君は、君とは親友だとしか言ってないよ。でも、二人が付き合ってるってことは見たらすぐに分かった。おれもゲイだから、同じ匂いを感じたのかもね」
「………………」

 サラッとカミングアウトされた。やっぱり、そうなんだ……。
 真木さんはちょっと楽しそうに言い出した。

「君は慶君が初めてだろ?」
「…………」

 そんなことに答える義理はない。
 ムッと黙っていると、真木さんがすっとこちらに顔を近づけてきた。

「君は、慶君を満足させてる自信ある?」
「…………」
「慶君のこと、ちゃんと感じさせてあげられてる?」
「そんなこと………っ」

 あんたに言われる筋合いはない……っと言いかけたところで、真木さんに耳打ちされた。聞いたことのない単語………。眉をひそめたおれに真木さんがバカにしたように笑った。

「知らないんだ?」
「…………」
「射精を伴わない絶頂……って意味。やっぱり経験させてあげられてないんだ? ああ、慶君かわいそうに……」
「……っ」

 なんだ、こいつ。なんなんだよ……っっ

「俺だったら、経験させてあげられるよ。その時の慶君の恍惚とした表情……想像するだけでたまらないね。美しいだろうなあ……」
「…………」

 真木さんはうっとりとしてから、「と、言うことで」と言って立ち上がった。

「今日の夜、慶君と約束してるんだよ。俺が今滞在してるホテルの部屋に招待したら、喜んで行く!って言ってね」
「え………」
「今夜は楽しい夜になりそうだなあ。慶君も期待してるだろうから応えてあげるけど、いいよね?」
「…………」
「後からみっともなく騒いで慶君を困らせたりしないようにね。人間引き際が肝心だよ」

 何を言って……、何を言ってるんだ……?
 言葉の理解が追いつかない……。

「冷静に考えれば簡単に分かることだよね? 俺と君、どっちが慶君にふさわしいか」
「あ………」
「じゃあね。慶君の、親、友、の、浩介君」

 真木さんがツカツカと靴音を鳴らしながら歩いていく……ああ、やっぱりカッコいいなこの人……慶がその横を歩いたら、さぞかし絵になるだろう……

「………慶」

 おれがふさわしくないなんて、そんなことずっと昔から知ってる……
 でも、そんなおれを慶は好きになってくれて、いつでも守ってくれて……
 おれは慶が大好きで離れたくなくて、どうしても離れたくなくて……

 何を考えたらいいのか分からない……


「!」
 ふいにブルブルっとポケットが震えた。携帯の着信!

「慶?! ……じゃない。誰だ?」

 知らない番号……わからないまま通話ボタンを押すと、

『浩介! あなたうちの番号、着信拒否に設定したでしょう?! どうしてそういうことするの?!』

 ヒステリックな声……おれのハハオヤ。

『今すぐ解除しなさい! それから、あかねさんとの結婚もそろそろ考えなくちゃいけないんだから、とにかく一度帰って……』
「は……」
『浩介? 聞いてるの?』
「は、は……」

 母親の問いかけに……堪えきれなくて笑いだしてしまった。おれはこの人と同じだ。

 おれを自分の思い通りにしようと必死な母。
 自分色に慶を汚そうとしたおれ…… 
 
 鎖に繋がれたおれが、慶を鎖でがんじがらめにしている……。

 君は慶君にふさわしくないよ。

 おれは……慶の隣にいてはいけない人間だ……慶の隣にはもっとふさわしい人がいる……

『あかねさんだって、仕事が大切なのはわかるけど、子供のこと考えたらそろそろ……』

 携帯から母の声が延々と流れてくる。

 ああ……頭がおかしくなりそうだ。いや、もうおかしいのかもしれない………

 

 

--------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
ずっと前から読んでくださっていた方、もしいらっしゃったら、ああ、ようやく書いたのね? と思ってくださったのでは……
昨年の夏くらいにずっと書く書く言っていた「顔にかけちゃった話」でしたっ。
ようやく書けて安心しました……これを書かなければ、『風のゆくえには』終われないと思ってたので(え!それ?!って自分にツッコミいれてみた)
明日『その瞳に』は最終回です。どうぞよろしくお願いいたします!

クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!本当に有り難くて有り難くて……。あと残り2回、どうぞよろしくお願いいたします。ご新規の方もどうぞよろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~その瞳に1*R18

2016年04月25日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  その瞳に*R18


*具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*




 携帯の電源、切っておけばよかった。

「携帯、鳴ってるぞ」
「………」

 冷静な声。一瞬前まで、おれに扱かれはじめたことに甘い息をついていたのに。ちょっと……いや、かなり、カチンときた。

「いいから」
「よくねえだろ。ずっと鳴って……っ」

 口を塞ぐように唇を合わせる。唇を貪りながら、扱く力に緩急をつけると、たちまち腰が砕けたようになる。慶の弱いところなんか、もう全部知ってる。

「浩…………携帯」
「しーっ」

 潤んだ瞳をしながら、なおもいい募ろうとする慶の耳を噛むと、途端にびくびくっと震えた。あいかわらず感度良好。お互いの洋服を脱がしあった後なので、もう何も身に着けていない。慶の滑らかな肌にゾクゾクする。

「慶…………」

 愛しい愛しい慶。何もかもおれのものにしたい。慶の中をおれでいっぱいにしたい。その思いのまま、ベッドに押し倒し、そのしなやかな脚を押し開き………

 ………と、思ったのに。

「だから携帯! ずっと鳴ってる!」
「痛っ!」

 思いきり蹴られた。あーああ………
 ぶーっとしていると、もう一回蹴られた。

「さっさと取れ!」
「もー………いいのに………」

 どうせ相手はわかっている。これだけしつこく鳴らし続ける奴なんて…………

「…………はい」
『ああ、やっと出た!』

 電話の向こう、ハハオヤの声。

『ずっと出ないから心配……』
「すみません、仕事中なので」

 ピッと携帯を切ってカバンに入れようとしたところでまた鳴った。

「…………」
「…………」

 慶に目で促され、仕方なく再び取る。

「だから……」
『なんで嘘つくの! 学校に電話したけど、もう帰ったって言われたわよ!』
「…………」

 大きく大きくため息をつく。職場に電話するなと何度言ったら分かるんだこの人は。

「繁華街の見回り業務中です。帰ったらかけ直しますので」
『ちょっと浩……っ』

 今度は切ってすぐに電源も落とす。はじめからこうしておけばよかった。

「繁華街の見回り業務、だって」

 慶があきれたようにいう。

「お前ウソつきだなー」
「別に本当のこと言ってもいいけど、そしたらあの人卒倒するよ」

 ベッドに座っている慶の足をつかみ、指にキスをする。

「別れてただの友達に戻ったはずの渋谷君とラブホテルに来てます、なんて……」
「んんんっ」

 足の指をしゃぶっているだけで、萎えてしまっていた慶のものが命を吹き返していく。

「でも、お前、今日誕生日、だから……」
「だから?」

 途切れ途切れに言葉をつなぐ慶の引き締まった太股に唇を這わせる。びくびくと震える慶。本当に感度がいい。興奮が止まらない。

「実家帰らなくて、いい、のか?」
「いい」

 なにが面白くてせっかくの誕生日に実家に行かなくちゃいけないんだ。

「でも………んんっ」

 それ以上は言わせない。滴り落ちた慶の滴を舐めとり、そのまましゃぶりつくと、慶の声がすべて啼き声に変わった。
 せっかくの誕生日。せっかく忙しい慶がおれのために休みを合わせてくれた誕生日。
 余計なこと考えないで。おれのことだけ考えて。

「慶……」

 大好きだよ、大好きだよ、大好きだよ……
 気持ちが溢れて止まらない。

「こう…っ、もうイク……っ」
「……うん。イッて?」
「…………っ」

 慶の腰がはねあがったのと同時に熱いものがおれの喉をつく。それを一滴残らず飲みほし、舐め上げる。その度にびくっと震える慶………可愛すぎる。

「慶……」
 いきおいがなくなるまでしつこく舐めてから口を離し、放心状態の彼の足の膝の後ろをつかんで、ゆっくりと胸の方に押しあげる。そして露わになった蕾にそっとジェルを塗りこむ。

「あ……浩……待……っ」
「ごめんね。待てない」
「あ……んんんっ」

 自分でもイジワルだな、と思いながら、休む間も与えず、次の快楽へと導く。
 イッたばかりの慶の中は敏感になりすぎていて、少しの刺激でビクビクと震える。指に吸いついてくるようだ。指から快感が伝わってものが更に膨張していく。……でも。
 
「浩……指やだ……」
「ん」

 慶の小さな文句。慶は昔から指でされるのを嫌がる。素直に肯き、指を引き抜く。「あ……っ」と声を漏らした慶が色っぽすぎて……

(かわいすぎ……)

 涙のたまっている慶の瞳を見つめながら、ゆっくりゆっくり挿入していく。

「浩介……」
「ん?」

 首の後ろに手を回され、引き寄せられた。目の前に湖のような瞳。

「……キス」
「……うん」

 小さな要望にお応えする。でも、フェラの後だから唇は重ねるだけに留めて、瞼に頬に耳に唇を落としながら、引き続きゆっくりと少しずつ少しずつ侵入していき……

「あ……っ」
「慶……」

 根元まで入り切った時点で、慶がぎゅうっとしがみついてきた。体が溶け合って一つになっていく感覚。とてつもない幸福感……

「慶……大好きだよ」
「ん……」

 ずっとずっとこのままでいたい……


**



 行為のあとに一緒に入るお風呂の時間もすごく好き。気持ちがフワフワする。

「スカッシュ?」
「そうスカッシュ」

 湯船の中、おれに後ろから抱きしめられる形で座っている慶が楽しそうに言う。
 こんな大きな風呂に二人で入るのも久しぶりだ。たまにはホテルにくるのもいい、とあらためて思う。いつもは慶の部屋の狭い湯船だから…

「スカッシュって……テニスみたいなやつ?」
「そうそう。ちょっと興味あったからラッキー」

 勉強会で知り合った系列病院の医師がスカッシュに誘ってくれたそうだ。
 慶はスポーツ全般なんでも好きで、何でも得意だ。とにかく体を動かしていないと気が済まないらしく、空き時間があるとスポーツジムに泳ぎにいったりしている。

「なんか新しいことやってみたかったからさ。本当はキックボクシングやりたいのにお前が絶対ダメって言うし」
「だって……」

 その綺麗な顔に傷が付いたらどうしてくれるんだ。冗談じゃない。
 まーいいんだけどさーと、慶はブツブツいいながら、

「スカッシュもかなりの運動量だって、マキ先生が言って……」
「マキ?!」

 思わず大声を出してしまう。

「女の人なの?!」
「ちげーよ」

 慶がブッと吹き出した。

「真実の真に、樹木の木で、『真木』って名字。男だよ。おれらより6コ上っていったかな」
「ああ……そう。ならいいけど……」

 ホッと息をつくと、慶はケタケタと笑いだした。

「お前、心配しすぎ」
「だって……」

 慶は自覚がなさすぎる。自分がどれだけ女性にモテるのか分かってない。

「お前もやる? スカッシュ」
「……遠慮しとく」

 ボコボコにやられるのは目に見えている。慶に運動で敵うわけがないのだ。

「食わず嫌いかもしんねーじゃん。一回見にこいよ。って、まだ一回もやってないおれがいうのもおかしいけどなっ」
「んー……じゃあ、慶がやってみて、すっごく楽しくてオススメっていうなら見に行く」
「わかったー。……あ、なあなあ」

 慶はふと思いついたように言うと、くるりと身軽に体を回転させ、上目遣いでおれを見てニッと笑った。

「こんなデケー風呂久しぶりだから、ここでもう一回やろーぜ」
「…………」

 あいかわらず、ムードも何もないお誘いです……。
 思わずため息をつくと、慶が眉を寄せた。

「いやか?」
「まさか。仰せのままに」

 その白い頬を囲み、そっと口づける。すると、慶がふわっと嬉しそうに笑ってくれた。


**


 おれはこの1ヶ月後、この時の会話を思いだして、もう一度あの時に戻してくれ、と悶え苦しむことになる。
 でも、この時に、慶に行かないでと言ったところで、慶はもう真木さんと知りあっていたのだから手遅れか……。おれが真木さんに敵わないという事実はどうやったって変えられない……


 


--------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
爽やかな高校生時代から一変、アダルティな感じでお送りしました。まあ、まだ28歳だから全然若いんだけどね!
次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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風のゆくえには~将来 目次・人物紹介・あらすじ

2016年04月22日 08時00分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来
(2016年3月24日に書いた記事ですが、カテゴリーで将来のはじめに表示させるために2016年4月22日に投稿日を操作しました)



目次↓

将来1(慶視点)
将来2-1(浩介視点)
将来2-2(浩介視点)
将来3(慶視点)
読切「お礼はキスで」(浩介視点)
将来4-1(浩介視点)
R18読切「初体験にはまだ早い」(慶視点)
将来4-2(浩介視点)
将来4-3*R18(浩介視点)
将来5-1(慶視点)
将来5-2(慶視点)
将来6-1(浩介視点)
将来6-2(浩介視点)
将来6-3(浩介視点)
将来7-1(慶視点)
将来7-2(慶視点)
将来7-3(慶視点)・完




人物紹介↓

主人公1:渋谷慶(しぶやけい)

高校2年生。身長161cm(高3時164cm)
中性的な顔立ちと背が低いことがコンプレックス。そのせいか、口が悪く、喧嘩っ早い。
人懐っこく友達は多い。でも交遊関係は典型的な『広く浅く』。浩介は初めての『親友』といえる。

ものすごい美少年。でも、本人に自覚ナシ。
中学時代はバスケ部在籍。その顔の上に、スポーツ万能で頭もそこそこ良かったため女子に非常にモテた。けれども、理想の女の子がいない、と言って全部お断りしていた。
8歳年上の姉・2歳年下(学年は一年下)の妹がいる。両親共働き。

高校1年の秋に浩介への恋心を自覚。以来ずっと気持ちを隠しながら健気に片想いしていた。高2のクリスマスイブ前日、ようやく想いが通じ両想いに。
写真部所属。


主人公2:桜井浩介(さくらいこうすけ)

高校2年生。身長175cm(高3時176cm→177cm)
人の記憶にあまり残らないような平凡な顔立ち。
中学まで通っていた都内の私立男子校でいじめを受けていた影響で、高校ではとにかく笑顔でいることを心掛けている。
頭が良く、特に英語は学年首位の座を守り続けている(理数を含めると学年順位は毎回10位以内)。
威圧的な弁護士の父と過干渉な専業主婦の母がいる。一人っ子。
バスケ部と写真部に所属。

バスケ部の先輩・美幸さんに片思いをしていたけれど、美幸さんとバスケ部キャプテン田辺先輩のキューピットをして、自らは失恋(←『片恋』編)
何だかんだと常に暗~いことを考えてしまうネガティブ男子。でもそれではダメだ!と一念発起(←『月光』編)。
12月中旬、親友・慶への恋心にようやく気が付き、クリスマスイブ前日に告白。晴れて『親友兼恋人』になる。(←『巡合』編)




<2年10組>

溝部祐太郎(みぞべゆうたろう)
身長168cm。ちょっと太め。お調子者。野球部所属。

山崎卓也(やまざきたくや)
身長172cm。ヒョロリとしている。真面目で大人しい。鉄道研究部所属。

斉藤健一(さいとうけんいち)
身長170cm。明るく社交的。バスケ部所属。

浜野ちひろ(はまのちひろ)
身長153cm。色白。眼光が鋭い。独特の雰囲気を醸し出している。美術部所属。


<写真部>

渋谷南(しぶやみなみ)
高校1年生。身長155cm
慶の妹。今で言う『腐女子』。陰となり日向となり勝手に兄の恋を応援している。
せっかく美人なのに自覚がなく洒落っ気もないため、隠れ美人止まり。

橘真理子(たちばなまりこ)
高校1年生。身長149cm
ふわふわした可愛らしい容姿だが、実は腹黒いしっかり者。
実兄の雅己に本気で片想いしていたけれども、ちゃんと失恋をしたおかげで、気持ちの踏ん切りはついたらしい。

橘雅己(たちばなまさき)
高校3年生。身長174cm
真理子の兄。学年首位。将来は実家の家業を継ぐため写真家への道は諦めている。


<その他>

近藤椿(こんどうつばき)
25歳。身長148cm
慶の姉。看護婦。現在妊娠中。



あらすじ↓

高校2年のクリスマスイブ前日。ようやく想いが通じ合い『親友兼恋人』になった慶と浩介。
幸せいっぱいラブラブな毎日を送っていたけれども、そのことが家族に知られ、大騒ぎに……

進路についても真剣に考えはじめる高校2年三学期。
慶は進路決定を左右する出来事に遭遇する。
一方、浩介は、両親に対する憎悪が更にひどいものになっていく……



----------------------------------------


これからはじまる『将来編』の人物紹介とあらすじでした。
お読みくださりありがとうございました!

私が現役高校生の時に書いたプロットを元に書き進めております。何も大事件の起こらない、普通のそこら辺にいる高校生のお話です。なので、「友達の友達の話」くらいのノリで読んでいただけると幸いです。


クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!背中を押していただいたおかげで、書くのを躊躇していた『将来』編まで着手させていただくこととができました。ありがとうございます!『将来』編もどうぞよろしくお願いいたします。ご新規の方もどうぞよろしくお願いいたします!

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